ハニー・ビー

5-05 洗礼、聖歌隊の場合(2)


 「ディー……」

 半泣きの声で、水場の中に佇む少年の一人が友の名を呼ぶ。

 しかし、ディーはかすれた声を漏らしつつ、ワスプの腰に自分の腰を擦り付けるように蠢くだけだった。

 あぁ……

 絶望の呟きを漏らして、少年達は膝を屈し、湯気のたゆたうぬるま湯に首まで沈む。

 彼らはディーとワスプの妖しい儀式に目を奪われ、湯気に混じる甘い香りに気がつかない。


 ”そう……湯ニ体を浸シなさイ……体ニ蜜が染ミ込んで……気が変わるまで……”

 ワスピーの呟きが耳に入った少年はいなかった。


 あぁ……あぁ……

 ディーの小さな腰が、その倍ほどもある女の腰の上でゆっくりと前後していた。

 柔らかな秘所が少年の腰に密着し、熱い蜜を湛えた谷が少年自身を捕らえ、ヒクヒク脈打つ淫らな襞が、幼い

性器に絡みつく。

 あ……あ……

 声を上げ、うつろな瞳のディー少年。 彼は、もはや魔性の肉壷に吸い込まれた哀れな芋虫だった。 

 硬直したように見える体と裏腹に、彼の性器は妖しい魔物の愛撫に踊らされ、快感にのたうちまわっている。

 ワスプの熱い蜜が彼の性器に絡みつき、じわじわと中に染みとおっていく感触に、ディーは酔いしれた。


 ジュルリ……

 あっ……

 不意に、性器に加わる圧力が増し、首根っこを押さえ込まれた様な感じがした。 先端が、ヌメヌメした舌の様な

もので舐られている。

 ジュン……

 股間にぶら下がっているものが、きゅっと心地よく縮こまった。

 キュッキユッキュッ……

 股間の辺りが鳴きはじめ、ジンジンした痺れが股間から全身に広がる。 そして、ワスプの中に咥え込まれている

性器に、熱いものがせりあがってきた。

 ヒク……ヒクヒクヒクヒクヒクヒク……

 ああっ……ああ……

 ワスプの中で、ディー少年の性器から何かが迸っている。 とっても気持ちのよい粘っこい液体が出ている。

 ヒク……

 はぁ……

 ワスプの中で、彼の性器は小さく痙攣して最後の雫を流し、少年の体から力が抜ける。 しかし……

 キュゥゥゥゥ!

 「あっ!?」

 吸われた。 ワスプの中が、凄い吸引力で彼の性器を吸っている。 続いて、性器に走る熱い衝撃。

 ズクン!……ズクズクズクズク……

 あ……ぁぁぁぁぁぁ!

 出て行く。 ドロドロしたモノが、性器の中を通って吸い出されていく。 ワスプの愛撫で蕩けきった体の中から、

溶けてしまった魂が吸い出される。

 「あぁぁぁぁぁ……!」

 先ほどとは比較にならない、半ば強制的な快楽が、幼い体を包み込む。

 逆らうことのできない快感に翻弄され、ディーはワスプにしがみつき、柔らかく、暖かな乳房に顔を埋める。

 ビクビクビクビク……

 密着したワスプの腹が激しく震えている。 その中で彼自身がワスプに吸われているのだ。

 あ……あー……

 激しい快感に、頭がボーっとして来た。 大事なものが、次々に奪われていく様な気がするが、ワスプから離れられない。

そうするうちに、頭の中がすっきりして軽くなっていくような気がしてきた。

 (いい……気持ちいい……)

 ディーの頭の中が、その言葉で埋め尽くされて真っ白になる頃になって、ようやくワスプの吸引は止まった。

 「はぁ……」

 ワスプにしがみ付いていたディーは、脱力感に重くなった体を支え、やっとのことで立ち上がる。


 「あ……ディーのが!」 「ない!」


 少年達の声に、ディーは自分の股間を見下ろした。 細い筋が一本だけ走るそこは、幼い女の子の様だ。

 「……」

 しかし、ディーに驚いた様子は無い。 不思議そうに自分の股間を見つめるだけだ。

 『オイデ……』

 ディーを抱いていたワスプが、上体を起こして、彼に手を差し伸べて彼を呼ぶ。

 ディーは顔を上げてワスプを見ると、ためらう様子もなく彼女に歩み寄って、その傍らに跪いた。

 ワスプは、自分の胸を持ち上げてディーに示し、ディーは目を軽く閉じて、その乳首を口に含む。


 「ディー……?」

 訝しげな表情の少年達に、ワスピーが寄ってきて囁く。

 ”見てごらん……ほら……”


 んく……んく……

 細い喉をこくこく鳴らし、ディーは蜜乳を飲む。

 暖かい甘みが喉に絡みつき、じんわりと体に広がっていく。

 あふ……

 胸がきゅんと締め付けられ、声が漏れた。 目を開けて自分の胸を見ると、ささやかに膨らんでいる。

 サラリ……

 髪が滑り落ちて視界に入る。 黒かった筈の髪は、プラチナブロンドに変わり、しかもサラサラした感触だ。

 (……あは♪)

 からっぽだった頭の中に、どうしようもなくうれしい気持ちが沸いてきた。

 視線を上げてワスプを見つめる。 虹色の複眼のワスプと目が合うと、不思議に気持ちが安らぐ。 辺りを

飛び回るワスピーの声が、天使の囁きの様だ。

 ”ふふ……可愛イイわ……”

 「あん……」

 ワスピーに可愛いと言われただけで、お腹の辺りが疼き、股間が湿り気を帯びたのを感じた。

 ”とっても素直な女の子……”

 ”おイで……選んであげる……”

 ワスピーに声をかけられると、ディーはワスプから離れて立ち上がる。 その体は、もう少女のものに変わっていた。

 
 「ディー……」

 少年の一人が声を出す。 しかし、もうその声に驚きは無く、けだるげな声にはつやっぽい響きすら感じられた。

 ”さあ……おイで……気持チよくなリたイでシょう……とっても気持ちイイから……女の子ニなるのは”

 ワスピーが誘うと、戸惑いの表情を浮かべつつ、何人かの少年が立ち上がり、手招きするワスプの腕の中に体を

預ける。

 さして時をおかず、少年達のくぐもった喘ぎが部屋を満たし、そして艶っぽい少女の喘ぎへと変わって行く。

 魂を奪われ、魔性の蜜を味わった少年達は、少女へと脱皮し、蛹になってワスピーを宿し、ワスプへと羽化する。

 こうして、襲われた村々から次第に人の影が消えていく。

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