深き水

10.真奈美


エミと礼二が会った同じ日、他の場所でも「問題」が発生していた…

同日の夜7時。
水神町、マンション・タキオン・コーダン412号。
ここは、典型的な中流家庭、水上家の住居だった。
そこの一人娘の高校二年生、水上真奈美が帰宅する。
共働きの両親はまだ帰宅していない。

「ただいま…」だれもいない家に、力なく帰宅の挨拶をする。
今日は水泳部のインターハイ選手選抜会があった。
夏休みの部活で頑張ってきたが、結局おしいところで一年の新入部員に負けたのだ。

鞄を居間に放り出し、クーラーをつける。
が、家にこもった熱気は簡単には引かない。
台所に行って、冷蔵庫を物色する、
「ジュース、アイス、…太りそう…麦茶は…空。ん、もぅ…水だけ」
仕方なく、ミネラル・ウォーターで我慢する。

居間にもどるが、暑い…
乱暴に服を脱ぎ散らかし、浴室に入る…母親が見たらまたいろいろ言われるに違いない…
シャワーを全開にする。
お湯かと思うほどの生暖かい水が頭から降り注ぐ。
”うわ…部屋の中よりはましだけど…”
目を閉じて、シャワーを浴びている…

真奈美は水の中が好きだった。
水の中なら体が軽い、誰よりも早く泳げる自信があった。
変化が起きたのは、高校に入ってから…胸が育ちだしたのだ…二年生になったときはDカップになっていた…
他の女の子達は羨んだり、妬んだり…でも泳ぐのには邪魔になるだけ。
真奈美にとっては邪魔な瘤でしかなかった…そして今日、とうとう…
”いまいましい胸…”
”ソンナコトハナイワ…トテモ綺麗ヨ…”
「!誰…」誰かいる…慌てて回りを見回す…誰もいない…
そういえば、耳に聞こえた音じゃなかったような…空耳?…心の声…

ほっと息を吐き、またシャワーの水流に身を任す…中々冷たくならない…
水が温かいのがむしろ心地よい…体を水が撫でていく…優しい水の愛撫…
頭から掛かる水は胸の傾斜に沿って流れくだり、乳首の突起に絡みつく…優しく…
「は…」息をつく…乳首が感じる…ピンと立つ…
”やだ…どうしちゃったの…”

流れる水が腰にまとわりつき、淡い茂みを濡らし股間へ回り込む…若く張りのある外陰部は女陰の奥を隠している…
その隙間に水が回り込み…じわじわ染み込んでくる…
”やん…何か…変…”
少し、足を開く。水が股間の突起を刺激する…暖かい水の紐…水の舌が舐める…チロチロチロチロ…
「はぁ…はぁ…」
呼吸が少しずつ荒くなる、次第に股間が熱くなる…体の中も…そう認識すると体の火照りが強くなる…
”…もう少し…もっと…もっと…”心の中で、物足りなさが大きくなってくる…
真奈美はシャワーヘッドを外し、勢いを最強にして胸にあてる。
「…あぁぁ…」
生暖かい水が、胸を直撃する…暖かい手で胸や乳首が揉みしだかれるような感触…
”何…これ…ああ…もっと…もっとして…お願い…”胸に熱いものが溢れ、思考が混乱する…異様な程の性欲が湧き起こる…
真奈美の両手が勝手に動く、左手が女陰を広げ、右手に持ったシャワーを押し当てる…
「!…ひぃ…」
体が硬直する…暖かい水の棒が膣の肉襞を渦を巻いて舐めまわし、一気に子宮の奥を突き上げた…
シャワーヘッドから出ている水流の量と勢いが尋常でないが真奈美は気づかない…
「はぁ…あん…あん…ついて…もっと突いて!…」
水の棒は圧力を断続的に変える。真奈美は水の棒でピストン運動の責めをうけていた…
”あぁ…何が…止まらない…水に…水に犯されている…いぃ…もっと…”
頭の中まで水がきているみたいだ、チャプチャプいっている…快楽の液体が頭の中でも波打ちうねる…引きずりこまれる…
「!」真奈美の体がえびぞる…頭が白くなる…絶頂が続く…立っていられない…バスルームの床に座り込んでしまった…

呆けて座り込む真奈美の股間は、快感でヒクヒク動き、愛液を少しずつ吐き出している…トロトロトロトロ…止まらない…
愛液は何故か真奈美の前に溜まり、排水口に流れない。

