ハニー・ビー

5-06 篭絡、変貌、そして……


 あぁぁ……

 村娘は密やかなため息をもらしてのけぞった。

 小麦色に焼けた喉が反り返り、そこにワスプの赤い唇が吸い付き、粘り気のある唾液で愛欲の証を記していく。


 ここは民家の一室。 一人の村娘がワスプに組み敷かれ、その豊満な体の下でよがり狂わされていた。

 始めのうちこそ恐怖に泣き叫んでいたが、その胸から滴る蜜を塗りつけられるにつれて抵抗は弱まり。 しなやかな

尻尾で『女』を愛撫され、甘い蜜を体の奥深くに注がれてしまえば、娘はもはや魔の虜。 抵抗する意志など残っている

はずも無かった。


 「……きつい」

 粗末な貫頭衣の胸の辺りが突き上げられ、今にも張り裂けそう。

 それを見たワスプは、娘の腹の辺りから胸にかけてを指先で撫でる。

 すると、貫頭衣が鋭利な刃物で切られたかのように、一直線に割けた。

 かはっ!…… 

 息が楽になった娘の喉が音を立て、貫頭衣の下からは、白く透けるような艶かしい肌が露になり、ふくよかな胸が弾ける

様に飛び出してきた。 その様は、虫が蛹から飛び出してくるようであった。

 ああっ……ああ……

 小麦色の娘の肌は、首の付け根辺りから下で真っ白な色に変わっており、その首も、下からじわじわと白く変わって行く。

 「来る……来る……」

 うわ言のように呟く娘

 ”感じるでしょう、甘いのが、気持ちがいいのが、下から上ってくるのが……”

 娘の耳元に舞い降りたワスピーが囁く。

 娘は、夢心地でうなずく。

 「いいわ……溶けちゃいそう……気持ちいいのが……染み込んでく……る……」

 肌の色が顔の辺りまで変わってくると、娘の言葉がしだいに間延びしだした。 やがて、娘は意味のある言葉をしゃべらなく

なる。

 ”くふふ……あれだけ蜜を注がれたんだもの……”

 ”もう、この子は何ニも考えられなイ……”

