深き水

3.女溺


翌朝、男は目を覚ます…からだがだるい…喉が渇く…水…
冷蔵庫を開け、2リットル入りのペットボトルの水を飲み干す、やっと人心地がついた。

”あの…異様な夢は…一体…”
一瞬恐怖を覚える…しかし、快感の記憶…男の口からでた言葉は…
「もう一度…溺れたい…」…

その日、男は出勤しなかった、機械的に、飲み食いし、夜を待っていた。
夕飯としてハンバーガーを水で流し込む…あの女の事を思うと喉が渇く…

9時頃まで悶々として過ごし、電気を消して横になる。

誰かの気配…もうわかっている…寝たまま目を開ける…女が自分の頭を跨いで立っている…
紫色の女陰が顔の上だ…もう濡れて愛液が滴り、男の顔を濡らす…
「あぁ…」
”待チ遠シカッタデショウ?…”
「ああ…また…」
”イイワ…溺レサセテセテアゲル…”

女陰からの愛液の量が増える…トロトロからドロドロになる…
愛液に包まれる…体も心も溺れていく…女の虜になっていくのがわかる…

やがて男の体は周りに広がった愛液の中に沈んでいく…
気が付けば昨夜の場所…浅い愛液の沼に突き出たの肉の小島に横になっている…

女は男の手を掴み引き起こす…上体を起こした男…女が男と向き合ったまま、またがってくる…
女の女陰…紫色をしたそれがトロトロ愛液を垂らして男の一物を濡らす…涎をたらしているようにも見える…
それを見ていると…興奮で男根が固くなっていく…
女は狙いを定め…ゆっくり腰を降ろしてくる…女自身が亀頭を捕らえた…ピチャ…冷たい愛液が亀頭を包む…亀頭が固く張り詰める…冷える冷えていく…
「あぁぁ…冷たい…柔らかい…」
”ソウダ…ワタシハ柔ラカイ…オ前ハ固クナル…冷タクナル…モット…モット…”
相変わらず女の声は心地よい…体は女の言うがまま…

女が腰を前後にゆする…女陰が亀頭をこする…ピチャ、ヌル、ペチャ…淫猥な響きと共に、滑った冷たい肉が亀頭を舐める…
亀頭の先端の滑る感触が一物を固くする…竿が張り詰め女陰をつつく…
「あぁぁぁ…もっと…もっと…」
女は、腰を落として男のものを呑み込む…冷たく柔らかい肉にの愛撫に男の竿がヒクヒクと喜ぶ…
「ぁぁぁぁぁぁ…」
あの感触…体は冷たく…固くなる…男根に生暖かなものが満ちていく…
女が体を擦り付ける…手で背中を…乳房と乳首で胸を愛撫する…
男は動かない…動けない…体を満たす冷たい快感に硬直している…女の愛撫に溺れてい…る

”サァ…出シテ…ナニモカモ…私ノ中ニ…”
「!…」声にならない…ドクン、ドクドク…精を女の中に放つ…

女が男を放す…ゆっくりあお向けに倒れる男…
女は、睾丸に顔をよせ…手で揉んで何かを計っている…
男は荒い息を吐く、残念そうだ…
「はぁ…もう出そうもない…おわっ?…」
女が手を愛液に浸し、すっと持ち上げる…女の指先から愛液が細い糸を引いて滴り落ちている…
それを男の睾丸の上にかざす…タラタラタラタラ…愛液が垂れ、袋を刺激する…
袋がウニウニと動き出す…女は手をゆっくり動かす…それに連れ愛液の糸が垂れる位置は竿の裏筋に移動する…
心地よい刺激に竿が立ち上がる…亀頭が起き上がり、ちょうど鈴口の辺りに愛液の糸が注がれる…
「あぁ?…あぁぁぁぁぁぁ…飲んでいる…」
男の言うとおり、一物が鈴口を開き、愛液を飲んでいる…ヒクヒクヒクヒク…愛液は尿道を通り睾丸にたまる…射精の快感と同じ…
今は出るのではない…入ってくる…
「あぁ…なんで…溜まる…溜まっていく…」
”オイシイダロウ…オ前ノ一物ハ私ノ愛液ガ気ニ入ッタヨウダ…飲メ…飲メ…ソシテ…”
女の声が耳に入っているのかいないのか…男の顔は人外の快楽に浸り呆けている…
女の愛液は睾丸からあふれ体の中に広がる…トロトロトロトロ…硬直した体の中に…甘いトロリとしたものが…
体の中を満たす冷たいと混ざり…冷たく甘いトロリとした快楽の沼と化す…体の中で…

