ハニー・ビー

1-05 泉


 「おーい……」

 ビルナの声が、木々の間に吸い込まれて消える。

 実は四人とも、見事にバラバラになっていたのだが、互いにそれを知る由もなく、皆、自分だけがはぐれてしまったと思い込んで

いた。

 ビルナは、不安げに森を見回す。

 標高が高いにもかかわらず、森はうっそうと茂り、木の肌に厚いコケが張り付いて音を響かせない。

 「お……」

 再度呼びかけようとしたが、心細さで声がしぼんでしまった。

 耳に突き刺ささるような静けさに、ビルナの体が細かく震えだす。


 ピチャッ……

 ひっ!

 小さな水音がして、ビルナは飛び上がり、次いで盛大に怒鳴った。

 「だ、誰だ! 脅かすな!!」

 返事はない。 代わりに再び水音。

 ピチャッ……

 「だ、誰だって……畜生!馬鹿にしやがって!見つけてやるぞ」

 ビルナは耳を澄まし、水音がしたほうに向かう。

 いくらも行かないうちに、彼は小さな広場にでくわした。 その空き地の真ん中に、ごくごく小さな泉があったのだ。 しかし、そこに

湛えられていたのは水ではなく、黄金色の液体だった。

 「こ、これは……凄い!蜂蜜じゃないか!」

 泉の周囲は、10人程が手を繋げば取り囲めるほどでしかない。

 が、そこに湛えられているのが蜂蜜であるとすると、この泉一つでクレイン伯領で一年に取れる蜂蜜の量に匹敵するだろう。 それ

だけでもたいした額ではあるが。

 「こ、これが…『ワスプの蜜』か!? たしか、色が黒っぽいとか聞いていたが」

 イイエ……これは違うハ……

 「なんだ、がっかり……え?し、シスターですかい?」

 ビルナは声の主を探して、辺りを見回す。 そして、泉に視線を戻し、目を剥いた。 泉の中に、異形の物体が現れたのだ


 ゴボリ……

 蜂蜜の泉の中に、人程もある白く丸い物が浮き上がってきた。 それも二つ。

 「なんだぁ?これは」

 その物体が半ばまで浮かび上がったとき、ビルナから見て向こう側に人影が見えた。 その人影は、白い物体を抱え込んでいるように、

ビルナには見えた。

 「誰だ!?」

 誰何の声に、人影がゆっくり顔を上げ応えた。

 「我は、ワスプ。 女王に仕える蜜の番人ナリ」

 「貴様が『ワスプ』だと!?」

 ビルナはワスプの頭から顔を見て、息を呑んだ。

 両の目は細かい網が被ったようになっていて、中心に黒っぽい物が見える。 まるで虫の目だ。

 頭には、奇妙な形の兜を被っていて、その色はワスプの体のあちこちを覆う甲と同じ色。 つまりそれは兜ではなく、ワスプの体の一部なの

だろう。 

 「おい、お前が抱えているそのおかしな物、それは一体何だ?」

 「これハ、我がカラダの一部、乳房ナリ」

 「げ!」

 ビルナは、その物体とワスプが繋がっている事に、ようやく気がついた。

 そのワスプの両の乳房は、ワスプ自身と代わらぬ大きさにまで肥大化していたのだ。


 (なんてえ化け物だ。 しかし、あれじゃ動くこともできまい)

 ビルナは心の中で呟いて、腰の剣に手をかけた。

 「おいお前、蜜の番人といったな。 黒っぽい蜜の事を知っているな!?」

 「モチロン」

 「本当か! お、教えろ」

 ク……クフフフフ……

 返事の代わりに、そのワスプは喉を鳴らして笑った。 それにあわせて、彼女の巨大な乳がフルフル震える。

 「答えろ、さもないと」

 「サモナイト……なあに?」 ワスプが馬鹿にしたように言った。

 ちっ…… ビルナは舌打ちをし、剣を抜いてワスプに近寄る。 ワスプの体が浮いているのは、「蜜の泉」のこちら側の端。 十分に手が届く。

 「教えねえと、大事なおっぱいが傷物に……うわぁぁ!」

 プッシャァァァァ……

 ワスプの巨大乳房から突き出た巨大な乳首、そこから黒っぽい液体が噴出し、ビルナの全身を濡らした。

 「うっぷ、うわぁ」

 全身に冷たい痺れが走り、力が抜ける。 剣が手から滑り落ち、続いてビルナが倒れこむ。

 「う、動けねぇ!?」

 「クフフフ……、我ハ蜜の番人と言うたでアロ。 我ハ、乳より様々な効能の蜜を吹くが役目。 己が浴びたは、体の自由を奪う蜜……サテ、くるが

良いぞ」


 モゾリ……

 ワスプの乳が、軟体動物の様に蠢き、ビルナにのしかかって来た。

 「や、止めろ……来るな!……」

 叫びも空しく、ビルナはワスプの乳に包み込まれた。

 グニグニと乳が蠢き、谷間にビルナを呑み込んでいく。

 「ひぐっ!?……な、なんだ……」

 「クフフ……服や、皮が溶けていくのだ……ほら、蜜が欲しかったのであろう?……全身で味わうが良い」

 ワスプの乳は、半分蜜の泉に沈んでいる。 そこから谷間に蜜を吸い上げ、ヌルヌルになった乳房がビルナの全身を嘗め回す。

 「ひぎ……ぎぎぎ……」

 ワスプの言うとおり、服と表皮が溶けてしまったのか、全身の感覚が見る見る鋭くなっていき、耐え難い刺激が全身を襲う。

 「た、助けて……」

 「おやごめんナサイ。 興奮しすぎタヨウダ……」

 乳房の圧力が減り、愛撫がゆっくり、丁寧な動きに変わってきた。 苦痛にも似た刺激は、極上の蜜の愛撫に変わり、蕩けるような甘い疼きがビルナを

包み込んだ。

 「うぁ……こ、これは……」

 「クフフフ……気持ちよいだろう……」

 「うう……たまらん……蕩けそうだ……」

 「その通り。 クフフフ……」

 「え?」 ビルナはぎょっとした。

 「目覚めたばかりで、蜜だけでは滋養が足りぬ。 これからお前をトロトロに蕩かして、我らの滋養に変えるのだ」

 巨大乳ワスプがそう言うと、森の中から数人のワスプが出てきた。 こちらのワスプたちは、人間の体型と大差ない。

 ジュルリ……

 赤い蛇の様な舌で唇をなめ回し、ワスプたちが囚われのビルナに迫ってくる。

 「ホラ、皆お前を欲しがっている」

 「ひっ……ひぃぃぃ……」

 逃げ出そうとしたビルナを、ワスプはあやすように乳房でこね回す。

 そして、森から出てきたワスプの一人が、ビルナの前にひざまづくと、カチコチに固まった男根を谷間から引きずり出し、舌を巻きつけて深々と咥え込んだ。

 「ああ……あぁぁぁぁぁ……」

 ビルナの呻きが、熱い喘ぎに変わるのにさしたる時間はかからなかった。 

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