 ワスプの下で娘は喘ぎ、身をくねらせながら、白く、美しく、そして淫らな体に変貌していった。


 「や、やめてくれぇ!! 神様!!」

 納屋の中で、老いた農夫がワスプに襲われていた。

 鋤を振り回す農夫に、ワスプの胸から霧のような蜜が浴びせかけられる。

 「ぶはぁ!?」

 全身から力が抜け、藁山に倒れこむ農夫。 すかさずワスプは、その腰を抱きかかえ、とうに役立たずになっていた

『男自身』を引きずり出し、長い舌を絡めてきた。

 「ひぐっ!?」
 ビチャビチャと音を立て、ワスプは農夫のモノを激しく吸った。 信じられないことに、枯れ尽くしたはずの男根がワスプの

口の中で力を取り戻す。

 「や……ひゃめ……ひぃ……」

 その一生を、貧しい農夫として生きてきた男にとって、初めての感覚だった。 ワスプの舌が這い回る感触のおぞましさは、

言いようの無い魔性の快感となって彼の股間にへばりつく。

 『うふ……元気……ねぇ……あたしのも舐めてぇ……』

 ハスキーな声でワスプは媚を売り、農夫を仰向けに横たえ、互いの性器がを舐めまわせるよう覆いかぶさる。

 「ば、罰当たりな!!」

 あまりに恥知らず、神をも恐れぬ淫らな所業に、敬虔な農夫は恐れを通り越し、激しい怒りに囚われた。 しかし……

 ベチャベチャ…… ピチャピチャ……

 ワスプは、農夫の股間を愛しげに、そして丹念に嘗め回す。 其れにつれ、彼の眼前で口を開けた淫らな『女』が、甘い蜜の

涎を垂らし、彼を誘う。

 「やめれ……やめれ……」

 いつしか怒りは当惑に、そして抗いがたい欲望へと変わって行く。 それと気がつかぬうちに、彼はワスプの『女』に口付け

していた。

 『ああん……』

 甘えるようなワスプの声がし、彼の上の女体が悩ましげに震えた。 老いた体に、想像を絶する力が湧き上がり、次の瞬間

彼はワスプの性器を夢中ですすっていた。

 ビチャ、ブチャ、ジュル……

 ヌッチャヌッチャヌッチャ……

 納屋から人の声が途絶え、背徳の水音で満たされ、さほど時を置かずに、獣の雄たけびが響き渡った。


 「はぁはぁはぁ……」

 『うふ……素敵だったわ……』

 甘えるように、しなだれかかってくるワスプを、我に返った老農夫は汚いものでもあるかのように払いのけた。

 「やめねぇか!! この魔物が!! そうやっておらをたぶらかし、最後はおらを食う気だろう!!」

 『ふふ……その通りよ……』

 ワスプがあっさり肯定し、農夫の顔色が変わる。

 『それのどこがいけないの? あなたは死ぬのよ』

 「ふ、ふざけるねぇ!!」

 『今じゃなくても、そう遠くないうちに。 老いて死ぬか、病で死ぬか、獣に食われるか……』

 「な、なにを……」

 『それぐらいなら……ねぇ……私の中においでなさい……』

 「な、なんだとぉ……」

 『私の蜜は甘いわよ……とっても甘いの……あんまり甘いから……人間が口にすると……じわじわ……じわじわ……

蕩けていくの……』

 「お、おそろしい……」

 『痛みもなく……苦しくもなく……甘く……あまーく……溶けていくの……』

 「……」

 『とけて……蕩けて……気持ちよく……きもちよーく……とろけるの……』

 ワスプの胸が迫ってくる。 いや、ワスに誘われるままに、彼の顔がワスプの乳首に吸い寄せられていく。

 『ああ……ああ……舐めて……なめて……気持ちよく……きもちよーく……なりましょう……』

 甘い味が口に広がる。 トロリとした甘さは、喉に流れることなく、口の中にじんわりと染みとおる。

 「あまい……あまい……」

 『きて……おいで……私の中に……さぁ……おいで……』

 腰にずっしりと柔らかな重み、続いて粘るものが彼の『男』に絡みつき、ゆっくりと嬲っている。

 「ふひゃあ……ああ……ああ……蕩ける……とろける……」

 ヒクッ……ヒクッ……ヒクヒクヒクヒクヒクヒク……

 『男』が心地よく痙攣し、トローとした粘るものが吸い出されていった。 陶然とした老農夫はひさびさの、いや、初めて

味わった魔物と交わり、その余韻に浸る。

 「……ああ……ええ心地だ……」

 とっくに果てて終わったはずなのに、何か柔らかいものが体の中を舐めている様な、そんな奇妙な感覚が続いている。

 『ほら、感じる?……とけたあなたが、私の中で喜んでいる……』

 「なに?……ああ……」

 農夫は納得した。 溶けた自分の一部と自分がまだつながっていて、魔物の奥の感触が伝わってくるのだ。

 ヌチャ……ヌチャ……

 「なんて……ええ気持ちだ……」

 『さあ……続けましょう……ね……』

 ワスプは口元で笑い、腰をゆっくりめぐらした。 農夫の腰に、重く痺れるような快感が伝わってくる。

 「続ける……」

 『そう……もっと……私を感じて……もっと……蕩けて……おいで……くるのよ……私の中に……』

 「ああ……いくだ……中に……お前の中に……」

 農夫は呟くと、再びその恐ろしい蜜を口に含む。 体か蕩けていく快感に身を任せ、意味を理解することなく魔物の胎内に

自分から呑みこまれていく。

 「暖かい……気持ちええ……お前の中は……極楽……」

 『おいで……逃がさない……お前は私のもの……とけて……蕩けて……最後の一滴まで……私のもの……』

 納屋の中で、恐ろしい秘め事は延々と続き。 やがて農夫の体はワスプの中に消えうせた。

 いずれその体は、ワスプの肉や蜜に変わっていくのだろう


 女子供はワスプへと変貌し、男達は彼らの妻や子供たちがワスプとなるための糧に変えられる。

 その惨劇は、村人がいなくなるまで続くのだった。

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