悪魔と魔女とサキュバスと

プロローグ(2)


 ア……ァァ

 娘は甘い喘ぎ声を上げ、腰を擦り付けるように揺する。 同時に、男は自分のモノを締めつけていた力が

緩むのを感じる。

 ウ? コレハ……ウゥゥゥ……

 今度は、娘の中が熱くねっとりした感触に変わる。 逞しい男の柱に熱い柔肉が寄り添い、纏いつき、舐めあげる。

 オ、ォォ……

 ヌルヌルした肉襞の愛撫は、男が経験したことの無いものだった。 甘い疼きがモノに染み込み、股間に熱い

精を呼び集める。

 ウ……オ! 

 たまらず男は精を放つ。 熱い精が、娘を征服する為に、本流となって注ぎ込まれる。

 ドク! ドクドクドクドク……

 ヒ! ヒィィィィィ!

 娘が身を震わせて歓喜の声を上げる。 男の精を体の奥で受け止め、女の歓びに目覚めたのだろう。

 ア、ァァァ……

 娘は一瞬、体を硬直させ、それから床に横たわる男に体を預けてきた。 心なしか、固くしまっていた娘の体が、

しっとりと柔らかくなったようだ。 

 ウッフゥ……ウッフゥ……フッ……

 娘は息を整えると、ゆっくりと体を起こす。

 オッ?

 男は軽い驚きを覚えた、娘の体から匂うような色気が立ち上っており、丸みを帯びた体つきは『女』のそれになっている。

 グフッ

 男は口元を歪めて笑う。 娘を女にするのは、男にとって名誉な事なのだから。

 ウフッ

 娘は媚びるように笑うと、ゆっくりと腰を動かす。

 ウオゥ

 男は感嘆の声を上げる。 女の中は柔らかく複雑に動き、男のモノを咥えて離さない。 さっきよりさらに『具合』が

良くなっている。 ニ三度、上下されただけで、熱いものがせり上がって来るほどだ。


 ピッ!

 その時二人の体に、赤い糸の様な光が絡みつき、複雑な文様を描く。 悪魔の像がまた輝いたのだ。

 ズクン!

 男と女の体に熱い衝撃が走り、それが快感に変わる。

 ア、アツイ……

 女は呻き、夢中で腰を動かす。

 ウァ!

 女の動きは予想外だった。 あっという間に上り詰め、二度目の絶頂を迎える。

 ドク! ドクドクドクドク……

 ア、ァァァァ……

 男が精を放つと、女は歓喜の声を上げる。 その時、男は女の異変に気がついた。 さっきより、さらに丸みを増し

女っぽくなっている。

 ムネ、ガ?

 そう、骨が浮き出ていた娘の胸板は、今や子持ちの女程の、いやそれよりも立派な膨らみを備えていた。 しかし

それをいぶかしむ暇は与えられなかった。

 ジュ、ジュルルルル……

 ヒッ!?

 股間が吸われている。 女の下半身と結合し、その胎内に深々と突き刺さった男のモノ、それが激しく吸われている。

 ド、ドクドクドクドク……

 ヒ? ヒィィィィィ!

 前触れも無く股間が灼熱の塊と化し、次の瞬間、それが弾けて熱い快感となり、男のモノが激しく精を放ち始めた。 

異様な体験に男は恐怖と驚きを感じた。 だが、それも一瞬だった。

 モット……モットォー!

 女が腰を振るたびに、灼熱の塊が体に溢れ、弾ける。 熱い快感に体を支配され、そしてモノを考える力が奪われていく。

 ア、アツイ……イイ……イイゾォォ……

 男は女の下で悶え、歓喜の声を上げる。 その声は次第に高くなり、やがて小さくなっていく。

 イイ……イイゾォォ……ゲホッ…… イイゾ……ボホッ……

 男の体が、見る見る痩せ細っていく。 体の中身を何かに、いや、間違いなく女に吸い取られているのだ。

 イイ……ギボヂイイ……

 だが男の声に苦痛の響きはない。 異様な快楽に浸されて、何がおきているのかさえ気がついていない。 男の声は

か細くなり、やがて途絶えた。


 フゥー……

 男が動かなくなると、女も動きを止めた。 そのまま、深く息を吸い、吐く。 そして立ち上がって目を開く。

 フッ……

 微かに笑った女の目は虹彩が縦長に変わり、金色の光を湛えていた。 それは女が魔性の者となった証だった。


 「……男一人つぶしてこれか……」

 洞窟の奥から、年老いた女の声がした。 魔性の者となった女はそちらを見ると、地面に額づいて恭順の礼をとる。

 「立つが良い」

 黒いローブを纏った小柄な女が、同様のローブを纏った数人の女を従えて現れた。 彼女こそ、女呪い師の一族の長、

後の世に『蜘蛛の女王』と伝えられた魔女だった。 『蜘蛛の女王』は裸体の『魔性の女』と『赤い悪魔の像』を見比べ、

『魔性の女』に声をかける。

 「表に、この男の仲間が来ておる。 いくが良い」

 『魔性の女』は肉食獣のような笑みを浮かべ、身を翻して走り去る。 男を狩に行ったのだ。

 「……羨ましいのですか? あの娘が」

 『蜘蛛の女王』の背後に控える黒ローブの女の一人が言った。

 「……」

 『蜘蛛の女王』は答えず、『赤い悪魔の像』を見つめる。 月の光が差し込まなくなり、洞窟を満たしていた赤い光が消えていく。

 「……愚か者よの、我も……」

 『蜘蛛の女王』の呟きは、誰の耳に入ることも無く闇に消えた。


 そして物語は現代に、『ザ・マミ』事件の一ヶ月後に戻る。

【<<】【>>】


【悪魔と魔女とサキュバスと:目次】

【小説の部屋:トップ】