深き水

7.温泉


翌日、彼は目覚める…大学に行くでもなく部屋でじっとしていた。
3度の食事をコンビニ弁当と水で済ませ…夜を待つ…

夜が来る…ベッドに横になり時を待つ…ふっと甘い香り…眼を開けると白い女が自分を見下ろしている…
”待ッタ…”女の声…頭に染み込む…
「はい…」待っていた…頭の中は白い女の事だけ…
”ウフフ…行キマショウ…”女が誘う…
彼は頷く…女が乳に手をやる…
ピチャピチャ…女の胸から暖かく白い乳が迸り…ベッドら横たわる彼を濡らす…
ゆっくり体が沈んでいく…

下から柔らかいものが上がってくる…それに乗って水面に出る…
乳の海の乳房の小島、彼はそこにいた…裸で…
乳房の一部が盛り上がり…白い女の形を取り彼の側に立つ…
”ゴ覧…”乳首を指差す女…
乳房の島の乳首がへこむ…かなりの部分が陥没し…下からさらに乳がポコポコ満ちてくる…湯気が出ている?…
手を入れてみると…丁度良い湯加減…乳加減か?…母乳温泉…美肌効果がありそうだ…

女が彼の手を取る…
”オイデ…ココデ仕上ゲヲシテアゲル…”
誘われるまま乳の温泉に体を沈める…体に染み込む…暖かい乳が…タプンタプンと波が立つ…彼の肌を乳の波が愛撫する…
「はぁ…極楽…」…また、肌が白く染まっていく…染まるほどに心も…頭の中も白くなっていく…
女が彼の正面に回り…手で顔をはさみ、そっと口付ける…ピンクの唇が、彼の口に重なり乳を飲ませてくれる…
「ふぁ…んくんくんく…」…
そっと女を抱き寄せる…
”力を抜いて…浮カンデ…”女が指示する…
言われるまま力を抜く、あお向けにプカリと乳に浮く…
”魂ノ奥底…残ッタ人ノ心ヲ吸イ出シテアゲル…”
言葉の意味が理解できない…

女が顔を股間に寄せてくる…その口がそそり立つ一物を捉える…
「ふっ…あ…」
亀頭がピンクの唇に咥えられる…裏筋と鈴口がチロチロ舐められている…
白い手が…睾丸を揉みしだく…女の口がモゴモゴ何か言っていて…それが体の隅々まで響く…
”オイデ…オイデ…人ノ心…ココニオイデ…私ガ吸イ出シテアゲルカラ…”
頭か心臓か…最後まで残っていた『何か』が女に誘われるまま睾丸に動いていく感覚…
『それ』が睾丸に収まった…暖かい…快感に変わる…圧力が高まる…
「あ…いく…」
ドロッとしたものが射精される…ドクッドクッドクッドクッ…
失われる…『何か』がなくなった感覚…
「何か…変…頭の中…僕…どうしたの…」頭の中…思考の中心がなくなったような感じ…考えがまとまらなくなる…
”今、新シイノヲアゲル…受ケ取リナサイ…”
そして…女の口から別の『何か』が鈴口に注ぎ込まれる…
「アハァァァァァァ…」
睾丸の中に熱い…いや…冷たいものが注がれる…体のなかに冷たいものが溢れ出す…とても冷たい快感が…
「ヒィィィィィィ…アハァ…スゴイ…何コレ…気持チイイ…アァン…モット…」
体の中で冷たいものが動き回る…暖かい部分がなくなっていく…冷たい痺れる快感で満たされる…体は硬直したまま完全に白くなっていく…
白い女の声が響く…
”フフ…今ノハ魔性ノ乳ヨ…ホラ…ココガイイデショウ…”

女が体を摺り寄せる…彼の一物を優しく摩る…
「アァ?」
男性器がビクビク動く…人の物の動きではない…彼の一物は別の生き物のようにクネクネと伸び…女の女陰を目指す…中へ伸びていく…
「ウァァァァァァァ…」
温かい乳の感触、魔性の白い女の膣の滑る愛撫を潜り抜け…魔物の子宮の奥を目指す彼の男根…
そこに到達した亀頭は激しく白いものを出す…竿から体に伝わる痺れ蕩ける快感…
「アア…ドウシチャッタノ…僕ノ物ガァ…」
”オイタヲシチャダメヨ…オイデ…”
女の呼びかけに応じ…一物は女陰から抜け出し…ブンと唸って女の手に収まる…
”カワイイ…”
ヒクヒク動く白い蛇のような亀頭を女がペロリと舐めあげる…
「ハァァァ…」
亀頭が…いや蛇の頭か…また白い物を噴出す…

