ボクは彼女

54.『マザー2』と木間と『麗』


 ”何やってんだか”

 「麗?……見てたんだよね」

 木間は上を見上げた。

 ”見えるにきまってるよ”

 怒った風な言葉に、ひそかな期待を寄せる木間。

 「怒ってる?」

 ”それはそうさ、人の体で勝手して”

 「ごめん……」

 誤りながら、木間は心の中で溜息をついた。

 (反応が薄いや……嫉妬してくれればと思ったんだけど……)

 視線を『マザー2』に移す。 彼女は身じろぎし、体を起こした。

 「衝撃……不可解……今のは……なんです?」

 「今のが、SEX……エクスタシーだよ」

 「エクスタシー……深く記憶……」

 『マザー2』は麗の手で、木間自身に手を伸ばした。

 「生殖器……縮小……小さくなっている」

 「そこは、興奮すると大きくなるんだ」

 「既知……観察……それは知っている。 何故、大きさが変わる?」

 「そういうふうにできているんだ……あ、あの」

 『マザー2』は、麗の愛液と木間の精にまみれたそれを、興味深げに触っている。 刺激でそれが、大きく成って来た。

 「膨張……発熱……興奮してきた、のか?」

 「あ……いや……」

 『マザー2』が上目遣いに木間を見る。 濡れた瞳と、上気した肌が艶めかしい。

 ”また、その気になって来たんじゃない?”

 『麗』がそう言った。 木間と自分の体の『マザー2』がいちゃついているのに、感情の起伏が見られない。

 (これじゃ駄目だ……麗の、いや『マザー2』の体を刺激しないと……)

 フニフニフニ……

 木間自身を弄る『マザー2』の手つきが怪しくなってきた。 木間は、そっと彼女の手を握り、自分自身から離させる。

 「?」

 「ねぇ、君の体で、今みたいに感じる場所はないの?」

 「不明……不可……よく判らない?」

 「さっきここで……」

 木間は、『マザー2』の下腹を撫でた。

 「感じたようなことを、感じることはないの?」

 『マザー2』は黙り込み、目を閉じて何か考えだした。

 「推測……曖昧……あそこの感覚が……近いかもしれない」

 「それは、どこ?」

 「ドローンの生成嚢だ」

 
 木間と『マザー2』は服を着て、『ドローン生成嚢』に向かった。 到着すると、エミと教授が先に来ていた。

 「『麗』さんからここに来てと言われたのよ」

 「この場所は何かね」

 『ドローン生成嚢』は乳房のような形で、乳首が天を向いている。 木間は、『マザー2』の話を二人に話す。

 「これが、人間をドローンに変えるモノなのね」

 「ええ。 ドローン生成は、何段階かあり、ここで最終仕上げを行うようです」

 教授達が『マザー2』を見た。

 「ここに感覚器が備わっているのかね?」

 『マザー2』は頷いた。

 「調整……敏感……『ドローン』の状態を詳細に観察するため、ここは特に敏感だ。 そして『ドローン』を生み出す時、私は強い歓びを感じる」

 エミは腕組みして、ソレを眺めた。

 「『産みの苦しみ』ならぬ、『産みの歓び』という訳ね……どうしてそうなっているのかしら?」

 エミの問に、教授が答える。

 「推測だが、『マザー』達の創造主は、彼女らが正常な活動を積極的に遂行するように、『快感』を感じる様にデザインしたのではないかな? 『ドローン』の

生成には手間と時間がかかり、負担が大きいようだから」

 「人間が快感目当てに子作りに励むように……ですか」

 ”そうなの?”

 『麗』の声が響いた。

 「まぁいいわ。 今はそれを論議してもしょうがない。 それよりも、麗さんがこれをどう感じるか……」

 エミは、複数ある『乳房』の一つに近づき、その『乳首』に触れてみた。 『乳房』がプルンと震える。

 「感じた?」

 ”触られたのは感じた……でも、それだけだけど……”

 「うーん」

 エミが額に手を当てた。

 「中で『ドローン』を作らないと、感じないのかしら」

 「可能性はあるな」 と教授。 「試してみるわけにはいかないが」

 「あのー」

 木間が手を上げた。

 「何かね」

 「人間のSEXの場合、感じる所を刺激していれば『いく』ことはできますよね。 本番を行わなくても」

 「そうだが?」

 「ここも、感じる所を繰り返し刺激すれば、『いく』んじゃありませんか?」

 教授とエミが顔を上げた。

 「なるほど」

 「だとすると、どこをどう刺激すればいいかしら」

 エミは『乳房』を観察する。

 「『産まれる』ときに感じるのなら、『乳首』を刺激し、広げる様にすればいいんじゃないかしら」

 エミは、『乳首』を手で摩ってみた。 中身のない『乳房』は直径が1mほどあり、乳首も両手で掴むとあまるほどの大きさがある。

 「どう?」

 ”触られてる感じはある……なんかモヤッとする”

 エミは手の動きを止めた。

 「見込みはありそうね。 木間君、『マザー2』と二人で、この『乳房』を刺激してあげて」

 「え……僕も? 大丈夫ですかね。 今度は僕が『マザー2』に取り込まれるとか」

 木間は不安そうに辺りを見回す。

 「貴方のサポートが必要なのよ。 『麗』さんと『マザー2』だけだと、うまく……交われないと思うの。 『イキ』そうになったら、貴方は素早く離れて」

 木間は不安そうに『マザー2』と辺りを何度も見回し、しぶしぶと言う感じで頷いた。

 
 「さて……やるよ」

 エミと教授が離れるのを確認し、木間は『マザー2』と『乳房』の前に立った。

 「『乳首』をさすってみよう」

 上を向いた『乳首』に触れる。 体温より少し冷たく、微かに汗ばんだ感触は、人間の女性の乳首と変わらない。

 フニフニフニフニ……

 柔らかくて、感触は良い。 二人して擦っていると、妖しい宗教儀式のようだ。

 ”うーん……なんかモヤモヤするけど……あんまりよくないかな”

 「そう?……舐めてみようか」

 木間は『乳首』に顔を近づけ、舌を出して舐める。 特に味はしない。

 「私も舐めるのか?」

 「んん? んーんんん」

 木間は指をくるくる回して見せた。 『マザー2』は首をかしげ、聞き直す。

 「意味が判らないのだが」

 「……ぷはっ。 『乳首』の周りを撫でていて。 違う刺激を同時に加えてみよう」

 「ん」

 二人は、手分けして『乳房』を刺激する。

 フルフルッ

 『乳房』が揺れた。

 「麗?」

 ”ん……”

 麗が返事した。 心無し艶っぽい。

 ”乳首の……中央を……”

 「中央だね?」

 木間は、両手で『乳房』を抱きかかえ、『乳首』に顔を埋める様にして、中心を舐めた。

 ビクッ!

 『乳房』が震え、『乳首』広がる!

 「わぶ!」

 広がった乳首が、木間の顔に吸い付いた。 そして、頭が引きずり込まれそうになる。

 「うぶ!」

 ”あっ……ああっ!……”

 麗の声が熱を帯び、『乳房』がビクビクと蠢き、木間を中に引きずり込もうとしている。

 「いけない! 中止して」

 エミがあわてて木間を捕まえ、『乳房』から引き離す。

 ”ああっ……あん……もう……”

 麗が不満げな声を漏らす。

 ”なんで止めるのぉ……”

 「あの中に吸い込まれたら、木間君が『ドローン』に改造されちゃうじゃないの」

 「うむ。 とにかく性感帯は確認できた。 麗君を『イカセル』方法を検討しよう」

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