ハニー・ビー

4-08 蛹


 アレスィーナはワスピーの誘いのままに目を閉じた。

 脈動していた豊かな胸が、ゆっくくりと動きを止め、続いてワスプ達が、滑らかな動きでアレスィーナから離れた。

 アレスィーナは、白い彫像のように立ち尽くす。


 アレスィーナは、体の奥底からで蕩けるような生暖かい感触が広がって来るのを感じていた。

 「いいの、これ……はぁ……」 

 うっとりと心地よい感覚に浸りるアレスィーナ。 と、体が緩やかに痙攣する。

 ヒクン……

 「ひゃん!」 つい声が漏れた。

 トロ…… 

 痙攣に続いて、ジワリと蕩ける感触が広がる。

 「は……ああ……溶けるぅ……」

 ”イイ気持ちでシょう……身を任せなさイ……感ジるままニ……そシて、変わりなさイ……”

 ワスピーの囁きにあわせるように、体のうちから柔らかい快感の波が生まれてくる。

 ヒク……ヒクヒク……ヒック、ヒック……

 「あ…ああ……ああああ!」

 アレスィーナは壁に手を着いて、体を支え、沸き起こる快感の波に耐え……いや、快感の波に身を任せていた。

 ニュク……ニュクニュク……

 形容しがたい感覚にアレスィーナの体は、不自然に痙攣する。 一方でその両手は、地下室の壁にピタリと張り付き

微動だにしない。 傍から見ると、アレスィーナが苦しんでいる様にも見えた。

 「あふぁ!……がは……」

 発する声が、鳴き声に近くなってきた。 そのアレスィーナの体の中で、『アレス』の魂は至福の中にいた。

 (……溶けちゃいそう……変な感じ……でもすごく気持ちいいや……)

 
 ”そろそろ、ね……”

 ワスピーが呟いた直後、アレスィーナが動きを止めた。 壁に手を着いたまま、大きく背をらし、天井を見上げて仰け反る。
続いてその体が激しく震えだす。

 (いく……いく……いきそう……いっくー!)

 ビクビクビクビク!……ゴボッ!
 アレスィーナが、口から透明な液体を大量に吐き出した。 やや粘り気のある液体は、微かな明かりに煌きながら、

美しい裸身を包み込んでいく。

 ビッ……

 天井を見上げたアレスィーナ、その額の辺りが裂けた。 同時に頭の辺りが、いっそう激しく震えだす。

 ビッ……チッ……ビッ……

 小さな音を立て、アレスィーナが『脱皮』する。 白い人間の女の皮を脱ぎ捨てるようにして、薄茶色のワスプの『蛹』が

姿を現していく。

 ビッ……チッ……ビッビッビッビッ……

 『蛹』は、人の皮を器用にふるい落としていく。 さしたる時間もかけずに、アレスィーナだった女体は、ワスプの『蛹』に

姿を変えた。


 (はぁ……はぁ……よかった……とっても……)

 ワスプの『蛹』の中で、『アレス』の魂は変身の余韻を楽しんでいた。 体が蕩けきり、陽だまりの中でまどろむような

至福の感覚、その中に魂が漂っているような感じだ。

 ”ふふ……『アレス』……わたシの体……ようやくヒとつニなれるのね……”

 ワスピは、宙を滑るように飛んでくると、ワスプの『蛹』の額に着地した。

 ”……は……はぁ……”

 ワスピーは、そこで自分を慰め始めた。 ごく小さな秘所が、虫の囁きのような水音を立て、ワスピーの『蜜』がワスピの

額を濡らす。 と、『蜜』のかかった部分が溶け始めた。

 ”はぁ……あぁ……ああ……”

 ワスピーは、溶けたところに自分自身を激しくこすり付ける。 ワスピーの下半身が、『蛹』の額にもぐりこみ、やがて『蛹』の

中身に接触した。

 ”はぁぁぁぁぁ!……”

 小さな体を震わせ、ワスピーが達した。 その下半身から『蜜』が溢れ、『蛹』中に混じる。

 (……うっ!?……ああ?……)

 ワスプの『蛹』が変態をはじめた。 蕩けきったアレスィーナの体を栄養とし、ワスピーの体を原基としてワスプの体が

作られていく。

 (変わる……ああ……ボク……わたしがワスプに……)

 ”アレス……いえアレスィーナ……”

 (ワスピー……ああ……声がこんなに近くで……)

 ”やっと一つに……さぁしばしの眠りを……”

 (ええ……)

 『アレス』はワスピーの魂が近くに感じながら、眠りについた。 次に目覚めるとき、彼、いや彼女はアレスィーナ=ワスプと

呼ばれる生き物に生まれ変わっているのだ。


 『蛹』が完全に動きを止めた。 その中では、新たなワスプが生まれつつあった。

 「これで、ようやく最初の7人……」 クララ=ワスプが呟く。

 「クララ、他の子達の面倒を見てあげて。 私とベティは、森のワスプと協力して修道院を」

 クララは頷いた。

 ”女王様のために”

 ”女王様のために、そして皆を幸せにする為に”

 アン=ワスプ達、その頭からせり出したワスピー達がさわさわと囁きあった。

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