教会[ファーザー]

4:対策


朝、ファーザーは盛大な女の匂いの中で目覚める…
記憶が戻り、恥ずかしさで頭を抱える。夢魔の思うがままにされ、女にされ、堪能してしまった…
股間の物は、女の匂いに反応して、隆々と男である事を誇っている。
自分自身だが何と能天気な奴と理不尽な怒りに駆られる…
思い切り殴りつけてしまい…のたうちまわって自分が「男」である事を確認する羽目になる。

はたからみたら喜劇だが、当人は真剣に対策を考えねばならなかった。
”まず、ジェラの狙い…自分を女性化し…夢魔にする…恐らく間違いない…”
”『夢魔の魂』にそこまでの力が?…しかし…あの淫夢…あれが続いたら…”
”何より…布団の匂い…ひょっとしたら…寝ている間は…女になっているのか?…”
”男夢魔の淫夢なら耐える自信はあるが…自分が女にされるとは…まてよ…”

いろいろ考えていて、とんでもない事に気がついた…大慌てで文献を調べなおす…
”やっぱり…”
『夢魔の魂』に対抗する方法として、夢魔の誘惑に耐えればよいとある…
しかし具体的な成功例がない…痛みでこらえるとか…性器を守るとか…
つまり、これは精神論であって、実際に夢魔の誘惑に耐え切った人はいないということか…

「えらいことになった…このままではジェラに取り込まれてしまう…」
”やっと気がついたの…”
「!?…ばかな…私は起きているのに…」
”昨夜はあんなに燃えたのに…つれないのね…早く一つになりましょう…とても素敵なの、あなたの体…”
「や、やめてくれ…」声は拒絶しても、体はジェラの声を聞いただけで甘い疼きを思い出す…
”ねぇ…ベッドに入りましょう…一緒に寝ましょう…”
ほとんど、恋人気取り…いや…それ以上か…

必死で策を検討する…しかし夢の中では…
ここで、ファーザーは致命的な間違いを犯した、『夢魔の誘惑に耐える』方法があるのだ。
リズに見張ってもらえばよいのだ。
様子がおかしくなれば起こしてもらえば良いし、起きることができなくともリズに見られているというだけで、『恥ずかしさ』がブレーキとなる。
もっとも、人に見られる方が燃えるタイプの人にはかえってまずいが…
しかし、ファーザーは『恥ずかしい』と思うからこそ、『リズに助力を乞う』という選択肢を無意識に排除していた…

策が立たないまま夜になる…
「こうなれば寝ずにがんばるしかない…」
”寝不足は美容の大敵なのよ…”
「僕は、男だ!…」
”最初の晩を忘れたの…このまま何日か寝ずにいて、その後、夢も見ないほどぐっすり寝たなら…次に目覚めたときは…”
「目覚めたときは?…」
”夢魔になってる…あたしはそれでもいいけど…”
「!…う、嘘をいうな…それなら黙っているはずだろう?…」
”夢の中でファーザーともっと遊びたいの…ファーザー…ねぇ…遊んで…”

黙り込んで、考えるファーザー…そして、寝てしまった…

【<<】【>>】


【教会:目次】

【小説の部屋:トップ】