悪魔と魔女とサキュバスと

第一章 悪魔のカイホウ(6)


「あ……あっ!」

 飯田秘書の上でマリアが身を震わせる。 飯田秘書は、少女の年相応の胸の膨らみに新鮮な感動を覚え

同時に罪悪感を感じる。

 (お嬢さんがおかしい……僕も何か変だ。 なんとかしないと……)

 しかし、体のうちから沸き起こる淀んだ欲望に抗うことができず、腰の上で弾む少女の肢体にされるがままに

なっている。

 (いけない……でも……あっ!)

 あれこれと考えているうちに、彼の体は臨界に達していた。 暴発の予感に慌て、声を絞り出す。

 「お嬢さんいけません……お嬢さん」

 が、マリアは熱に浮かされたように、彼の腰の上で体を弾ませる。

 ドクッ! (しまった!)

 足の間に熱い衝撃を覚え、飯田秘書は思わず目を閉じた。 

 「……」

 リズミカルなマリアの動きがやみ、胸に彼女の手が当てられた。 恐る恐る目を開けると、マリアは軽く目を閉じ、

時折小さく震えていた。 

 (お嬢さん……)

 少女の姿に、飯田秘書はこみ上げて来る想いを抑え切れなかった。


 パチリとマリアが目を開き、二人の視線が交錯した。 飯田秘書はどの様な表情をすべきか迷う。 が、マリアが予想外

の反応を示した。 

 「……え!?」

 マリアは驚愕の声を上げ、辺りをぐるりと見回す。 上気していた顔が羞恥の赤に染まり、その表情が混乱、嫌悪、怒りの

渦を巻く。

 「なに、飯田さ……なに!? なんなの!」

 驚いたのは飯田秘書も同じだったが、彼の方が事態を正確に把握していた。

 (やはりお嬢さんもおかしくなっていたのか!…… どうする? どう説明すれば?)

 二人は別々の意味で窮地におかれた。 幸いというべきか、その事態は長く続かなかった。


 飯田秘書とマリアは赤い閃光を見た。 『赤い悪魔の像』から二人をめがけて、無数の糸のような光が放たれたのだ。

 「!?」

 (レーザ・イルミネーション? 先生は古美術商から入手したと……うっ!?)

 二人の体に、レーザ光のような光が、赤く複雑な紋様を描く。 顔、首、胸、腹、腰……そして二人が結合している箇所で、

紋様が連結する。

 ズクッ!

 二人の体に衝撃が走る。 体をはしる紋様から、得体の知れない何かが送り込まれ、肉体に何かを強制したのだ。 

肉体は、それを感覚に変換できず、結果、二人は熱いとも冷たいともつかぬ異様な感覚に呑み込まれ、硬直した。 

間髪を居れず、紋様が不気味に輝く。

 あっ……

 うっ……

 異なる音色の吐息が漏れた。 紋様の送り出す波に肉体が支配されたのだ。 二人は、魔性の快楽の中にいた。


 「あ……あつい……アツイ……欲しい……ホシイ……」

 マリアが呻き、ゆっくりと腰を振る。 

 「うぁ……お嬢さん……気を確かに」

 飯田秘書は歯を食いしばる。 彼の男根をネットリした肉が包み込み、精を求めて無数の襞で舐めあげている。 

先ほどまでの、瑞々しく健康的ですらあった少女の神秘とは思えない変わりようだ。

 「やめて……ひぃ」

 体が熱く力が入らない。 なのに股間は熱く猛り狂っている。 彼は気がついていない、彼の体に描かれる紋様が、

黒く変わり脈打っている事に。 まるで、彼の全てを男根に集めるかのように。

 「ネェ……ホシイノ……チョウダイ……」

 マリアの懇願は抗いがたい響き、いや、抗いがたい粘りで耳に吸い付き、頭の中に染み込んでくる。 逆らうことが出来ない。

 「あ……はい……」

 飯田秘書は陥落し、ただの男になりはてた。 飯田自身が熱く膨れ上がり、淫らに蕩けきったマリアの中に熱い精を捧げる。

 ドクッ……ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ……

 「おうっ!?……おうっ、おうっ、おうっ……」

 捧げ物の対価だろうか。 精を放つ快感は強烈で、しかも長々と続く。 飯田は快感に酔いしれる。


 「イヒッ!……」

 飯田の精を捧げられたマリアも異様な快楽に浸っていた。 胎内に注がれた熱い精気が、心地よい波となって体の

隅々まで染みとおっていく。 そしてマリアの紋様も、飯田同様に黒く色が変わり、脈動していた。 

その脈動は、飯田とは逆に下腹の茂みから始まり、マリアの全身に広がっていく。

 「キモチイイ……」

 法悦の表情を浮かべたマリア、その体つきが変わっていく。 膨らんでいた胸が豊かな『乳房』に、たおやかな腰は

安定感のある『ヒップ』に、神秘的なクレバスは淫靡な『秘所』に、花開く前の『乙女』が香りたつ『美女』に、そして……。

 「ギッ?……イッ……」

 マリアが頭をおさえる。

 「お、お嬢さん?……」

 飯田はぼんやりした表情でそれを見ていた、マリアの頭に生えた二本の『角』を。

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