ともしび

2.焚き付け


「…」 少年はどう反応すべきか迷った。 怒るべきか、照れ笑いすべきか… 結局ぶすっとして言った。「…見せたの

はそっちだろう」

くくっ… 少女は喉を鳴らして笑った。 そのまま膝に顎を乗せてこちらを見る。

少年はぷいっと横を向いた。 そのまま横目でちらちらと少女を盗み見る。

「蛍(ほたる)」 ぼそっと少女が言った。

言葉の意味を図りかねて首をかしげる少年。

「名前だよ、僕の」少女が言った。「君は?」

「…敬(けい)」少年は答えた。

ふぅん… 頷く少女。 そしてまた沈黙が二人の間に流れる。


(うーん…) 敬は少女の様子を見ながらいろいろと考えた。 今の状況は夢の様なシュチエーション… 美少女と二

人きり、辺りに人の気配はなし。

ちらりと目をやる… 白いソックスの隙間から見える太もも。 そしてその間に見える白い布… 

くすっ…

ぎくりとして視線を上げる。 蛍は小指を軽く咥え、伏目がちにこちらを見ている。 濡れた瞳に視線が引き付けられる…

敬は慌てて視線を逸らした。 そして心の中で悪態をつく(…あ…頭がおかしいんじゃないのか!?…)

敬は女の子と付き合った経験はないが、初めて会った女の子とここまで期待…というより妄想どおりの展開になれば

幾らなんでも警戒する。

もっとも、誘いにのろうにも経験0では対処のしようが無いのだが。

(落ち着け…落ち着け…)自分に言い聞かせ、蛍に視線を戻す。 蛍は声を殺して笑っている。

敬は一瞬ぽかんとし、次に顔が赤くなった。

(…からかわれた…) 憤然として蛍に向き直る。「あのねぇ!」

真っ赤になって怒る敬を見てくすくす笑う蛍。「こういうの嫌い?」

がっくりと首を落とす敬。 手に負えそうにない。 しばらく蛍を無視することにする。


敬は洞窟の入り口に視線を映した。 滝の水を透かして見える外は暗い。 つまりまだ雨が降っているという事だ。

と、くすくす笑いがやみ、敬はちらりと蛍に目をやった。

蛍も敬と同じように小首を傾げて外を見ている。

ドキリ 心臓が高鳴る。 さっきまでの蛍とは別人のようだ。

ロウソクの仄かな明かりに照らされた少女の横顔には『儚さ』と題をつけたくなる。 暗がりにぽつんと立っていれば、

誰一人気がつかずにそばを通り過ぎる…そんな風に見える。


ゆらり… ロウソクの炎が揺れた。

蛍がこっちを向き、二人は炎越しに見つめあう。

吸い込まれるような漆黒の瞳…そこにロウソクの炎が煌く。

無表情になった蛍が呟いた。 「…ねぇ…しようか…」

「君…あのねぇ…」敬は額に手を当てて呻く。(やっぱり変な子だ…)

「…怪談を」蛍が続けた。

「…怪談?」聞き返す敬。 微かに頬を赤らめる。

「うん」こくんと頷いてから、ニタリと笑う蛍「…ひょっとして…Hの事だと思った?」

「…ちっ違うよ!」無意味に手をばたばたさせて否定する敬。

くくっ… 喉を鳴らして笑う蛍。


***************************


じゃあその祠の話をしようか。 何でこんな所に祠があると思う?

え? 水神様? 違うんだな〜これが。 これはね、神隠しにあった人たちを奉っているんだ。


昔々… まだ皆が髷を結っていた頃の事だよ。

ある時、この辺りで時々神隠しが起こるようになったんだ。

そんなある日の事、一人のお百姓さんがここを通りかかったんだ。 

え? なんでって?

さぁ。 岩魚でも釣りに来たのかな?

そうしたらね… 滝壺の端に『岩舞台』に綺麗な女が座っていたの… 白い着物を着た真っ白い女の人が。

ボクみたいでしょ。 え? ボクのはセーラー服? いいじゃない。 大した違いはないよ。

そしてもう一人、近所の人がその女の人と一緒にいたんだって。

お百姓さんは二人に見えないように、近くの茂みに隠れたんだ。 

なぜかって?

だって、二人は着物を脱いでいる所だったんだもの。 君だってそうするんじゃない? くふふっ

女の人は、とても綺麗で真っ白な肌をしていて、村の人でない事は確かだったみたい。

で、見ているうちに二人は脱いだ着物の上でHしだしたんだ。

女の人の白い手足が村の人にからみついて…白い蛇のようだったって。

そうやって日に焼けた男と真っ白い女はしばらく絡み合い喘いでいたんだけど…男の尻が段々小さくなって…と思っ

たら女の足の間に深く…深く…


え? あそこが緩んでいたんだろうって? 失礼だな! 君は!

