悪魔と魔女とサキュバスと

第一章 悪魔のカイホウ(5)


 『赤いマリア』の舌がマリアの処女地を丹念に舐め上げる。

 ゾロッ、ゾロッ……

 舌のざらつく感触が柔らかい肉を抉る音、マリアにはそれが聞こえるような気がした。 恥ずかしさと新鮮な

感覚への驚きに、瑞々しい肉体が震える。 

 ギシッ

 マリアの下でソファが大きく軋む。


 「?」

 飯田秘書は、その音を図書室のドアの前で耳にした。 ノブを握って廻す、鍵はかかっていない。 この先は

一応、大河内家のプライベート空間だが、図書室には仕事の資料も保管されている為、飯田秘書も利用する事がある。

 「うーん……」

 飯田秘書は迷う。 窓から赤い光が見えたので、火災を疑ってやって来たが、そんな様子は無く、火災報知器も

作動しない。


 「あ……は……」

 マリアのつつましい喘ぎは、扉から漏れていない。 『赤いマリア』の舌は、いっそう深くマリア自身に潜り込み、

女の扉を目指していた。

 ”さあ……想像しなさい……これは誰? 誰にして欲しいの……”

 「誰?……」

 気だるい熱っぽさの中で、頭の中でぼんやりと顔が浮かび、桜色の唇から、少女の呼気が漏れる。

 「……」

 ”さぁ……”

 「い……飯田さん……」

 ”さぁ……呼びなさい……”

 「い……飯田さん……来て……」

 その声は、不思議な程に大きく響いた。


 ”……飯田さん……来て”

 「お嬢さん?」

 突然呼ばれ、飯田秘書は驚き、扉を開けて中に飛び込む。

 「!?」

 信じられない光景だった。 マリアが素肌をさらし、自分を慰めている。 なぜか彼には、『赤いマリア』が見えなかった。


 ”駄目よ……”

 『赤いマリア』がマリアに覆いかぶさり、耳元で囁く。

 ”男の人を誘うには……もっと心の底からお願いするの……お願い……私を慰めて……って”

 『赤いマリア』の言葉は、乾いた砂に水が染み込むように、マリアの心に染みとおる。


 「飯田さん……お願い……私を慰めて……」

 「お嬢さん? どうしたんです。 いったい何が……」

 その時、『赤い悪魔の像』が再び赤く光りだす。 飯田秘書は吸い寄せられるように、そちらを見た。 不思議な言葉が

頭に響く。

 ”貴方は彼女の言葉が信じられないの?”

 「お嬢さんの……言葉」

 飯田秘書の脳裏から、拭ったように疑いが消える。 マリアお嬢さんの言葉に嘘はない。

 「お、お嬢さん。 いけません」

 「お願い……飯田さん……ねぇ」

 マリアの神秘から熱い雫が一筋流れ、あたりの空気が熱を持った。

 飯田秘書は、マリアに吸い寄せられる様に歩み寄る。


 「あ……あぁっ……」

 男の舌がマリアに触れた。 マリアの体がびくりと振るえ、飯田秘書は躊躇した。

 「お嬢さ……」

 マリアは腰を押し付けるようにし、ためらう飯田秘書の口を塞いだ。 そして少女の放つ雌の香りが、飯田秘書を

雄として呼びつける。 

 ペ……チャ

 飯田秘書はマリアの神秘に舌を這わせる。

 「う……ん……そう……やさしく……」

 熱い喘ぎは抗いがたい響きをおびて耳朶をうち、少女の雫は甘露の極みで舌を誘った。 誘われるままに舌を伸ばすと、

神秘の隙間で行く手を阻まれる。

 「そこを……そこ……お願い」

 飯田秘書の舌が、マリアの隙間を縦になぞる。 神秘の門が開き、蜜がゆるゆるとあふれ出す……


 「あっ……」

 マリアは飯田秘書の舌の感触に酔いしれる。 舐められるほどに体の芯が熱くなり、下半身が蕩けそうだ。 それと同時に、

体の奥で何かが疼くのが感じられる。 

 「何……なんなの……」

 疼きは次第に強く、はっきりしてくる。 そして唐突に疼きが強くなり、背筋を駆け上ってきた。

 「!」

 マリアは目を見開き、口から欲望があふれ出る。

 「奥に……あっ……もっと奥を……して」


 マリアが強く腰を押し付けてきた。 飯田秘書はマリアの願いを察し、神秘の門の縁を軽く噛み、舌を精一杯伸ばして

マリアを弄る。

 「!」

 飯田秘書の舌の動きに、マリアの女が反応する。 ズルリという感じで門が開き、テラテラと光る陰唇がはみ出し、飯田

秘書の顔を舐めた。 

 飯田秘書は、陰唇に自分の唇をあわせながら、舌の動を強めてマリアの中をかき回す。

 「……!……!……!!!」

 マリアは弓なりに背をそらせ、全身で絶頂を表現する。 一瞬動きを止め、続いてソファの上で体を弾ませた。 

 その動きに飯田秘書は付いていけず、尻餅をついた。

 はぁはぁはぁ……

 深夜の図書室に二人の喘ぎが残り、空気がゆっくり冷えていった。


 スゥ……

 へたり込んでいた飯田秘書の前で、マリアが体を起こし、潤んだ瞳で飯田秘書を見る。 微かに開いた少女の唇から、

誘いの言葉が漏れる。

 「……きて」

 飯田秘書は瞬きし、マリアを見つめ、次に首を大きく振った。

 (おかしい……なにかおかしい!!)

 立ち上がる飯田秘書の横で、『赤い悪魔の像』が三度光った。

 「?!……」


 そして二人は体を重ねる。

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