ボクは彼女

53.『マザー2』と木間


 「『麗』さん。 もう一度聞くけど、体の具合はどう?」

 ”……特に問題ありません”

 「頭が痛いとか、お腹が痛いとかは?」

 ”頭……頭どこなんでしょうか?”

 「ごめんなさいね、聞いてみただけ」

 エミはため息をつき、ランデルハウス教授と木間の方を見た。

 「木間君、彼女と……魂を交換できたのは、『SEXで同時に達したとき』だけなの?」

 木間が真っ赤になる。

 「先生、露骨な表現は……」

 「言葉を飾ってもしょうがないでしょう。 どう?」

 「せ、先生の言われるとおりです」

 エミは、手を顎に当て何か考えていたが、スマホを取り出し、誰かに電話をかけた。

 「もしもし、舞さん? 確認したいことがあるんですけど……」

 エミは少し話をしてから、電話を切った。

 「舞さんも、他の方法は知らないと言ってた」

 木間は首をかしげた。

 「先生は何を知りたいんですか?」

 エミは顔を上げ、木間を見る。

 「『魂交換』が起きる条件を確認したかったの。 SEX以外の方法がないかと思ってね」

 ランデルハウス教授が、エミに話しかける。

 「SEXではだめなのかね?」

 エミは頷いた。

 「今の『麗』さんは、体が宇宙船になっています。 どうやって、彼女を絶頂させます?」

 ランデルハウス教授は唸って頭を振り、『マザー2』(肉体は麗)に尋ねた。

 「君の性感帯はどこかね?」

 「生殖……交合……性感帯とは、なに?」

 教授とエミが頭を抱えた。 生殖機能を持っていない生体『宇宙船』の意識、『マザー2』にSEXの概念があるわけがない。

 「言葉が通じても、意味が通じないのでは……」

 「体験してもらうしかないか……」

 「それは……『マザー2』にSEXを体験させると?」

 「ええ」

 
 エミの提案に、教授が反対した。。

 「危険だ! 今度は『マザー2』と誰かが入れ替わってしまうかもしれん」

 「その可能性は低いと思います。 麗さんと舞さん以外に、魂交換できる人、いえ『人外の者』が2例あります」

 「ふむ?」

 「一つは『シェア』。 彼らとSEXした人間は、意識と記憶が入れ替わります。 ただ、完全なものでなく、記憶と意識が一部混じってしまいます。 SEXを

重ねる度に、混合の割合が大きく成り、最後には互いの区別がつかなくなります。 この時、もとは『人』であった者も『シェア』になっています」

 「ということは『シェア』の入れ替わりの力は、肉体ではなく、魂にあるということになるのか」

 エミは頷いて、話を続けた。

 「もう1例は確実に魂の側に力があります。 なにしろ『彼女』は魂だけの存在で、他人の体に魂をインストールし、その肉体を乗っ取るのですから」

 「なに!? そんな力を持ったものがいるのか!? それは、どこにいるのかね!」

 エミは肩をすくめた。

 「すみません。 それは明かせません。 ただ、『彼女』は、他にも『力』を持っていて、他人の体を乗っ取った後、力を振るうことが出来ました。 この点から

『魂交換』の力、は彼女の魂に備わっていると見て間違いないでしょう」

 ランデルハウス教授は、なおも食い下がったが、エミは『彼女』の名を明かそうとはしなかった。

 「……『彼女』の事は置いておくとして、その2例が君の判断の根拠か」

 「ええ」

 「むむむむ……」

 「念のため、絶頂のタイミングをずらします。 経験では、タイミングがずれると『魂交換』は起きなかったのよね、木間君」

 いきなり振られ、木間がせき込んだ。

 「ぶはっ……え。ええ、そうですけど……」

 「じゃあ、お願いするわね」

 「はい……え?えええっ!?」

 木間が血相変えてエミに詰め寄る。

 「どうしてそうなるんですか! 他の誰でも」

 「他の人に、『麗』さんの体をまかせて、平気なの?」

 言葉に詰まった木間は、視線をあちこちにさ迷わせた。

 「『麗』……いいかい?」

 ”なにを?……ああ、『マザー2』にSEXを教える事? いいんじゃない?”

 気の無い返事に、むしろ木間が危機感を覚えたようだ。

 「『麗』の様子が変です……」

 「長い時間放置していると、どうなるか判らないわよ」

 「判りました」

 
 エミは、『麗』(宇宙船)に部屋を用意させた。 『ドローン』が休憩するための部屋か、寝台のようなモノがある。

 「私たちは、他の場所を調べて来るから。 その間に、お願いね」

 「は、はい」

 木間と『マザー2』を残し、一同は部屋を出る。 残された木間は、『マザー2』を振り返った。

 「ええと……じゃあ、服を脱いで……」

 『マザー2』が小首をかしげる。

 「不明……不安……何故服を脱ぐ必要がある?」

 「さっき、僕に抱き着いて来たでしょう? あの続を……しよう」

 「?……ああ」

 ポンと手を打ち、『マザー2』はいそいと服を脱いだ。

 「脱いだぞ」

 (やりにくいなぁ……)

 木間は、どちらかというと受け身体質で、自分からリードしたことはなかった。

 (取りあえず)

 いつも麗にしているように、彼女の頤を軽く持ち上げ、そっとキスをする。

 「異変……異常……やややや!」 『マザー2』が声を上げた。

 「な、なに!?」

 「圧力……上昇……体液循環ポンプの単位時間当たりの作動回数が急上昇した!」

 「……ああ、心臓がドキドキしてるんだね。 大丈夫、まかせて」

 木間は、『マザー2』にキスをしながら、自分の体を摺り寄せた。 中身は『マザー2』だも、肉体は勝手知ったる『麗』のモノだ。 性感帯は熟知している。

 (クリトリスを優しく撫でていけば……)

 「分泌……漏洩……あぁ……」

 熱い息を吐き、トロンとした目つきで『マザ−2』が木間を求めてくる。 木間は、体を入れ替えて彼女の神秘に舌を這わせた。

 ビクビクビクッ

 木間の下で『マザー2』が体をくねらす。

 「電撃……衝撃……もっと……もっとして……」

 木間は彼女に顔を埋め、強くすすり上げる。

 「異変……衝撃……い、いくぅぅぅぅ!!」

 彼女は、あっさりと達してしまった。

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