怒る事はないだろうって? まぁそうだけど…


それだけじゃなかったんだ、今度は女の人が光りだしたんだ、淡く、ぼうっと。

見ていたお百姓さんは目の玉が飛び出るほどびっくりした。 そして足元の枝を踏んづけちゃったんだ。 お約束だよね。

その音で女がお百姓さんに気づいたんだ。

『だれやおるか?…きやれ…』ぬらりとした声で誘ったんだけど、その時にはお百姓さんは一目散に逃げだした後だっ

たんだ。

お百姓さんは村に帰ってその事を話したんだけど、だれも信じてくれなかったんだ。


その晩、お百姓さんがご飯…というか粟や稗の夕食を食べていたら…窓から入ってきたんだよ… 何だと思う?

熊!? …そんな訳ないでしょう。 蛍だよ、ほ・た・る

それが誘うように、お百姓さんの目の前をふわふわと飛び回るんだ…そして入り口から出て行ってしまったんだ。

気になって蛍を追って外に出ると、蛍は山に向かって飛んで行く…あの滝のある山に…

お百姓さんがそう思った時、山の中、滝の辺りがポウッと光るじゃないの。

淡く光、消えて、また光る…それを見ているうちにだんだん気が遠くなって… 


はっと気がついた時、お百姓さんは真っ暗な所に立っていたんだ。

あわてて辺りを見回すとけど何にも見えない。 でも音がするんだ…そう、滝の音だよ。

『きたかえ…』

声がした方を見ると…あの女の人がいるの…裸で、そしてふわっと光っている…

お百姓さんはがたがた震えだして、お経を唱えてみたり、女をおがんでみたり…

『怖がらずとも良いえ…みやれ…』

女は岩棚に座って…あそこを広げて見せたんだ…その奥もほうっと光っているの

それを見たお百姓さんの足が…一歩…また一歩前に…

両手が勝手に動いて着ている物を一枚一枚、野良着が、草鞋が、褌が…

え? 男のストリップを詳しく聞いてもつまらん? あははっ、そりゃそうだ。


んで、女の前まで来た時はすっぽんぽん。

近くまで手見ると、見たことも無いような美しい女で切れ長の目が濡れた様に光ってお百姓さんを見つめているの。

女が手招きをすると、体か勝手に動いて女に覆いかぶさって…

そしたらね、お百姓さんの震えがピタリと止まったの。 

どうして?

