悪魔と魔女とサキュバスと

第ニ章 サキュバスのゾウショク(4)


 山之辺、川上の両刑事と別れたエミは、その足で『妖品店』ミレーヌのドアをくぐった。 ミレーヌは

いつもの様にカウンターの向こう側から話しかけてきた。

 「……彼らに協力を?」

 「ええ。 騒ぎが大きくなれば困ったことになるわ、『貴方達』も」

エミの物言いに、ミレーヌは口元だけで笑ってみせた。 エミとミレーヌの関係は微妙だ。 単なる

知り合いで、それ以上でもそれ以下でもない。 だから、エミが『仕事』を引き受けたとしても、ミレーヌが

それに付き合う義理はない。 エミはそれを承知で、ミレーヌの協力を求めにきた。

 「……今回の問題は、既に警察の知るところなのでは……」 ミレーヌは、言外にほっておけばと滲ませる。

 「一部の人が私的に動いているだけ。 第一、警察が動くことが問題でなのではないわ。 世間に『悪魔』の

存在が認知されるのが問題なのよ」

 ミレーヌはエミの心配を察した。

 「……『魔女狩り』……」

 「そこまでの騒ぎになるかどうかはともかく、面倒事の芽は摘んでおくに限るわ」

 短い逡巡の後、ミレーヌはエミに尋ねる。

 「……貴方の方針は?」

 「まず『像』の捜索と何処から来たかの調査。 これは刑事さん達の仕事。 もう一つは『大河内マリア』の

監視」

 ミレーヌは、エミの思惑を確認する。

 「……麻美さんに?」

 エミは頷く。 大河内マリアは高校生で、その生活時間の半分は学校で過ごしている。 だが学校に部外者が

入り込み、特定の誰かを監視するのは難しい。

 「校内は彼女にお願いし、校外は私が見張る。 多分彼女は、新しい男か、病院の秘書さんのお見舞いか、

または像のところに行くか」

 「……『大河内マリア』が『像』の隠し場所にいくのならば、それまで待つというのは……」

 「『像』の正体が判らない以上、放置するのは危険よ。 出来るだけ早く見つけないと」

 ミレーヌは頷いた。 彼女の質問は、エミの考えを確認する為のものだったようだ。

 「取り合えずマリアの監視を明日から始められる様にしないと。 麻美さんは今日来るの?」

 「……ええ」


 同じ頃、マジステール大学付属高校では、その大河内マリアが生徒会副会長の中井美咲を、大学部に

呼び出していた。

 「大学部の大教室でしたの」

 美咲は、鍵を開けるマリアの背中越しに教室プレートを確認する。

 『第三音楽室』

 ガラガラ音を立て、立て付けの良くない扉が開く。 中は真っ暗だ。

 「ここで、美術部の展示を? 暗すぎませんか?」

 「照明効果の実験も兼ねているのよ。 大学部の広告研究会のテーマと合わせて」

 マリアはそう言って、入り口近くに置かれていたノートPCを操作した。 部屋の4隅に設置されたライトが

点灯し、中央に置かれたものに光を投げかける。

 「!」

 美咲は『赤い悪魔』が妖しい輝きを放つのを見た。 そして人形の様に立ち尽くす。 動けぬ美咲をマリアが

そっと床に押し倒す。


 「や……やめ……」

 拒絶しようとしても口が回らない。 スカートをまくられ、下着の上から指が大事なところを触られているのが

判る。 しかし目は『像』に引きつけられ、そちらを見ることが出来ない。

 ペロリ……

 「ひっ!」
 嬲られているのに見ることが出来ない。 それが『恥ずかしさ』と『そこ』の感覚を倍増させる。 布越しに

生暖かいモノが這いずり、ついには脇から中へと……

 「か、会長……いやっ!」

 強い嫌悪感からか、呪縛が破れて言葉が漏れる。 すると像の輝きが増した。

 「!」 

 再び言葉を失う美咲。 その間に、マリアは彼女のショーツを奪い取り、むき出しになった神秘に優しく口付け

してきた。

 「ひっ!」

 身を固くする美咲、その神秘にマリアの口と舌が柔らかく吸い付き、丹念に、そして優しく嘗め回す。

 「な、何を……」

 混乱する美咲の体の奥で、トロリとした温かみが目を覚ます。 マリアの舌は、美咲の体を知り尽くしているかの

ように神秘の門を嘗め回し、固く口を閉じていた門をじわじわと緩ませる。

 ウフッ……

 マリアが笑ったようだ。 今度は濡れた指で、筋を丹念になぞっている。 しなやかな指が少しずつ、溝を深くして

いく。

 (……違う? 指じゃない)

 溝を滑るものは、しなやかにうねっている。 指ではないが舌でもない。 その正体が気になり、美咲は神秘の

溝に意識を集める。

 (なんなの……うねって、滑らかで……ああ……)

 それを意識する事は、神秘の門の感覚が鮮明になることでもあった。 門を愛撫するそれは、美咲の奥を、美咲の

女を求めている。

 (求められている……)

 そう思うと、美咲の奥がもやもやとしてくる。 下腹に微かな疼きを感じる。 そして、神秘の門が濡れて緩んでくる。

 (ああ……)

 恥ずかしさに身を捩る美咲。 神秘の門が濡れ、暖かい物が溢れ始めた。 すると、しなやかに動いていたモノが、

緩んだ部分にさらに深い愛撫を加えてきた。

 (……あ)

 モノが門に入り込み、うねって中を愛撫している。 その滑らかな愛撫は、美咲の神秘を痺れさせ、さらなる開放を

求めていた。

 (……)

 力が抜けていくようだ。 甘い疼きと共に、『美咲』が開いていく。 ほんの僅かな隙間に、しなやかなモノは滑り込み

美咲の中で暖かな愛の舞踊を踊りだした。

 (あ……あぁぁ……)

 もはや、拒絶することは出来なかった。 美咲は、自分の女の中で妖しい舞踏を行っているのが、マリアの『尻尾』だと

気がつかぬままに堕ちていく。

 「会長……もっと……」

 夢心地で呟く美咲、その奥にマリアの尻尾が滑り込み、その先から魔性の蜜を注ぎこむ。

 「ヒッ……あ……ああ……」

 魔性の蜜が美咲の女に染み込み、甘い夢に彼女を引きずり込む。 はしたない箇所をさらけ出し、身もだえする美咲。 

その彼女に『赤い悪魔の像』が光の糸を放ち、悪魔の紋章をその体に描いた。

 「ア……アアッ……」

 魔性の喜びに、体を硬直させる美咲。 その衣服をマリアが剥ぎ取り、白い乙女の肌を『像』に晒す。 『像』が瑞々しい

若い肌に悪魔の紋章の続きを描くと、神秘の門に注がれた悪魔の蜜がそれを伝って美咲の体を穢していく。

 「イ……イイッ……」

 悶える美咲の頭に、僅かな角が生え、短い尻尾が尻で跳ねる。 彼女も魔の僕に変わりつつあった。

 「フフ、副会長。 私の代わり、宜しくお願いするわ」

 新しい仲間を冷たい眼差しで見つめ、マリアは冷たい笑みを口の端に乗せ、パソコンの脇にあったクリップボードを

手に取って、ペンを走らせる。

 「実験結果『月光の代わりに白熱灯を使用しても、『像』の効果は発揮され、特に支障はないと思われる』」

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