ボクは彼女

9.女の子の初体験


 「濡れてる……」

 見慣れない細い指に透明な愛液が絡みついている。

 「H」

 レイがぼそりと言った。

 「レイがじっと見てるから……うん」

 自分の胸を抱く。 わずかな、それでいて柔らかい膨らみが腕に感じられる。

 「なにか……胸がきゅっと……わっ!」

 突然レイがボクを押し倒した。 レイの体は今は男、ボクはベッドに押さえつけられ、身動きが取れない。

 「ら、乱暴にしないでよ」

 「ゴメン」

 レイの息が熱い。

 「でも、抑えきれないんだ……欲しくて……」

 レイがボクの唇を奪う。 男のキスなのに、ボクの心臓は早鐘のように鳴っている。

 んー……

 レイの情熱的な口づけに、女の体が反応する。 お腹が熱く、切ない気分になってくる。

 (ああ……欲しい……)

 お腹の中に、熱い刺激が欲しい。 女の子の欲望に絡めとられていく様だ。

 「ぷはっ」

 レイが口を離した。 ギラギラした目で、ボクの顔を見つめている。 足の間をレイの指が触っている。 爪が引っかかっり、鋭い痛みが走る。

 「つっ!」

 「ごめん」

 レイは指を一度離し、今度は慎重に指の腹だけでボクの秘所を撫で始めた。

 「レイ……」

 「感じる……よね?」

 感じるどころではない。 レイの指が往復するたびに、頭の中にモヤモヤして熱くなってくる。 レイが欲しい、今すぐに。

 「ね……きて」

 口調まで女の子みたいになってきた。 いや、そもそもこれは自分が言っているのだろうか?

 「うん」

 レイは本来はボクのイチモツを軽く握り……目を丸くした。

 「きゃ……不気味な手触りね、コレ」

 「ボクんだぞ。 けなさないでよね」

 「あ、ゴメン」

 軽く笑って見せたレイは、モノの先端でボクの秘所をなぞる様にした。

 「わぉ。 ヌルヌルして……熱い……」

 「う、うん……」

 秘所をなぞる感触に、お腹の中がもどかしくなってくる。 あれが欲しくてたまらない。

 「ね、じらさないで……ゆっくりきて」

 「うん」

 レイは、手で慎重に位置を決め、ゆっくりとボクの中に入ってくる。

 「あうっ! 入ってくる」

 お腹の中にレイが入ってくる。 ボクの秘所は勝手に反応し、レイを歓迎する。

 「ああっ……ヌルヌルして……絡みついてくる」

 「入ってくるぅ……」

 ボクとレイは、互いの体で未知の経験に酔いしれる。

 (か、体が勝手に……)

 (あん、男のコレ……いい……)

 レイはボクを深々と貫き、ボクはレイを体の奥深くに迎え入れる。 体から沸き起こる深い歓びに、意識は朦朧として、体が勝手に動き続ける。

 「あ」

 「う」

 『あああああっ!』

 ピタリ

 図った様に高みに上り詰めるボクとレイ。 意識は白く塗りつぶされ、快楽の爆発に体が熱く溶けていくようだ。

 そして幸せな気分のまま、ボクとレイは意識を失った。

 
 ……?

 意識が戻って来た。 かすむ視界の中でじっと手を見る。 見慣れた男の手。

 (戻れた……)

 安堵したが、ちょっぴり残念な気がした。

 「うーん……」

 ボクの隣で麗が伸びをした。 スレンダーな女の子の体を横目で見る。 さっきまであの体に自分の魂が入っていたのだが、こうしてみいると、全てが

夢だったような気もする。 何はともあれ、元に戻れて一安心だ。

 「ふむ、戻ったね」

 麗は自分の体をあちこち確かめ、僕の方を見た。

 「戻った?」

 「戻れてなかったら大変じゃないか」

 「それもそうだ」

 口調は明るいが、そうなったら冗談ごとではすまない。

 「まぁいいじゃない。 次はいつにする?」

 僕は絶句した。

 「次はって……また入れ替わるつもりなの!?」

 「そだよ。 それともキミは、ボクとの関係をこれっきりにする気?」

 「う……」

 戻ることだけ考えていて、僕はその後のことを考えていなかった。 確かに麗と付き合い続けていれば、この先も『入れ替わり』を経験する羽目になるだろう。

 「これっきりにはしたくないけど……」

 「よかった」

 麗はにっこりと笑った。

 「キミの事は気に入ってるんだ。 分かれようって言われたらどうしようかと思ってたんだ」

 嬉しかった。 心臓がどきどきしている。

 
 僕と麗は、交代でシャワーを使った。 着替えてリビングに行くと舞さんがお茶を入れてくれた。

 「なかなか激しかったみたいね」

 真っ赤になってしまう僕の横で、麗は平然とお茶を飲んでいる。

 「今度はアタシと入れ替わってみない?」

 麗がお茶を吹き出し、僕は茶にむせた。

 「姉さん! だめ! これアタシの!」

 「まぁそう言わずに。 彼の気持ちも聞いてみないと、ね?」

 そう言って、僕の隣に腰を下ろす舞さん。 麗よりずっとグラマラスで、魅力的だ。

 「その気になるんじゃない!」

 麗が背後から僕の頭を掴み、舞さんと反対方向に向ける。 首が嫌な音を立てた。

 「乱暴しちゃだめよ」

 「姉さんのせいでしょう!」

 (この先、まだ波乱は続きそうだな……)

 と、僕は他人事のように考えた。
 
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