ハニー・ビー

3-08 魔性の誓い


 「うわぁ!」

 ルウは叫んで、いきなりクララのお腹を蹴った。

 「!?」

 子供のルウだ、たいした力はない。 しかし不意を突かれた格好のクララは、よろけてしりもちをついてしまう。 その隙にルウは

立ち上がり、よろけながら走り出した。


 ”クララの呪縛を破った……利発な子と聞イてイたけど……” ワスプが呟く。 ”先に警戒させたのが、イけなかった?……追わないと”

 クララの体の要所が黄金色のプレートで覆われ、ワスピーが『兜』の下に隠れた。 その場に立ち上がり、うずくまっているロンを見おろす。

 ”しばらくはこのままのはず……”

 クララは、ロンに脱ぎ捨てられた夜着をかけてやり、踵を返してルウを追う。

 
 「逃げなきゃ……逃げなきゃ……どこへ……考えなきゃ」

 泣きそうな顔でルウは夜の高原を走る。 冷たい土が足の裏に痛い。

 ”そうだ、道にそって逃げていたら捕まる”

 ルウは道をそれ、草原の方に進路を変えた。 夜露に湿った草の感触が気持ち悪い。

 「道が判らない……そうだ星で方角を決めればいいんだ」

 ルウは明るい星を目標にして、まっすぐに走っていく。


 ワスプの目は遠くのものが良く見えないが、音は人よりも良く聞こえる。 しかし、『孵った』ばかりクララは『耳』が拾う音になれていなかった。 

結果として、クララはルウが道をそれた事に気がつかず、道なりに彼を追っていた。

 ”まだ追イつけなイ?”

 ワスピーがそう思ったとき、クララの『耳』が小さな悲鳴を拾った。

 「ルウ!?」

 ”追イ越シた!?”

 クララは振り返り、悲鳴のしたほうに駆け戻る。


 高原は平坦とは限らない、草の茂みが地割れや雪解け水の湧出口のを隠していたりする。 クララの足元には冷たい水を流す沢があり、その岸に

誰かが足をすべらせた跡が残っていた。

 「ルウ……」

 沢はの流れは再び地下に消えている、ルウは助からないだろう。 クララの胸に悲しみが沸き起こる。

 ”悲しまないで”

 しかし『クララ』と一体になったワスピーが、『クララ』の体の中に『蜜』を流し出すと、拭ったように悲しみが消えていく。

 クララはその場を離れ、ロンの元に戻る。


 「ふに……?」

 ロンは目を瞬きさせた。 自分は何をしているのだろうという疑問が沸き起こる。

 「ロン。 待たせてごめんなさい」

 クララの声がして、背後からロンは抱きすくめられた。 少し遅れて甘い匂いが彼を包み込む。

 「あっ……」

 振り返るロンの顔を、柔らかいクララの乳房が挟み込み、彼の体から力が抜けていく。

 クララはロンを組み敷き、その場に押したおす。

 程なく、闇の中に少年の睦み声が漂いだす。


 は……ふぅ……

 ロンはひたすらクララに翻弄された。

 目覚めを迎えていない少年の性をクララはもてあそび、胎内に導いて魔物の蜜に浸らせる。

 ロンはそこから魔性の快楽が染みとおってくるのを感じたが、拒むこともなくそれを受け入れた。

 やがて二人は動きを止め、体を繋げ、抱き合ったまま互いを見詰め合う。

 「ロン、気分はどう?」

 「ふわふして……とっても気持ちいいの」

 「ずっと、このままでいたいでよね?」

 「うん」

 クララは口元に冷たい笑みを浮かべ、胸をこすりつけた。 女の乳首と乳輪が少年の胸を愛撫し、ロンを喘がせる。

 「ロン、貴方もワスプになるのよ。 そうすればずっと気持ちいいままでいられるから」

 「気持ちいいままで……」

 「そうよ」

 クララがロンの口に自分のおっぱいをおしつけ、蜜を飲ませる。

 「ふにゃ……頭が溶けていくみたい……何も考えられない……」

 「これから毎日、私の蜜を飲むの。 そして女王様を助けるの。 そうすれば、貴方もワスプにしてもらえるから」

 「うん……クララ姉ちゃんの言うとおりにします。 ロンは女王様を助けてワスプになります」

 ロンは蕩けきった笑顔でクララに誓った。


 同じ頃孤児院でも、子供たちがロン同様にアンやベティに誓っていた。

 アンの女が、ベティの舌が、子供たちを篭絡するたびに、子供たちの口から恐ろしい言葉がつむぎ出される。

 「ベティ姉さま……はい、女王様を」

 「僕たちがたすけます……」

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