黒のミストレス

14:愛欲の泥沼


”?”龍之信は意識を取り戻した。

何か変だ、自分がはっきりしない。

目を開ける、よく分からない場所にいる、真っ暗ではないがピンク色の霞が漂い、壁も天井も見えない。

体の感覚が戻ってくる、裸だが、寒さは感じない、奇妙に心地よさを感じる…

”龍之信…”シンシア?…シンシア!

”どういうことだ?…ミストレスに呑まれたのではないのか?…”

”そうよ龍之信…ここがミストレス様の中…”シンシアの声…いや考えが伝わる。

龍之信は、やっとシンシアに気が付く。自分にピタリと寄り添い、離れようとしない。


”ここが?…悪魔の子宮?想像していたのと違う…もっとドロドロしたおぞましい所かと…”

”うふふ…ドロドロはあたっているわ…ほら…。

そういって、シンシアは龍之信の右手を自分の乳房にあてがう。

゛あん…゛甘い息をはくシンシア、そして…龍之信の右手がシンシアの乳房に呑み込まれていく…

”!”驚き、手を引こうとする龍之信、が、右手からシンシアの感じる甘い疼きと、シンシアの想いが伝わり手を止める。

”もう私たちに体はないの…魂だけ…だから溶け合う事もできる…互いを一つに感じる事も…”

シンシアの顔が龍之信の胸にすりより…すりすりしながらその中にもぐりこんでいく…

”シンシアは…それでいいのか…”

龍之信の左手がシンシアの腰をなでる…うちにシンシアの背中とくっつき溶け合い始める。

”私は…とてもうれしい…龍之信、ほんとうにあなたを感じる事ができる…互いの心がみえる…”

するりとシンシアと龍之信が離れ、龍之信を下にして。シンシアがまたがって来る。

性器の結合が、股間の癒着に変わっていく、快感は変わらない…相手の快感も伝わってくる…

只溶け合うだけでもいい。

”これでいいのか…これで?…”

疑問も浮かぶ、しかしシンシアもいる、確かに心地よい…ここに戻りたいといったシンシアの言葉は真実だった…


「うそはいっていなかったでしょう…居心地が良いと…」

”ミストレス…”

いつのまにか、ミストレスがそばに座っている。手を伸ばして、龍之信とシンシアをなでている。

”ここがあなたの?…”

「わたしの中…分かるでしょう…あなた方の魂は少しずつ私と溶け合い…最後は私になるの…あなたたちも…あはっ…」

龍之信は手を伸ばして、ミストレスの乳房を触りゆっくり愛撫する。

ミストレスは龍之信の手をさすりながらが笑っている…妖しい笑いではない…慈愛に満ちた笑みに見える…

”どのくらい…自分を保てるのです?…おうっ…” ”いやん…”

ミストレスの足が、龍之信とシンシアの股間の癒着部をくすぐり…溶け込んできた…


「シンシアでも100年…あなたほどの魂ならば500年は持つかしら…あふっ…」

龍之信の手がミストレスの胸と溶け合う。

”人の寿命より長い時間をこうやって過ごせるのか…あなたは…本当に悪魔なのか?…”

龍之信はミストレスを引き寄せる、3人の顔が接近する。

「知らない…あなた達がそう呼んでいるだけ…私達はそうやって生きている…人の魂を取り出し…こうやって溶け合い

自分の生きる力に変えながら…」

龍之信、ミストレス、シンシアの形が崩れていく…互いの境界があいまいになる…

快感も共有される…溶ける…舐める…舐められている…挿入する…入ってくる…熱くほとばしる…受け止める…

しているのか…されているのかもわからない…どこまでが自分なのか…それに意味があるのか…


やがて、龍之信は自分が戻ってくるのを感じる…溶け合ううちにミストレスのことが分かった…確かに彼女は魔性の

ものだ…

でも、彼女はそうする事でしか生きられない…自分は…よそう…もはや”自分”もミストレスの一部になりつつある…

もう、離れる事はできそうもない…ずっとここにいたい…


龍之信は、形を戻したミストレスをもう一度引き寄せ、その柔らかな胸に顔をうずめる…

舌をだして、乳房と乳首を責める。

ミストレスは腕を回して龍之信を抱きしめる。背中と腕が溶け合い、乳首を責められる快感を伝えてくる…

その快感が、龍之信を更なる責めに走らせる…止まらない…責めたい…責められたい…愛しい…溶け合いたい…

また形が崩れていく、ミストレスの胸に龍之信が溶け込んでいく、続いてシンシアもミストレスと溶け合う…


霞の向こうから…別の意識がやってくる…ネリスだ…メイド達もいる…

ダストンもどこかで誰かと溶け合っているのだろうか…


ネリスも加わり、ドロドロした肉欲の塊になっていく。


はたからみればおぞましい交わり、だが、一度それに囚われたものは、逃れられない。

ゆえにミストレスは呼ばれる。「悪魔」と。


とある小さな山村のはずれにその館は立っていた…

マジステール館、そこには地獄に通じる穴があると噂されていた…

地獄に落ちたものは帰ってくることができないという…


真実は違う、地獄に落ちたものは戻ることを望まなくなるのだ…あまりの心地よさに…

<終>


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