ボクは彼女

24.失踪事件


 SUVのエンジンが停止した。 自動安全装置が働いたようだが、運転席の男はそれどころではなかった。

 「放せよ! 何なんだお前は!」

 気味の悪い女は、無言のままのろのろした動きで、男を外に引きずり出そうとしている。 と、突然男が笑い出した。

 「わ、判ったぞ! お前ら、人を脅かして、その様子を動画に取ってupする気なんだろ! その手に乗るか」

 狂ったように笑う男。 が、女は無言のままだ男にしがみついている。 そこにもう一人、白い肌の女が近づいてきた。

 「ゾンビのふりなんて騙されるかよ! え、そうなんだろ!」

 グイッ

 後から来た女が、男の足を掴んで引っ張った。 女とは思えぬ力で、絡み合った二人を車外に引きずり出してしまった。

 「よせ、やめろ! おい、助けてくれぇ!」

 先に逃げた友人たちに助けをもとめたが、返事はなかった。 じたばたと暴れる男を、女二人が押さえつけ、Tシャツとズボンに手をかけた。

 ビリッ

 女達は、男の服をむしり取った。 露わになった肌に、女達の白い肌が触れる。

 「ひっ」

 冷たい肌の感触に、思わず悲鳴を上げた。 それに構わず、女の一人が男のモノを握った。

 「痛っ!」

 容赦ない圧力に苦痛の呻きが漏れる。 すると、女が手の力を緩めた。

 ”イタイ? 強すぎたか?”

 「な……しゃべった?……お前ら日本人か? ふ、ふざけやがって! 何のつもりだ!」

 男は怒声を発し、女達をなじる。 それは、恐れの裏返しなのだろう。

 「変だと思ったが、どっかのガキの悪ふざけか! さっさとどきやがれ!」

 喚き散らす男の口を、女が手でふさぐ。

 ムゴウ、ムググッ……

 ”……”

 女達はは珍しい動物を見るような目つきで、男を見ている。

 (こいつら! なんなんだよ)

 男は、怒りの眼差しで女達を睨みつけた。 異様に白い肌が人間離れした印象を与えているが、それ以外は普通の女、いやグラマラスな体つきの

色っぽい女達だ。

 (痴女かよ? にしても、力が強ええ)

 女達の腕を外そうとしても、ビクともしない。 女の一人が男の体から離れて立ち上がった。 男はここぞと抵抗するが、残った一人に押さえつけられて

動くことが出来ない。

 (畜生!)

 立ち上がった女は、自分の乳房を下から持ち上げる様に動かした。 たわわな果実が、女の手の中で柔らかく蠢く。

 (げ、やっぱおかしいのか、こいつら)

 男の思いなどお構いなしに、女は乳房を弄ぶ。 太めの乳首がツンと上を向き、ピクッと震えた。

 タラーッ……

 乳首の先から、滴が落ちる。 乳首から出るのわ母乳のはずだが、その滴は透明で、糸を引いていた。

 (え……?)

 女が男の方に乳首を向、乳房を絞った。 尖った乳首の先から、透明な液体が糸のように迸り、男と彼を押さえつけている女の体に降り注ぐ。 得体の

しれない女達の行動に男は戸惑う。

 (な、なんだこいつら……いっ!?)

 彼を押さえつけていた女が、乳首の『滴』で濡れた手で、彼のモノを握って来た。 さっきよりずっと控えめで、握ると言うより、揉むように手を動かしている。

 ビクッ

 縮こまっていたモノが震え、ビクッビクッと震えながら固くなっていく。

 ”このぐらいが良いか”

 呟いた女は、男の反応を確かめながら、彼のモノを握ったりさすったりする。

 (だんだん、うまくなってくる……うっ!?)

 みるみるうちに固くなっていく男のモノ。 そして、女の愛撫も次第に巧妙になっていく。

 (や、やられっぱなしじゃ……)

 女の注意がモノに向いている。 その隙をついて手を伸ばした男は、女の乳房を掴んだ。

 グニッ

 ”あうっ!?”

