深き水

12.誘惑


真奈美がバスルームで人魚達の淫夢に溺れていたのと同じ頃。

マンション・ゼロ505号室、川上礼二の自宅。
礼二は少し早めに帰ってきていた。

「ふぅ…ただいま」
礼二は今日一日外で動いて喉が渇いていた、冷蔵庫から水を出してゴクゴク飲む。

今日、鑑識の人間と一緒に2つの現場を回り、床を調べてもらったのだ。
結果は、住宅の床には大量のダニが住んでいることが判っただけであった。
いや、ミイラの周りから玄関にかけて、帯状にダニが極端に少ない部分があった。
「エミさんの証言を肯定する材料の一つにはなる…しかし…」

服を脱ぎ捨て、下着一つの姿でベッドにあお向けになって考える。
”緑に光る水…そんなものが…”
心証的にはエミが真実を言っていると思えるのだが、常識が邪魔をする…
疲れていた。ウトウトする…

サワリ・サワリ…羽が触れるような微かな愛撫…心は眠りに入ろうとしているのに、体の一部が目覚めていく…
ペロリ・ペロリ…くすぐったい…
パク…アムアム…なにか…
ペチャリペチャリ・股間が妙に…
ペタリ…レロー・”気色いい…はて何だ?…”

意識が戻ってくる…目を開き、起き上がろうとするが…体が動かない…
「何だ?…」
何とか目だけを動かし、視線を足のほうに向ける…股間の辺りで何かが動いている…人の頭?…
誰かが自分の…男根を咥えている?…
「き、君は誰だ…くそ…体が動かない?…」
女がゆっくり顔を上げていく…知らない顔、かなりの美人だ…その目が光っている…緑色に…
”こいつだ!…こいつが犯人だ!…”礼二は直感する…
”犯人?…ナンノコトカシラ…”
「!…心が読めるのか?…」
”フフ…詳シイコトハイズレユックリ…アナタノ心ト体ヲイタダイテカラ…”
「何をしている、やめるんだ…」
”心配シナイデ…トテモ気持チヨクシテアゲル…心ガ溶ケテナクナルマデ…”

女は再び、礼二の股間に顔を埋める。
「おい…あ…あぁぁ?…はぁぁぁ…」
女が、睾丸を咥え、クチャクチャとやさしく転がす…甘噛みしながら舌で転がしている…コロコロした感じで睾丸が擦れ合う…
睾丸の周り、陰嚢の中に甘いクリームが詰められ、揉まれていく…睾丸が気持ちいい…
「だめだ…やめろ…やめて…」声は抵抗するが、弱弱しい…
体は女にされるがまま…心に甘いクリームが塗られていくようだ…
「なんて…甘い…」
”甘イノガイイノ?…ナラ、クリーム漬ケニデモシテアゲヨウカシラ…”
「?」女の言う意味が理解できない…

女の口の奉仕は、陰嚢の中に快楽のクリームを詰め込んでいく。陰嚢が縮み上がりグニャリ、グニャリと蠢く…一物が固く張り詰めてそそり立つ…
礼二は声が出ない…心で抵抗を続けているが、体が言う事を聞かない…
そして…体の感じているものが、直接心に染み込んでいく…心が溶ける…
”なんだ…これは…駄目だ…感じたら…おしまい…そんな気がする…”
心と裏腹に男性器は遠慮なく昂ぶっていく…もっともっと、とねだっているような気がする、そして心の中でも…

”ココハ私ノ虜ニナッタ…次ハコレ…ウフ…”
女の口が陰嚢を解放し、いとおしげに一物に頬ずりする…礼二の腹がビクリと震える…
”期待シテイルノネ…スグニヨクシテアゲルカラ…”
「よ、よせ…あぁ…や、やめ…あ…」
女が一物を横に咥える…裏筋に沿って舌を這わせる…チロチロ…
舌先の這っている辺りに…導かれるように睾丸から熱い快感が上がってくる…
ヒクヒク一物が痙攣し始めた…一物にも生暖かいものが詰まっていく…睾丸の中が甘くチリチリする快感で破裂しそうだ…
”出したい…出して…だめだ…逆らえなくなる…”
”ソウヨ…一度出スト私ノ虜ニナルノ…ネェ…ソウナッテ…”
女は一物を咥えたまましゃべっている…ネットリとしたその声は脳に絡みつく…頭から離れない…
”虜に…虜に…女のものに…だめだ…”
甘い快楽に溺れそうになり、必死にもがく礼二…だがいつまで続ければ良いのか…

女の口は亀頭まできた…一度口を離す…
”ミテ…”
女の声のまま、目で自分の一物を追う…
ふわっと女が亀頭を咥える…
「!…くっ…くぅっ…」
咥えられただけなのに、甘い痺れが亀頭を支配する…もはや礼二の男性器は女のもの…達していないのは、女がまだ許していないから…
”タマラナイデショウ…出シタイデショウ…モウ少シヨ…一気ニダサセテアゲル…人ノ心ト一緒ニ…”
「人…の…心…?…」辛うじて声を絞り出す…抵抗できないでいる…間もなく全てを吐き出してしまうだろう…
”ソウ…出シテシマウト楽シイワヨ…悩ミモ…後悔モナクナルカラ…”
「い…け…な…い…だ…め…」辛うじて声は出る…でもそれだけだ…
”マダ抵抗デキルノ…フフ楽シミ…モウ少シイジメテアゲル…”

亀頭を咥えこんだ口が、ゆっくり亀頭を吐き出す…そうしながら柔らかい唇で愛撫する…呑み込み、吐き出す…また…
”く、くあっ…も…もっ…い…いかん…”
女は舌を出して、裏筋の辺りから鈴口にかけてベチャリと貼り付け…ヌラーと舐めあげる…
”くををを…”
鈴口に口づけし、チュッ、チュッ、と軽く吸い…舌を伸ばしてカリを舐め上げる…
女の舌が亀頭を執拗に舐めあげる続ける…ヒクリ、ヒクリと一物が痙攣する…亀頭の快感以外感じられない
「あ…あ…」
礼二は意味のある言葉が出ない…快楽に喘ぐだけ…
”逃げられない…耐えられない…いきたい…楽になりたい…どうなっても…”
心も女の支配化に入ろうとしている…

女は口を離し、体を移動させ、礼二の股間に自分の腰を密着させる。
肉感的な体の割には重さを感じない。だが、その肌の感触は異様なほどはっきりしていて、気色いい。
いく寸前の男性器が、女の女陰のヌラヌラした感触を喜び、ビクンビクンのたうつ…自分から女の中に潜り込みそうだ…
”カワイイワ…イマイレテアゲル…”
女が腰を持ち上げ、女陰に礼二の亀頭をあてがう…

「あ…あ…うぅっ…」
強い快感の刺激が股間を走り、それが礼二を幾分正気に戻した。
”サァオイデ、私ノ中ニ…オ前ハ私ノ虜ニナルノ…コノ世ノモノデハナイ快楽ニ溺レルガイイ…”
「よせ…やめろ…」
”なにかよくわからんが…あれに…あれに入れられちゃまずい…あ…あぁ…もう駄目だ…”

礼二の体に白い衝撃が走り抜ける…


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