女の人に抱きつかれたらね…肌触りがとってもよかったの…

しっとりとして、ふっくらとして…冷たいようでほんのりと暖かくて…

さっきまで怖かったのが嘘のよう…お百姓さんはうっとりとしてしまったの


女の人はお百姓さんがおとなしくなると、手を伸ばして男のあそこ…そうそこ…あららテントが立ってる♪

そこを優しく包んで…そして自分の中…ん…あ・そ・こに…そうっと…入れたの

女の人の体はほうっと光っていて、まるで天女のように近寄りがたい品があるのに…中はとってもやわらかくて…とっ

てもヌルヌルしてたんだ…

お百姓さんのそこは、どんどんおおきくなって…奥まで届いたの…そうしたら…

『…ええ…気持ちええ…』

柔らかい何かがお百姓さんを撫でるの…何度も…何度も。 そしてひと撫でごとに…とろーり、とろーり、って感じにな

っていくんだ…あそこが。

ね、男の人が良くなる時って『キンタマ』が気持ちよくなるってほんと? え? 女の子がそんなこと言うなって? い

いじゃない、聞いたって…

ごほん、とにかくお百姓さんは先っぽからとろー、とろーっと気持ちよくなって…根元のほうまで良くなって…とうとう体

の芯がとろーんてなってきちゃったんだ。

『ああ…蕩けるだ…蕩けそうだ…』思わずそう言ったの。 そしたら…

『良いであろう…わらわの中は。 たまらぬ程良くなって…蕩けるぞえ…直にとろとろに蕩けてしまうぞえ…』って言う

の、女の人が。

蕩けてはたまらんとお百姓さんが逃げ出すかと思えば、うっとりとして女の人に抱かれるままになっているの。

女の人の言うとおり、とっても気持ちよくて逃げ出す気にならないのね。

そのうちに、体の芯がとろとろに蕩けたような感じになって…おちんちんがきゅーと気持ちよくなって来たの…

お百姓さんの体がピクピク震えて…先っちょから、蕩けたものがとろーり、とろーりと女の人に吸いだされだしたんだ。

『ああ…うれしや…』女の人が喜びの声を上げるとね、お百姓さんもとっても嬉しくなるの。

女の人が腰を振ると、お百姓さんのあそこがヌルヌルヌルッて感じで撫でられて凄く良くなるの。

『ええ…あそこが気持ちええ…凄くええ…』

それを聞いた女の人が微笑むの。

『良いであろう…わらわのここは。 愛しき男子よ、そなたはわらわのもの…全て…全て…さぁ…味わうが良い…』

そう言うとすっごくいやらしーい音がしてね、お百姓さんは腰の辺りがいっそう気持ちよくなってきたの。

女の人のあそこがすっごく開いて…お百姓さんの腰をヌラリ、ヌラリって舐めてね…先っぽと同じで、ひと舐めされるご

とに腰がとろー、とろーって気持ちよーくなって…

逃げられるはず無いよね。 

いつのまにかお百姓さんはこちから下が女の人のあそこにずっぽりはまり込んで…女の人の中でヌッチャ、ネッチャと

柔らかいものに舐められて…

『ええ…ええ…蕩けるだ…蕩けるだ…』

『…ふふ…可愛らしい方…さあ蕩けて…身も心もとろとろに…そして全部私のものに…』

女の人のあそこ…見たことある? ある…やらしい奴… え? 写真? 本物だよ! ない…

ふふ…凄いんだよ…とっても柔らかくて…とってもヌルヌルしてて…最初は気持ち悪かったのが…段々気持ちよくな

って…最後はたまらなくなるの…

その女の人は腰をゆすって…とろーっとしたいやらしい液でお百姓さんをタップリ濡らしながら…下の唇で少しずつ呑

み込んで行くんだ…

お腹が舐められると…お腹の中身がとろーんとして…

胸の辺りを舐められると…乳首切なくなって…魂が蕩けていくような感じがしてとーてっも気持ちよくなって…

顔をヌメヌメしたもので舐められると…頭の中身が蕩けて…もうなーんにも考えられなくなるほど気持ち良くなるんだ…

とっても気持ちいいよ…

とっても気持ちいいよ…

とっても気持ちいいよ…


***************************


はぁ…はぁ… 荒い呼吸が自分のものだと気がつくのに少しかかった。

いつのまにか敬は蛍に押し倒されていた、服こそ着ているものの。

蛍の手が、敬のズボンの上から硬くなったものを愛しげに撫でている。

ひと撫でごとに、ズキンとした疼きが背筋を駆け抜ける。

「…うっ…蛍…」

「…敬…欲しい…敬が欲しい…」熱いささやきが敬の耳朶を打つ。

心の中に、蛍を受け入れたがっている自分がいる。 あとひと押しされたら…自分は蛍のものになる。 

「…敬が…ボクに火をつけたんだ。責任とって…」


『責任』…その一言が理性を呼び覚ます。

鉛のように重い腕を渾身の力で持ち上げ、蛍の細い肩をそっと掴み、優しく引き剥がす。

蛍が驚愕した。「…なんで…」怒りと失望がない混ぜになった声を出す。

敬は座りなおして言った。

「…流されちゃだめだ…今、君と…しちゃったら…その…『責任』が取れない…」

蛍は首を傾げる。「ボクが…嫌い?」

ぶんぶんと首を振る敬。「…その…嫌いじゃない…いや…むしろ…好き…」そういった途端、胸がズキンとした。

この風変わりな…とってもHな女の子に何か感じるているものがある… あの口に出すのが恥ずかしい感情…『恋』


結局、敬は蛍に自分の携帯の番号を教え、そのまま別れる事となった。

洞窟から出て行く敬。 なぜか蛍はその場で見送る。

(…最後まで変な子だなぁ…でも…また会いたいなぁ…) 敬は仄かな恋の炎を胸に洞窟を出た。

ぽつんと残った蛍は呟く。

「…本気だよ敬…君が欲しい…身も心も…」

膝を曲げて身をかがめ、敬の立てたロウソク…なぜか殆ど減っていない…を手にとる。

そして天井を見上げるて口を開け、曲芸師が剣を呑み込む様に、火のついたままのロウソクを呑み込んでしまった。

ほうっと息を吐く蛍。 その胸元が淡く光る…ポウッと…

「…逃がさない…『責任』とってもらうよ…」


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