ともしび

4.誘い火


ん… 蛍は手で男の顔を挟み、唇を奪った。

男の胸が動き、少女の甘い息を吸い込む。

くぐもった声が男の喉から漏れた。 ネットリと甘い息が体の芯に絡みつくようだ。

男は足元がおぼつかなくなり、よろよろと後ずさってビルの壁にもたれ掛かかり荒い息を吐く。

ふ… 蛍は微かに笑い胸元に手をやった。 そのまま両手を交差させてスルリと服を脱ぐような仕草をする。

男が目を剥いた。 白い肌の少女は全裸になっている。 いつのまに? それに脱いだはずの服が無い。

蛍は片手で胸を隠し、もう片方の手で男を手招きする。

暗い路地のなかで少女の姿だけがくっきりと浮かぶ。

壁に背を預けたまま、首を横に振る男。 これは違う、何かが間違っている。 逃げなければ。


蟹か何かのようにじりじりと壁伝いに蛍から遠ざかろうとする男。

蛍は肩をすくめると男に背を向けた。 蛍の視線から解放され、一瞬安堵する男。しかし…


「おいで…」 蛍はそういいながら腰を突き出して片手を壁につく。

もう片方の手を秘所に這わせ、そっと広げる。 思わず目がそこに行く。

光る糸を引いて開いた花弁は、淫らに男を誘う。 互いの顔もはっきりとしない路地なのに、なぜか蛍のそこはくっき

りと…

(…?)

奥の奥から…雫がタラリと流れて来る… 鮮やかな白い尻が、ゆっくりと右に左に揺れる。 それが、微かに光を放っ

ていると気が付く暇があっただろうか。

男の目に小さな炎が点る。 その欲望の炎はみるみるうちに大きくなり、蛍への抑えがたい欲望となり男を支配した。


男はスルリとズボンを落とす。 下半身をむき出しにすると蛍に近寄っていき、その細い腰に手をかけ、固く張り詰めた

怒張を、壊れそうな花弁に押し当てる。

うぅ… 男が呻いた。 熱く猛る亀頭…それに触れる蛍の花弁は柔らかく、男を受け入れる。

ズッ…ズズスッ… 突き入れる…というよりも吸い込まれるように、蛍の中にイチモツが… そして、亀頭を押し包む柔

らかな熱。

(あ…熱い!?) 一瞬の驚愕。 そして。

あ…ああっ…あああっ… 亀頭をじんわりと包み込んだ熱が、脈打ちながら陰茎を伝わって来る。

たまらず腰を引く。 が、イチモツが蛍を求め、再び奥に引きずり込まれる。

ああ…あああ… ゆっくりと腰を振る男。 一打ちごとに、股間から伝わる蛍の熱。 次第に体の芯が、暖められていく

かのよう。

「すげえ…いい…」口元がだらしなく緩む「蕩けちまう…」

ふ…ふふ…蕩けるよ… 頭の中で声がする。

「へ?…ああ…」次第に空ろになる男の目。

ほーら…体の芯が柔らかーく…とろーとしてきたでしょう…

ああ…ああ… 声の言うとおり、背筋を伝わる熱が蕩けるような快感に変わっていく。 それが背筋に絡みつき、じわ

り、じわりと昇ってくる。

ゆらゆらと体を揺すり、不自然な快楽に浸る男。 口の端から涎が垂れ、蛍の背中を濡らす。 頭の中が真っ白になり

、とろとろに溶けてしまったような気がする。

ふふ… さぁ… おいで… 声がそう言った。 すると…

ヒック… 男の体を甘い衝撃が走った。 

ヒックヒックヒック… 疼くような快楽の波が腰から全身を満たしていく。 男の体から力が抜け、蕩ける快感に漂いだ

した。

ヒックヒックヒック… 男の股間が規則正しく痙攣し、蛍の中に白くトロリとした液体を送りだす。

ふぁぁ…蛍が喜びの声を上げた。 腰を小刻みに震わせ背筋を突っ張って、白い奔流を受け止める。

ヒック…ビクン… 突然男は大きく震え、硬直した。 そのまま白目を剥いて仰け反り、背中から倒れた。

うっ…ふぅぅ… 蛍はのろりと振り返る。 上気した顔に、気だるげな気配を漂わせている。

「…ふぅ…力が足りないや。 まぁこれだけ貰えば」そう言いながら手を胸に当てる。 ほうっと光る蛍の胸。

「これで敬を誘惑できる…かな」呟きながら手をすっと降ろしていく。 一瞬でセーラー服姿に戻る蛍。

そのまま白目を剥いている男には目もくれず、蛍は路地から姿を消した。


カタッ…カタッ… 敬は2階の自分の部屋で、気のない様子でパソコンを叩いていた。

(…) 表情が険しい。 蛍の事が頭を離れない。

(あの子はいったい…) 今更ながら、蛍がどこの誰なのか気になりだした。

蛍の声を聞いていると、一緒にいると、胸が高鳴る。 蛍の誘いにのってしまいそうになる。

そして離れていると、無性に会いたくなる。 せめて声をと思って電話をかけようとして、蛍の事を何も知らないことに

気がついた。

頭の後ろで手を組み、当ても無く『蛍』を検索する。


コン… ベランダに続くガラス戸に何かが当った。 そちらを見て驚く敬。 蛍が立っている。

「ほ、蛍!?」言いながらガラス戸を開ける「そこで、何を?」

蛍は微笑みながら部屋に入って来た。「君に会いに…嫌?」

ドキッ 敬の心臓が高鳴る。 「嫌じゃないよ…でも…」その後の言葉を呑み込む。(今日会ったばかりじゃないか…)

蛍は壁際のベッドに座り足を組む。 白い太股がまぶしい。

「…待ったよ…少し」

蛍の言葉にキョトンとする敬。 そして驚く。「…少し待った…って!? いや…違うだろう!?」

蛍が足を開く…下に何もつけていない。 細い指がアソコを開く。「敬…見て…」

「ほ…蛍…」蛍から目が離せない。


蛍の指がゆっくりと割れ目を上下し、敏感な芽を刺激する。

「あ…はぁ…」甘い吐息を漏らす蛍。 

その声が敬の耳朶を打ち、敬の目がまん丸になる。

にっ… 蛍が笑いった。 そして…

ほうっ… 蛍の奥が光る。

「!?」

あっ…ああっ… 蛍は悦楽の呻きを上げながら自分の全身を弄る。

溶けるようにセーラー服が消え、白い裸身が露になる。

(…)魅入られたように立ち尽くす敬。


消して… 蛍の声に敬の手がのろのろと動き、部屋の明かりを消す。

「…光っている…」敬の想いが口に出た。 彼の言うとおり蛍の全身がぼうっと光っている。

蛍は敬を誘うように、熱い吐息を漏らしながら自分を慰めている。

敬… ね… 伏目がちで誘う蛍。

敬の足が一歩前に出でた。


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