真奈美は見た、自分の中から出た粘る液体が盛り上がり、人の…女の形を取るのを…女の目が緑色に光る…
驚くべきなのだが、頭が回らない…真奈美の目も焦点が合ったり…合わなかったりしている…
「だぁれ…」ぼうっとした口調で真奈美が聞く…

”サテ誰カシラ…フフ…ソウネ…水ノ精トイウノハドウ…”
「『水の精』…何をしに来たの…」
”アナタガ欲シイ…アナタノ体ガ…”
「私が…欲しい…」真奈美には言葉が理解できない…
”ソウ…”
女は身をかがめて真奈美に口付けする…水でできた舌…真奈美は自分の愛液だったことを忘れている…が口の中に入ってくる…
「んむ…」抵抗できない…頭が働いていない…
見てくれは水なのに、肉を持った人のような感触の唇と舌…レズという単語が頭に浮かぶが…”考エルナ”…頭に響く言葉が思考を断ち切る…

再び体が熱くなってくる…また性欲が湧き起こる…我慢できない…
「はぁ…ねぇ…もっとして…」ねだる真奈美…
”イイワ…私ノ中ニオイデ…”
「?…きゃ…」
女が真奈美に覆い被さり、形が崩れて真奈美を飲み込む…一瞬もがくが不思議と呼吸に支障が無い事に気づき、動きを止める真奈美…
気が付けば…真奈美は水の幕で覆われていた…女に包み込まれたのだ…
水の女が手をゆっくり動かす…真奈美の手は女の中から出られない…一緒に動かされてしまう…
女が自分の胸に手をやる…真奈美も自分の胸をもみ始めた…
「うふ…あは…あ…はぁ…はぁ…」
自分で慰めているのか…女に責められているのか良くわからない…
自分でするときよりずっといい…人にされているからか…異常な状況が興奮させているのか…
左手が胸を慰め、右手が股間に伸びていく…クリトリスをなで摩る…
「ひ…あは…変になる…おかしくなっちゃう…」
”ソウヨ…変ニナルノ…オカシクナルノ…私ノ愛撫ニ溺レナサイ…”
女の手が女陰をいやらしく弄る…女陰の中にずぶりと手をつき込む…
「うぐぁ…ぁぁぁぁぁ…はぁぁぁぁぁぁぁ…いい…いいの…あはぁ?…」
体を取り巻く水が波打つ感触がある…ヒタヒタ…肌を一斉に愛撫する…そして体の内側からも何が蠢いている…
「…」もはや声も出せない…頭の中が白く…そして空っぽになる感覚…空になった頭の中に、今度は甘くネットリした甘い液体が流れ込む感覚…
頭の中を満たす…脳が浸される…快楽漬けにされる…
女の手の動きが大きく、深く、ゆっくり、執拗に…自慰を…自分の中の真奈美の性器を丁寧に愛撫する…
真奈美の胎内に生まれた快感は、熱い波となり、体の中心から外に向け広がる…肌を突き抜け、水の女の表面で反射し、再び真奈美に潜り込み…最後に子宮に収束する…
水の快感の波に翻弄される真奈美…
「うぁぁぁ…はぁ…あぁぁぁぁぁぁ…」
子宮が大きく収縮し、絶頂の波が激しく広がり…また収束する…何度も…
真奈美の両目が開かれ…体が快感に硬直する…
水に包まれていなかったら激しく絶叫していた…それほどの快感だった…

唐突に女が真奈美を解放した。
壁に寄りかかり、余韻に浸る真奈美…その頭の中に甘いものが根を下ろす…
”ウフフ真奈美…気持チ良カッタ?”
「うん…」答える真奈美…依然として頭が回らない…
”疲レタデショウ…休ミナサイ…続キハ明日…マタシマショウ…”

気が付けば、真奈美はバスルームの床に足を投げ出して座り込んでいた…
外したはずのシャワーヘッドは頭の上の定位置に固定され、ようやく冷たくなった水を真奈美めがけて降り注いでいる。
足の間からは愛液が流れているが…その量は普通だ…
「何だったの…私…」起こった事を思い出そうとするが、倦怠感が強く頭が働かない…

体を起こす…体が重い…全力で泳ぎきってプールから上がろうとするような疲労感がある。
のろのろ動いて、体を拭き、服を着る。
「喉が渇いた…水…」
また、冷蔵庫を空けて残ったミネラル・ウォーターを飲み干す。
自室に帰り、ベッドに崩れ落ち…そのまま寝てしまった…


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