 (ええっ、なんだこりゃ)

 女の乳房は見た目通り柔らかかった。 しかしその中に『塊』のような異物感がある。 思わず手を離す男。

 ”ここに触りたいのか”

 女は男の手を取って自分の胸に導いた。 乳房を揉むように手を動かすと、やっぱり『塊』を感じる。

 (うーん?……あへっ)

 もう一人の女が彼の足に跨り、その乳房の谷間に彼を迎え入れた。 柔らかい皮膚が吸い付き、ヌルヌルとモノを撫でまわす。 ジンジンとした心地よさに

宝玉が縮み上がり、女の乳房の中で揉み解されて蕩けそうだ。

 (たまんねぇ……)

 女達に感じた怒りも疑問もどこへやら、男は女たちの愛撫と乳房の虜になってしまった。

 ヌルヌル、ヌチャヌチャ……

 男は脱力して横たわり、女達にされるがままになっていた。

 (あ……れ?)

 違和感を覚えた。 モノはとっくに絶頂に達してもいいはずなのだが……

 (な……んだ、これは?)

 痺れるような快感が、モノから溢れ下へ、体の中へと広がってくる。

 (こ!)

 異様な快感に跳ね起きようとした。 しかし、女の一人が彼に抱き着き優しく押し倒した。

 (ああ……)

 抱き着かれた瞬間、体の中を重々しい快楽の波が通り抜けていった。 粘っこい快感が、体の中を満たして、ゆっくりと波打っているようだ。

 (蕩ける……)

 頭の中を快感の波がゆっくりと往復する、思考も疑問も、生じる片端からも洗い流されてしまう。

 ”そろそろいいか……”

 彼の口を押さえていた女が離れた。 人形のように横たわった男の股間で、モノが偉そうに天を仰いでいる。 女の一人がそれを跨ぎ、腰を沈めた。

 ズブッ……ズブブッ

 女の秘所が、男のモノを咥えこみ、奥へと誘う。 男と女は、物理的に一点でつながった。

 ”ああ……はいってくる……うっ……”

 女がブルリと震えた。 同時に男も震える。

 (なにが……起こった?)

 男の思考が、快感の海から微かに浮かび上がる。

 ”判りますね? 今お前は、私と繋がっています。 この女の肉体を通じて”

 (……)

 男の意識に、女の声が響いてくる。 いや、目の前の女ではなく、別の何かだ。

 ”私は……『宇宙からの訪問者』です”

 (『宇宙からの訪問者』……)

 男の思考はほとんど動いていない。 伝わってくる”声”を受け入れ、反射的に答える事しかできない。

 ”私には、『外』で私の手足となって働く『ドローン』が必要です”

 (『ドローン』……)

 ”その女達は『ドローン』としては機能不足です。 一度死んだ体なので、脳の一部が働いていません。 直に停止するでしょう”

 (ゾンビ……)

 ”生きた人間を『ドローン』とする必要があります。 これから貴方達を新しい『ドローン』にします”

 グニッ

 女、いや『ゾンビ・ドローン』が腰を動かした。 快感のさざ波が、男の中を往復する。

 (ああ……)

 ”気持ちよいでしょう? さぁ、おいで、私の胎内に。 身も心も蕩かして、私の『ドローン』に作り変えてあげる。 さぁ、終わらぬ快楽の夢の中にいらっ

しゃい……”

 (はい……仰せのままに)

 フラフラと男は立ち上がり、女達の後をついてヨロヨロと歩き出した。 砂浜まで来ると、後ろから足音がした。 振り返ると、他の友人たちが白い女に

導かれてやってくるところだった。 全員、虜になったようだ。

 ズザッ……

 砂浜に、小さな漁船ほどの大きさの黒い影が乗り上げてきた。 それは二枚貝のように口を開いた。 白い女達がそれに乗り込み、六人の男女が

それに続いた。 一同を呑み込んだ黒い影は静かに口を閉じ、夜の海に戻っていった。

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