ボクは彼女

55.4P計画


 「整理しましょう」

 エミが木間、『マザー2』、教授に向かって話をする。

 「この『乳房』、特に『乳首』が、この……」

 エミは手を広げ、『マザー2』の本体を示す。

 「宇宙船の性感帯になっているのは間違いないわ。 だからここを刺激していけば、『マザー2』に取りついている『麗』さんを『イカセル』ことが出来る

でしょう。 その時、同時に、貴女が……」

 エミは麗の体に入っている『マザー2』を示した。

 「『絶頂』に達すれば、貴女と『麗』さんの魂が交換され、元に戻れるはずです」

 『マザー2』は首をかしげた。

 「検討……疑問……うまくいくのか? 私は……それについての経験が皆無だ。 知識は……あるが……」

 エミは手を額に当て、目を閉じて考え込む。

 「経験不足か……具体的には、どんな問題が生じるかしらね? 木間君、経験者としての意見はない?」

 話を振られ、木間は居住まいを正した。

 「そうですね。 僕と麗は、何回も『魂交換』を経験しましたけど、成功率はあまり高くなかったと思います」

 「具体的な数値を示して」

 「4回に1回ぐらいです。 『イク』タイミングが、合わないのが原因でしたけど」

 「むぅ」

 エミが難しい顔になった。

 (『マザー2』は経験値0だし、『麗』さんは体が宇宙船になっている……息を合わせるのは難しいか……)

 エミは教授を見た。

 「ご意見はありますか?」

 「そうだな、サポートをつけてはどうだろう」

 「サポート、ですか?」

 教授は頷いた。

 「主役は『麗』君と『マザー2』だが、それぞれに一人ずつ、サポートをつけ、絶頂のタイミングを調整してはどうかと思う」

 エミは頷いた。

 「いい考えだと思います。 誰が良いと思いますか?」

 「さて……私は、自信がないが……エミ君、君はどうかね?」

 教授の言葉に、エミは微笑んで見せた。

 「テクニックには自信がありますが……こういう場合は、テクニックより『信頼』が大きな要素だと思います」

 「『信頼』?」

 エミは頷いた。

 「体を任せるには、やはり、信頼できる相手でないと」

 「……となると、『麗』君のサポートは木間君しかいないな」

 「僕ですか? でも……」

 木間は、身の丈ほどの『乳房』に視線を送った。

 「……こういうのは経験がありませんけど……」

 「それを言うなら、ここにいる全員が同じよ。 後は……」

 エミは、『マザー2』を見た。

 「貴女だけど……ご指名できる友達か何かいる? 仲間でもいいけど」

 『マザー2』は微妙な表情になった。

 「友達……仲間……そのようなものは……目的が近い同型機ならいるが」

 エミは息を吐いて考え込んだ。

 「『マザー』か……協力してくれるかなぁ……」

 「いや、『マザー』にSEXのサポートは無理だろう」

 エミと教授が難しい顔をしていると、『麗』が話しかけてきた。

 ”あのー”

 「ん? なに?」

 ”その子はどう? 『ドローン』のその子”

 教授とエミは顔を上げ、蹲っている『スーパードローン』を見た。

 「そうか、この子は『マザー2』に忠実なのよね」

 「うむ……待ちたまえ。 今、この子に命令できるのは『麗』君なのではないか?」

 ”そうみたい……ちょっと待って……起きなさい”

 『麗』がそう言うと、『スーパードローン』が顔を上げた。

 「はい『マム』。 ご指示を」

 ”あなた。 女性の……えへん……女性への奉仕はできる?”

 『スーパードローン』が首をかしげる。 指示の内容が理解できないようだ。

 「もうちょと、具体的に」

 ”えーと……そこの女の子に……”

 『麗』が四苦八苦しながら、『スーパードローン』に細かい指示を出しはじめると、木間が顔を赤らめた。

 「……あの……表現が露骨じゃないかと……」

 ”やかーしぃ!”

 「はい、沈黙します」

 ”ああ、違うのよ……”

 「時間がかかりそうだな」

 「ええ」
 

 エミ達が『マザー2』の中で四苦八苦している頃、残された警察、大学関係者たちは『マザー2』に船を寄せて、中の様子を探ろうとしていた。

 「上の穴から、中にはいれないのか?」 山之辺刑事が尋ねた。

 「中がどうなっているのか、良く判らないんですよ。 教授達は無事なようですし、応援の必要もないようですから、外で待ちましょう」

 太鼓腹の答えに、山野辺刑事は頭をかきむしった。

 「中にいるのが大学の教員と学生だけってはなぁ……」

 その時、山之辺刑事の懐でスマホの着信音がした。 スマホを取り出して応答する。

 「はい、山之辺です……はい?……ああ、今『犯人』の隠れ家を突きとめて『交渉』しているところで……取りあえず、拉致された学生の無事は確認して

……?」

 山之辺刑事の顔色が変わった。

 「海保?……えっ海自が!?……ちょっと待ってください、『拉致監禁』事件ですよ。 警察の管轄で……『外国の不審船』!?」

 しばらく、やり取りした後、山之辺刑事はスマホを切って、太鼓腹に向き直った。

 「中の連中に伝えてくれ。 『すぐに外に出るように』とな。 一時間後に、海自の護衛艦と潜水艦がここに来る」

 「え? なにをしに?」

 「こいつを『外国の潜水艦』として処理するつもりらしい」

 「処理!? どうするんですか?」

 「普通なら、退去勧告し、領海外に出るまで監視だが……どうも捕獲するつもりようだ」

 「捕獲!?」

 「ああ。 どうも、攻撃許可も出ているらしい」

 「そんな無茶な」

 「同感だが、今はまず、中の連中の安全を確保しないと」

 「判りました! 『教授、エミ先生、聞こえますか!? 木間君を助け出せたのなら、すぐに出てきてください!』」

 太鼓腹が緊迫した声で、中の教授達に外の様子を伝え始めた。

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