”元気ナ子ダ事…”
「ハァ…何ダカ…楽シイ…」
”少シ趣向ヲ変エマショウ…乳ヲ煮込ンデカキ回ストコウナルノヨ…”
乳の温泉が波打ち粘っていく…生き物のように彼を翻弄する…粘りが出てくる…チーズに変わっていく
乳の温泉は…温かい溶けたチーズの沼に変わる…
彼を中心にチーズが渦を巻き、その匂いに包まれる…女の匂いにそっくりだ…
粘る塊は生き物のように動き彼を包み込む…モニモニ動いて彼を隅々まで愛撫する…

「ア…ァァァァァァァァ…溶ケル…蕩ケル…」
遠慮なく加えられる人外の快感…人間の心を溶かし尽くす…魔性の者だけが味わうことのできる快楽…
一度はまると、逃げる事ができない白く暖かい魔性のチーズの沼…

”人間ちーずふぉんでゅノデキアガリ…サァ食ベテアゲル…”
「ハァァ…」
背中から白い女が抱きついてくる…快楽に震える彼の体を愛撫する…
乳の中で体をくるりと回し女に正対する…女をの白い体に彼の白い腕が回される…
チーズでヌルヌルする体を激しく…丹念に愛撫する…彼の体を遠慮なく舐め回す…
女の胸…乳首がピンと立ち…彼の胸でフニャフニャ形を変える…ビュクビュク乳を噴出す…
「ア…アハァ…」
彼の乳首も答えて乳を噴出す…胸で射精の快感を感じる…

彼はよがり狂いながらドロドロしたチーズの沼に沈んでいく…
ブクブクと泡が昇っては消える…やがて彼の体が浮かんできた…
瞳には緑色の微光…体は乳白色…髪は銀色…完全に白い女と同属の男に変わっている…

”サア…モットシマショウ…アレ?…”
女の表情が怪訝なものになる…
彼は笑いながらゆっくり崩れ落ち…チーズの沼にプカリと浮かぶ…彼の周りからブクブクと泡が沸き立つ…
やがてチーズの中に沈み…泡も出てこなくなる…浮かんでこない…
いや…人の形の溶けたチーズの塊が浮いてきた…彼の魂のなれの果てらしい…

”何?…魂ガ全部ちーずニナッテ溶ケチャッタノ?…コノ根性ナシ!…”
辺りが暗くなっていく…全てのものが消えていく…

………………………

アパートの彼の部屋、彼はベッドに横になっていた…すっと目を開き、宙を睨み、乾いた声で笑い出す…
「アハ…アハ…アハハハハハハハハ…」虚ろな笑い…

パンツにシミが広がる…広がる…失禁したのか…いや…綿の表面にドロリとした液体がにじみ出る…
「アハ…ゲッ…ガ…ガボッ…ゴボゴボゴボゴボ…」
笑いが途切れ…笑いつづけていた口からもドロドロとした液体が…
胸からも…全身の毛穴からにじみ出る…それにつれしぼみ出す彼の体…
体がヒクヒク痙攣する…断末魔の痙攣…やがてそれも止まるが、体はしぼみ続ける…
流れ落ちた液体は、床の上でひとつにまとまり、さらにどこかに流れていく…
ベッドの上には先ほどまで「彼」であったミイラを残すのみ…

アパートの向いの雑居ビル、その屋上に、女がいた…
コンビニで彼を見つめていた、そしてミイラになった男の部屋の屋根にいた女だ…
片膝をついた姿勢で、金色に輝く瞳で103号を凝視している…

ピク…表情が微かに動く…103号のドア…下のほうが濡れている…
いや濡れた物が動いていく…緑色の燐光を放っている…

女は濡れた物が視界から消えるまで動かなかった。
息を一つ吐き立ち上がり…携帯電話を取り出し開く…
ボタンをプッシュしようとして…迷い…いやいやという感じでボタンを押す。

呼び出し音が聞こえ、程なくして相手がでる。
「はいはーい♪」やたらに明るく能天気そうな若い女の声が聞こえてくる…
女はこめかみを押さえつつ、用件を切り出す…
「ミスティ?エミよ、あなたに聞きたいことがあるんだけど…」


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