教会[ファーザー]

1:憑依


その夜、ファーザーの部屋
ベッドで寝ているファーザー、その真上の天井に黒い霧がたゆたい始めていた…
霧は、ゆっくり下りて来て、ファーザーのそばに溜まっていく…
いのまにか、霧は女性に見える形となった。
霧の手がファーザーの体をやさしく撫でる。
かすかな、ささやき声が聞こえる。
”ファーザー…愛しい体…こんな素敵な体の人がいたなんて…”
霧がファーザーの胸の辺りにほお擦りする。
”1つになりましょう…素敵な夢を…淫らな夢を…男では味わえない甘い夢を見せてあげる…”
ファーザーの口に霧が吸い込まれていく…
”私のファーザー…”
ファーザーは「夢魔の魂」に取り憑かれた…

ファーザは捕らえられる…不思議な夢…夢かどうか定かでない感覚に…

…甘い…甘い香り…甘酸っぱい香り…
…むっとするほどの香り…
…吸い込む…吸い込んでしまう…
…何か…よくわからないけど…いい…
…息を吐く…甘い…自分の息が…甘い…
…吸う…濃い…甘さが濃くなる…肺に…満ちる…肺から…広がる…体に…
…吐く…前より甘い…甘くなっていく…
…吸う…深く…甘い波…広がる…隅々まで…
…甘い…ねっとりとした…蜜のような甘さ…
自分の体が…蜜のように甘さに満たされる…
はぁ…ため息がでる…委ねていく…そして深い満足感とともに…変わってしまう…

意識がやっと形となる…夢の中で…

夢?…そうこれは夢なの…
わかる…女…私は女になっている…
なぜ?…疑問が浮かぶ…でも…頭の中も蜜でいっぱい…考えることなんてできない…
女…夢…女の夢…
変…わたしは男なのに…でも女…今は女…それなら…それでもいい…
波…甘い波…息を吸うたび…波が来る…
はぁ…いい…お腹が…いいの…いいの…とっても…
もっと…もっと…あ…あぁ…はぁん…あは…あぁぁぁ!…
素敵…素敵な夢…とっても…素敵…

ファーザーの意識は深みに沈む…甘い愉悦に満たされたまま…

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