悪魔と魔女とサキュバスと

第ニ章 サキュバスのゾウショク(5)


 「小縞先輩♪」

 大学部に向かっていた生徒会会計の小縞計は、幼さの残るハイトーンの声に振り返った。

「若井君、君も会長に?」

「はーい、放送委員の若井は会長に呼ばれました」

 小柄な若井真子は、元気のよさが取り柄だ。 携帯電話を振り廻しながら軽いステップで駆け寄り

じゃれるように小縞に並ぶ。

 「副会長さんは?」

 「美咲? 呼ばれたのか?」

 「いえ、一緒かなーって」

 うふっと笑う真子に、小縞はちょっと困り顔をしてみせた。

 「そう言えば用件を聞いているかい?」

 「いーえ。 あれ?小縞先輩も知らないんですかー」

 「うん。 Feb祭絡みだと思うけど」 


 二人は『第三音楽室』にやってきた。 戸が閉まっていたので、扉の前で迷う。

 「入っていいのかな……会長? 入りますよ」

 小縞が扉を開ける。 中が見えないほど暗い。

 「あれぇ、お化け屋敷の実験ですかぁ」

 真子は、小縞の脇をすり抜けるようにして中に入った。 続いて小縞も中に入り、扉の脇の壁に照明の

スイッチを探す。

 バサリ

 突然部屋が暗くなり、真子が小さい悲鳴を上げかけた。 が、くぐもった声に変わり、語尾が消えた。

 「若井君!?」

 扉の方に戻りかけていた小縞は、真子の声のした方向を見た。 しかし様子がわからない。 

 「若井君どうした?……!?」

 突然、部屋の四隅に設置されたスポットライトが部屋の中央を照らし出す。 四つの光に『赤い悪魔の像』が

浮かび上がり、その前にうずくまる人影が一つ。

 「若井君?…… なんだ、美咲か」

 うずくまっていたのは副会長の中井美咲だった。 小縞は安堵し、苦笑する。 てっきり彼女のいたずらか

何かと思ったのだ。

 「これはいったい……? 美咲?」

 美咲は小縞を見上げ、口の端に笑みを乗せる。 そして、しなやかな身のこなしで立ち上がる。

 「美咲!?」

 美咲は、男物のワイシャツを羽織っていた。 はだけたシャツの間から、白い胸元が覗いている。 そして

下の方には……スキャンティが覗いている。

 「み、み、み……」

 口をパクパクさせ美咲を指差す小縞に、美咲は妖しい笑みを浮かべたまま擦り寄ってきた。

 「どうしたの……ね」

 布地の間から女の香りが漂い、小縞の体に絡みついた。 立ち尽くす小縞の手を美咲が捕まえ、シャツの

下の素肌に誘う。 

 「!」

 美咲の温もりに呪縛が解け、小縞はいきおいよく飛び下がり、無様に尻餅をついた。

 「っ!」

 小縞は痛みに顔をしかめつつ、手を突いて立ち上がると、美咲に視線を戻した。

 「美咲!?」

 美咲はスキャンティを脱ぎすて、少し離れた机に腰掛ていた。 そして、小縞をじっと見つめている。

 『私の目を見て』

 美咲の声がしたような気がして、小縞は思わず美咲の目を見つめる。 淡い金色の光を湛え、潤んだ瞳に

彼自身が映っている。

 「美咲……」

 小縞は、瞳に吸い込まれていくような不思議な感覚に襲われた。

 『さぁ……』

 美咲は手をゆっくりと目の高さまでてあげて、小縞を招いた。 そして招きながら手を下ろしていく。 知らず

知らずのうちに、小縞の目が岬の手を追った。

 『あ……』

 ワイシャツの隙間を撫でる様に手が下りていく。 ゆっくり……ゆっくり…… そして手は、乙女の神秘に……

 「夢だ……これは夢だ……」

 『そう……夢……おいで……そして、私のものになりなさい……小縞君』

 ブチブチと糸の切れる音がする。 小縞は自分の手が、ボタンを引きちぎらんばかりの勢いで服をはだけて

いることに気がつかなかった。


 『おいで……こっちにおいで……』

 たかだか数歩の距離、それがひどく長く感じられた。 気がつけば、目の前にあられもない姿の美咲がいる。 

美咲の手が小縞の手に重なり、それを神秘の谷間に導いた。

 「あ……」

 柔らかい濡れた襞が指に絡み誘っていた。 その瞬間から小縞の体は美咲の物となった。 

命じられるままに、小縞のモノが美咲の前に引き出され、捧げられる用意が整えられた。 うなだれ気味の

小縞自身が、主人に媚びる犬の様に、美咲の神秘に擦り寄る。

 「うっ……」

 美咲の襞が彼のモノを咥えこんだ。 それは大きく口を開け、次の瞬間には彼のものをきつく締め上げる。 

それでいて、彼のモノは滑らかに奥に吸い込まれていく。

 「あぁ……」

 美咲の温もりが彼を抱きしめ、美咲の湿り気で彼を濡らす。 そして美咲は巧みに彼を誘う、奥の奥に。

 「美咲……美咲……」

 『動いて……突いて……そしておいで、私のなかに……』

 小縞は動く、誘われるままに。 一打ち毎に、美咲の奥に入っていく様だ。 そして、ついに……

 「うぁぁ……」

 亀頭に無数の襞が絡みつき、ネットリとした愛液が丁寧に塗り込められる。 思わず下がろうとする亀頭。 

しかし、その括れがぎっちりと咥えこまれ、抜き差しならぬ状態になっている。

 『ああ……イイ……モット……モット感ジテ……』

 美咲の奥は、魔性の巣窟と化していた。 小縞の亀頭が感じる魔性の快感は、さざなみの様に彼のモノを

伝わり、その若い肉体を虜にしていく。

 「ひぃ……ひぃ……ひぃ……」

 ひくひくと痙攣する小縞の腰を、美咲の足が抱え込んで離さない。 まるで、アリジゴクの顎に挟まれたかの

様だ。 

 『アア……ナカ……キモチイイ』

 美咲はうっとりと呟いた。 その時、『赤い悪魔の像』から赤い光の糸が放たれた。 光の糸が、二人の体に

複雑な紋様を描き出す。

 「うぁ……あっ……あっ……」

 小縞の体に描かれた赤い文様は一瞬で黒変し、それは流れるように彼の腰に集まっていく。 そして美咲の

体の紋様は、小縞と繋がっているところから黒く変わっていく。

 「あぁぁ……」 法悦の表情を浮かべる小縞。 だがその体は、じわじわとやつれて行く。 しかし……

 「いい……美咲……ずごくいい……」

 『ヒ……アツイノ……モット……モットォォォ……』

 二人の結合部が、ジュルジュクルと音を立てる。 美咲の神秘は悪魔の化身と化し、貪欲に小縞の体から

何かを吸出だしている。 そして美咲本人は、その付属物になったかのようだった。 


 ジュルリ…… ドッ……

 美咲の足が小縞を離した時、小縞はげっそりとやせ細り、目はうつろであった。 しかし、その顔には深い満足が

張り付いていた。

 カチリ……

 薄れ行く意識の中で、小縞は微かな金属音を、そして生徒会長の声を耳にした。

 「5分32秒……ふむ」 

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