ボクは彼女

49.捕まった二人


 エミは『マザー2』の壁に近づき、天眼鏡を取り出して細部を観察している。

 「うむむむ……」

 「おい、エミ君。 それそれこっちに帰って来てくれんか」

 ランデルハウス教授が肩を叩いたが、微動だにしない。

 「うーん……お?」

 ゴトリ

 頭上で物音がした。 教授が上を見ると、真上の天井に丸い穴が開いている。

 「ミスティ君かな? ややっ!」

 穴の中から、大量の水が落ちてきた。 教授は素早く飛び下がったが、エミはまともに水を被ってしまった。

 「げほっ、げほっ……」

 せき込むエミの横で、教授は天井を見上げる。 幸い水はすぐに止まったようだ。

 「教授、何なんですか、今のは」

 「さて? 浸水したのかな」

 首をひねっていると、太鼓腹から通信が入った。

 ”教授、機材は大丈夫ですか? 今大波がきて、穴にも水が入ったみたいです”

 「おっといかん」

 慌てて教授は機械類を調べる。 幸い、こちらも無事なようだ。

 「私は無事じゃないです」

 ずぶぬれのエミが情けない声を出す。

 「海水の様だな。 まぁ、濡れただけなら大丈夫だろう。 それより麗君が木間君を見つけたようだ」

 「え?」

 教授は、『マザー2』内部の音をスピーカーに出力する。

 ”きゃぁ、なによこの触手は!?”

 ”捕獲……実験……”

 「ややっ、まずいことになっているようだ」

 
 「なによこれ!」

 「触手……かな?」

 最初に絡んできたのは、『触手』というより細い蔓みたいだった。 でも、今度はタコの足みたいにうねうねと動く『触手』が乳風呂の中から現れ、僕(木間)

と麗に絡みついてきた。

 「ひゃぁぁ」

 ただの『触手』じゃない? ヌルヌルして、変なところをあちこち触ってくる。

 「スケベ! エッチ! 痴漢! 信じられない!!」

 麗は、レモンイエローのウェットスーツを着込んでいたが、触手はスーツの中に入り込んで、強引に脱がせてしまった。 いまや二人とも真っ裸だ。

 「放せ! 麗、手を! あ、あれ……」

 ヌルヌルが、大事なところにぐるっと巻き付き、しごいている。 気持ち悪い……だけじゃない、力が抜ける……

 「か、体が……重い……」

 「木間君!……あ、あたしも……」

 体重が倍になったみたいで、立っていられない。 触手が麗を引っ張って、僕とぶつかった。

 「ひゃぁ!?」

 「やん?」

 ヌルヌルになった麗の体が、僕に密着した。 麗の匂いが、僕の鼻をくすぐった。

 「き、木間君! もう、こんな時に」

 「僕じゃないよ! この触手が……」

 「じゃなくて『男の子』のところが……わぁ、凄い」

 麗が見ている所は、僕の……アレだ。 散々嬲られていたところに、麗に抱き着かれ、アレがガッチガチに立って震えていた。 麗が怒るはずだ。

 「……なんか……すごい……」

 え?

 麗は、濡れたようなまなざしでボク自身を見つめ、おずおずと手を伸ばしてきた。 ヌルヌルの手が、ボクを捕まえた。

 ズキン

 「ひゃっ」

 「わっ」

 電気が走ったかと思った。 暴発しなかったのが不思議なぐらいの快感が、股間を走り抜けた。

 「感じて……る?」

 麗が上目遣いに僕を見た。 触手にまかれている麗が、妙に艶めかしく見える……触手?

 「麗!駄目だ!」

 「何がぁ……」

 麗の眼がトロンと濡れている。

 「触手が何かしてるんだ……その気にさせられて……」

 濡れてひかる麗は、すごくきれいで……艶めかしくて……

 「駄目……」

 麗が僕に顔を近づけ……唇を重ねる。

 キュゥゥゥ……

 ぎゅっと体が絞られる……麗の舌が僕と絡まる。

 ン……

 お互いの鼓動が……一つの生き物のように……同じリズムをんで……

 プハッ……

 唇が離れる……目の前に麗がいる……ああ……

 麗が僕を求め、僕も麗を……

 もう言葉はいらない……

 
 捕獲対象の女の子は、先に捕まえた男の子と重なっている。

 ”欲情……増幅……その気になったようですね”

 「『マム』?」

 ”分泌……介入……『化学的』方法で興奮をあおり、神経を刺激しました。 観察を続け、『入れ替わる』瞬間のデータを取ります。 貴女は、必要に

応じて介助なさい”

 「はい『マム』」

 返答はしたけど、男の子と女の子は夢中で絡み合っている。 どうすればよいだろうか?

 はぁ……麗……

 木間君……麗の中に……きて……

 男の子が、女の子の中に挿入しようとしている。 モノが固くなりすぎて、うまく入らないようだ。

 「手伝ってあげる」

 二人に寄り添うように寝そべり、男の子に手を添え、女の子の中に誘導する。

 「熱い……」

 二人のソコは、火がついたように熱い……

 「はぁ……あ?」

 ムニュ……

 「そ、そこは」

 顔を二人のアレに近づけていたので、自分のアレが二人の顔の近くに、寄っていた。 それをどちらかが、舐めまわしている。

 「だ……あ……」

 丁寧な舌遣いに……アソコが蕩け……『マム』……ア……

 
 ”刺激……増幅……もっと、もっと……求めなさい”

 不自然に絡み合う男の子一人と女の子二人、彼らに巻き付きうねる触手、隠語で異様な光景がそこにあった。 そしてエミ達は……

 「こっちは行き止まりだ」

 「もう。 二人の様子は? 太鼓腹君」

 ”凄いですよ! この通り”

 ”ああん、ああ!”

 ”もっと……きて……”

 「……何をやってるのよ、あの二人は」

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