ボクは彼女
6.TS(トランス・スピリット)
麗がビクッと体を震わせた。
「つっ……」
麗の秘所は狭く、僕を拒んでいるみたいだ。 動きを止めかけた僕に、麗は首に腕を回して促す様に強く引く。
「いくよ……」
宣言してから、ゆっくり麗の中に入っていく。
くっ!
うっ!
狭い。 想像以上だ。 エミさんが熟しきった果実なら、麗は青いりんごだろうか。
「こら。 今比較したな」
ばれた。
「失礼だぞ」
僕は一つ頷き、麗に集中する。 猛り切った自分のモノに意識を集中し、麗の中だけを心に描いて動く。
あぅっ
僕の下で麗が呻いた。 心なしか声の調子が変わったようだ。
(よし)
麗の表情、体の反応に注意しながら、麗の中をゆっくりと前後する。
うっ……あっ……ああっ……
麗の声が上ずって来た。 僕をしっかり捕まえてていた麗の中が、熱くなってきたようだ。 こう言うと、僕が余裕たっぷりなわうに聞こえるけど……
麗っ……きつい……熱い……
僕を捕まえた麗の熱い滑りは、確かに女のモノだった。 一回往復する度に、少しずつ熱くなり、滑りを増していく。
ヌルリ……ヌルッ……ヌルッ……
麗の中は、僕を捕まえ、奥へ奥へと誘っている。 魔法にかかった様に、僕は夢中で麗の中を愛する。
「奥へ……」
「うん」
僕は力の限り、麗の中に自分自身を突き入れた。 狭い空間を一気に通り抜けた僕は、麗の奥に達する。
「ああっ」
「くっ」
そこに女がいた。 ザラッとした感触で僕自身を捕まえようとする。 腰を引いて、一度そこから逃げる。 でも、吸い寄せられるようまた奥に自分人を突き
入れる。
ああん……
はうっ……
甘い喘ぎは麗の声、ため息をつくのは僕の声。 どちらの声も遠くに聞こえる。 当然だろう、僕の意識は麗の中に集中していたのだから。
”凄い……麗”
”君も……ああ”
体を締め付けてくる熱い心地よさに、意識塗りつぶされていく。 腰が動いて止まらない。
”麗……”
”いっしょに……”
頷いたような気がした。 次の瞬間、僕は麗の中ではじけた。
あっ……
うっ……
熱いものが麗の中ではじけ、全ての感覚が快感に塗りつぶされる。
!……
意識が真っ白になり、天地がぐるりとひっくり返ったような感覚があった。
……
体から力が抜け、僕は麗の上で失神した。
……
………
…………
「ん……」
意識が戻ってくると、体がずっしりと重かった。 身を起こそうとすると、体の上に麗が乗っていた。 いつの間にか、態勢が入れ替わっていたようだ。
「重いよ……麗」
そう言って、麗を押し上げようとして胸に触れ、違和感に気がついた。
「……固い?」
麗の胸が骨ばっていて固い。 まるで男の胸だ。
「え、え?」
ボクは、無意識のうちに自分の上の麗の体を撫でていた。 細身だが、がっしりとした体つき。 ふくよかで優しい麗のそれとは全然違う。
「お、男!?」
驚きの声と共に、僕は全力で体の上の男(?)を突き放そうとした。 そして、もう一つの異変に気がつく。
「え……えー!!!?」
力が入らない。 腕が細くなっている。
「なに? なんだよこれ!?」
二の腕に触ると、細くて柔らかい。 到底自分の腕とは思えない。
「どうしたのさ……」
そう言ったのは、ボクの上に乗っている男(?)だった。 ボクはその男を睨みつけた。
「君は誰だ? ボクに何をした」
そう言った自分の声が、妙に高く聞こえる。 男(?)は大きく伸びをしてからボクを見た。 それから自分の体を確かめるようにあちこち見ている。
「え……へぇ……凄いや、一回で入れ替われるなんて」
「ボクの質問に答えろ。 君は誰だ? 麗はどこに行った?」
男(?)はボクに視線を戻し、黙って壁にかかった鏡を指さした。 つられてそちらを見ると、鏡の中に麗の顔があった。
「麗?」
鏡の中の麗の口が動いた。 ボクは自分の顔に触る。 鏡の中の麗が自分の顔に触る。
「……えーと」
ボクは、男(?)の顔をしげしげと見つめた。 それはボクの顔だった。
「……あの」
言いかけて、僕はもう一度失神した。
「落ち着いた?」
ボクの顔の男が紅茶を入れてくれ、ボクは呆然とそれを飲み干した。
「落ち着いてはいないよ……君は……麗なのか?」
男(?)が頷く。
「何が起こったんだ?」
ボクが言うと、ボクの顔の男……レイが答えた。
「入れ替わったんだよ、心、いや魂というべきかな」
「……冗談だよね……」
レイは首を横に振った。
「いいや」
それからレイは、信じられない様な事を僕に告げた。 彼女の一族には、ちょっと不思議な所があり、男女の交わりの際に、互いの魂が入れ替わってしまう
ことがあると言うのだ。
「魂の入れ替わりは、同族同士でなくて起こるけどね」
「それって、『ちょっと』で済む問題じゃないと思うけど……」
ボクは不機嫌な声で言った。
「そお? たいした問題じゃないじゃない」
「魂が入れ替わったんだよ!? これからどうするんだよ!?」
「もう一回交わればいいのさ」
こともなげに言うレイ。
「そうすれば、元通りだろ」
「……あ、そうか」
ボクは、一生麗の(女の)体でいるのかと思って絶望しかけたが、元の体に戻れると聞いて安堵した。
「そうか、もう一度交われば……え?」
ボクは、レイの魂が入ったボクの体をまじまじと見つめ、聞き返した。
「それってつまり……」
ボクは、彼女(彼?)と自分を交互に指差し、指を交差させた。 彼女(彼?)とが首を縦に振る。 ボクは真っ青になった。
「大丈夫だよ」
レイが言った。
「やさしくするから」
そう言う問題じゃない!! ボクの心の叫びは声にならなかった。
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