周りに広がる愛液の海…そこに同じ顔の別の女が浮かんでくる…一人、二人、何人も…そして、肉の小島に横たわる男の周りに集まってくる…
快楽に沈み、ヒクヒク震える男を見つめている…

”フフフフ…”
”モウイイダロウ…サア…溺レナサイ…私達ニ…”

愛液を注いでいた女が、男の手を掴み優しく立たせる…
女達が男に抱きついていく…ヒタ、ピタ、ヒタリ…
そしてゆっくり体を、口を、舌を、胸を、足を、女陰を擦り付け、愛撫する…

ヌラヌラヌラヌラ…ピチャピチャピチャピチャピチャ…フニフニフニフニ…
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」全身にくわえられる感触…体全体が性感帯になったようだ…
女達の形が崩れていく…男を包み込んだまま溶け合っていく…
男は女の肉の筒の中にいた…壁には無数の女陰、胸、口があり男を愛撫する…タラタラ愛液が底に溜まっていく…
男の目の前にのみ、女の顔がある…それが口づけで、男の口を犯す…
ビチャ、ヌラ、ペロ、…溺れる…溺れていく…女達に…

「ぁぁぁぁぁ…いく…」男が意味のある言葉を吐く…
女の顔にかすかな失望の表情が現れる…
”人ノ心ガ残ッテイル…ダメダッタカ…”
男の一物が、静かに、静かに射精を始める…

男は正気に戻った、自分の汚い部屋に戻っている、一物は絶頂に達して、射精している。
「はぁ…」快感にひたってしまう。
冷たいものが亀頭から溢れている…トロトロトロ…
「?」
透明な液体が自分の中から際限なく湧き出る…
泉のように鈴口からタラタラ流れ出す…射精と変わらぬ快感がある…
ヒクン、ヒクン、ヒクン、ヒクン、ヒクン、ヒクン、ヒクン、ヒクン、ヒクン、…
あり得ないほど長く続く射精(?)…止まらない…
「な…何だ…おい…」
力が入らない…手が…体がしぼむ…
”安心ナサイ…”女の声がする…
「あぁ…そうか…」わずかに安堵する…が
”気持チイイデショウ?…ソノママ…眠クナルダケ…目ガサメナイダケ…”…
「おい…や…やめっ…助け…」声が出せなくなる…
”眠くなる…気持ちいい…ああ…”
脳裏に女の姿が浮かぶ…去っていく…どこかに…
”いかないでくれ…”

「げ…げぼを…げろげはげは…げっげっげっ…ぐ……」
喉が音を絞り出す…声ではない…何かが口からも出て行く…
静かになった…いや…
ビチャビチャッ、ビチャビチャッ…
何かが畳の上を動いていく…濡れたものが…
また、部屋の中は扇風機の立てる音以外は静かになる…
しかし…部屋の主が音を立てることは二度となかった…

………………………

202号室の屋根の上に、女が一人座っていた…
水色の女ではない…2日前に近くの路上から姿を消した、黒い服の街娼だった…
膝を抱え、顔を伏せている…泣いている?…いや、何かを「見て」いた。
女が顔を上げる…その両眼は金色に輝いている…
「何が…起こったの…」
感情を交えない、ただ純粋な疑問を口にした、そんな感じだ。

すっと、トタン屋根の上に立つ、そして…女の背中から翼が伸びる、黒いコウモリのような翼が…良く見れば、角と尻尾もある…
軽く羽ばたき、体を宙に躍らせて、どこかに去っていく…
女の起こした風が202号室の窓辺に吊られた風鈴を鳴らす…
リーン…


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