教会[ファーザー]

2:洗濯


翌朝、ファーザーは嗅ぎ慣れぬ匂いの中で目覚めた。
知らないわけではないが、思い出せない…
”これは…女性の…大人の女性の匂い!?…”
布団をガバッとめくる。見事な朝立ち…はともかく…布団にシミがある…
嗅いでみると、匂いはそこからであった…
混乱するファーザー。
”なぜ…どうして…いったい…”
その間に体は勝手に動き…我に返ったのは、洗濯を終えたシーツを干しているときだった…
シスター・リズがそれを見つけ、小首を傾げて考えた後、勝手に納得していた、くすくす笑いながら…何か誤解されたようだ…

昨日の事を考える、昼過ぎになって、ようやく奇妙な夢の事を思い出す…
「甘い夢…女の夢?…」
”夢の中で女になっていたような?…夢…夢…『夢魔の魂』!…”
他に考え様が無い…大慌てで教会の文献を調べる…『夢魔の魂』に取り憑かれた場合の対処法…聖水…は使い果たした…
結局、対策はわからない…あるとすれば、夢の中で夢魔の誘いに乗らない事とあるが…これが意外に難しい…
夢を夢と認識できなければならないのだから…
”やるしかない”決意して…夜を待つ…

夜になっても、なかなか眠れない。まあ、勢い込んで眠る人はあまりいない。
夜半過ぎになって、やっとうとうとしだした…やがて、ファーザーは夢の中に入る…

”ゆめ…夢…これは夢…?…”ファーザーは夢をみながら夢と認識する…夢の中…何かが見える…人?…
”誰だ…君は?…”見たこと無い女性がいる。黒く長い髪、魅惑的な唇、切れ長の目…
”夢魔…夢魔?…”心の中に警戒信号が発せられる。
”いえ、まだ夢魔ではないわ…私はジェラ…”

”夢魔ではない…『夢魔の魂』…”
”うふふ…ね…また、私と遊ばない?…”
”昨夜のことはやはり…『夢魔の魂』と遊ぶなんて…誘いには…乗らない…”
ファーザーの寝顔がやや苦しそうになる。
”私…女夢魔よ…”
女性には、女夢魔が、男性には、男夢魔が取りつく。性別が異なれば夢魔化しないと言われている。
”何を…企んでいる…”
夢の中、ジェラは裸…ファーザーも裸…ジェラはファーザーにやさしく抱き付く…
”ファーザー…素敵よ…あなたの体…とっても…”
ジェラはファーザーの胸にほお擦りする…ファーザーは自由に動けない…夢なのに、はっきりジェラを感じる…
ジェラの唇がファーザの唇を捕らえる…舌で、ファーザーの唇を割る…ファーザーが緊張する…
ファーザーは、ジェラがディープキスに進むのかと思ったが、そこから進まない…
”?”ジェラの意図を測りかねていると…ジェラがやさしく息を吹き込んでくる…
”!…昨夜の…甘い…甘酸っぱい…あぁ…あ…”
”うふふ…ね…おいしい?…甘いでしょう…”
ジェラの言うとおり…ジェラの息は甘い…吸い込むと…昨日の感覚が蘇る…
”だめだ…吸い込んじゃ…息を…止めないと…止められない…どうして…”
”夢の中よここは…ね…観念して…吸って…いっぱい…気持ちいいわよ…”
ジェラの言葉が心地よい…ジェラに逆らえない…ジェラの息を吸うたび…体に甘い疼きが走る…理性が溶けていく…

”あはぁ…はぁ…あはぁ…はぁ…”ジェラの息に酔いしれる…頭の中にまで甘いものが染み透る…
”ねぇ…どう?…どんな…感じ?…”ジェラは口付けしたまま聞いてくる…
”すごく…いいの…変なの…あたし…どうしたの…切なくて…それがとても気持ちいいの…”…言葉遣いが変になっていく…
”あなたは女になるの…夢を見ている間だけ…そして…いやらしい事してあげる…女の快楽に酔わせてあげる…”

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