ボクは彼女

8.女の子の学校生活


 翌朝、ボクとレイは時間をずらして登校することにした。

 「お泊りがばれたら大変だから」

 「何が?」

 きょとんとするレイに『大変』な事を説明し(半分も理解していない様だったが)、ボクが先に学校に行った。

 「おはよう」

 「おはよう……ございます」

 「あれ? 麗さん今日は大人しいのね…… ああ、メンスなの」

 「メ……」

 「今日から?」

 「ナプキン? タンポン?」

 「あ、はははは……」

 愛想笑いをしてごまかすボク(他にどうすればいいんだ!)。

 
 (えーと……ここだ)

 レイの席を探し当て、席に着いてため息一つ。

 (疲れた……もう帰りたい)

 机に突っ伏していると、女の子たちがやって来て、心配そうに聞いてくる。 無視するわけにも行かず、適当に受け答えしていると、レイが教室に入って来た。

 ボクの後ろまで来て、首をかしげている。 どうやら、自分の席にボクが座っているので戸惑っているらしい。

 「あれ? あ、そうか!」

 体が入れ替わっていることをようやく思い出してくれたらしい。 頭をぺちぺちと叩いて、ボクの席に座る。

 「木間君、なんだか変ね」 隣の女の子が言った。

 「そんなことはないよ……じゃなく、ないと思うわ」

 自分が『麗』であることを思い出し、返事を軌道修正する。

 「そうかな。 なんだか昨日より、男らしくなったみたいよ」

 ガン!

 ボクは額を机に打ち付けてしまった。 チラリとレイの方を見ると、『もっと丁寧に扱って!』と目で語りかけていた。

 
 幸い授業中はたいした事もなく、昼休みになった。 女の子たちが誘うのを何とか断り、コンビニで勝ったパンを抱えて人気のない所を探す。

 「みーっけ」

 レイが背後から抱き着いてきた。

 「ちょ、ちょっと。 人目があるよ」

 「いーじゃない。 なにか問題ある?」

 「体が入れ替わってるんだよ。 君がボクに抱き着くと、ボクが君に抱き着いたように見えるじゃないか」

 「……?」

 レイは判っていないようだった。 もっとも、ボクも頭がこんがらがってきていたのだが。 そこに、エミ先生(本当は先生じゃないけど)が、派手なピンク色の

肌の女の子とやって来た。

 「こら君達。 校内であまり露骨な事をしない事。 放課後にホテルか寝室でしなさい」

 「先生! そこはそんなことをしてはいけないと叱るべきでしょう!」

 ボクが言うと、エミ先生は真面目な顔で言う。

 「叱る理由は何? 貴方達はもう子供じゃないわ。 どんな関係になろうと、私が関与する事じゃないでしょう。 但し……」

 エミ先生が顔を近づけてきた。

 「結果の責任を取る覚悟があればね。 そこはよーく考えるのよ」

 エミ先生の言葉に、ボクは少しだけ感心する。 もっとも彼女がボクを押し倒し、無理やり初めてを奪ったわけで、その行動の責任は取ってくれるのだろうか。
 そんなことを考えていると、ピンクの肌の女の子が首をかしげて、変なことを言い出した。

 「あれぇ? この二人、魂が入れ替わってる?」

 エミ先生は、ぎょっとした様子でピンクの女の子の方を見て、それからボク達に視線を戻した。

 「いまの話、本当なの?」

 エミ先生のは美人なだけに、真剣な顔になると迫力がある。 ボクとレイは視線を交わし、事前の打合せ通りとぼける事にした。

 「え、そんなこと……」

 「あるけないでしょう。 悪い冗談ですよ」

 あははははと笑った誤魔化すボク達。 エミ先生は、傍らのピンク色の女の子に視線を戻す。

 「確かなの?」

 「ハゥ! ミスティ嘘つかない!」

 「その言葉が大嘘じゃないの……あ、待ちなさい!」

 ボクたちはその場を逃げ出した。

 
 放課後、ボクは重い足取りで下校する。 丸一日、麗の体で過ごした結果、ものすごく疲れてしまった。 授業、食事、おしゃべり、トイレ……すべてが

初体験の連続だった。

 「やぁ!」

 ポンと肩を叩いたのはレイだった。 ボクはのろのろと振り向く。

 「今日は楽しかったね!」

 「ボクは疲れたよ……」

 「元気だしなって!」

 レイに励まされつつ、ボクとレイは彼女の家に帰り着いた。

 
 「お帰りなさい……どうしたの、彼?」

 疲労困憊しているボクを見て、舞が驚いたように尋ねた。

 「女の子でいるのが大変だったみたい。 いろいろと」

 「ああ、なるほど」

 恐ろしいことに、舞はそれで納得してしまった。

 「レイ、キミはなんでそんなに元気なんだ?」

 レイは首をかしげた。

 「さぁ……あれかな。 男の方が楽に生きているからじゃないかな」

 「そうかなぁ……」

 そう答えながらも、彼女の言うとおりかもしれないとボクは考えた。

 
 「じゃ、戻ろうか」

 「うん……」

 正直なところ疲れていて気は乗らなかった。 しかし、明日も女の子の体で学校に行くぐらいなら、今日のうちに戻ってしまいたかった。

 「なーんか、やる気なさそうだね。 明日にする?」

 ボクは慌てた。

 「そんなことない! したい! 今すぐレイとしたい!」

 「はしたないなぁ。 女の子だってこと忘れないで欲しいな」

 
 レイとボクは順番に風呂に入り、二人でレイの寝室に言った。 レイは戸を閉めて鍵をかけた。

 「なぜ鍵を?」

 「今日はお姉ちゃんがいるもの。 こっそり入ってこられたら嫌だから」

 そう言うと、レイは裸になってベッドに腰かけた。 見慣れたモノが、だらんと下を向いている。

 「レイだってやる気ないんじゃないの?」

 「初めてだもの。 元気にする方法が良く判んないだ」

 言われてみればその通りだ。 ボクの女の子の準備の仕方は、よく判らなかった。

 「しょうがないなぁ。 じゃあボクがやってあげるよ」

 そう言って、ボクはレイの股間に下がっているボクのモノを握った。

 「痛い!」

 「あっごめん」

 「もうちょっと優しくしてよ。 思ったより敏感だし」

 「う、うん」

 ボクは、慎重にレイの股間に手をあてがい、今度はやっくりと揉むように動かした。

 「な、なんだか突っ張って来たよ……」

 ボクの手の中で、レイのボク自身が(えーいややこしい!)が元気になってくる。

 クラッ……

 「あれ?」

 「どうしたの?」

 「うんなんだか……」

 答えてレイの顔を見る。 ボクの顔をしたレイが、こちらをじっと見ている。 その体を見ていると、なんだかボクの体の中にモヤモヤしたモノが生まれてくる。

 ジュン……

 「ん」

 自分の股間に手をやる。 今日一日、あるべきモノがない虚しさを覚えてきたそこに指が触れた。

 ビクッ!

 「んあっ!」

 指先にヌルリとした感触があった。 ボクは……濡れていた。
 
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