黒のミストレス

11:対決


龍之信は隠し階段から地下室に案内された。広い、玄関ホールと同じくらいある。

”鍾乳洞か何かを利用したのか…”

椅子に座っている見慣れない女がいる。

「貴様がミストレスか…」

「そう、私はミストレス…」

村正を構える龍之信。

だが、メイド達が、ネリスが、シンシアが立ちふさがる。

「卑怯な!」

「卑怯とは?…対決の方法は決めていないと思うが…」

「あ…しまった…」(どうする…女達を傷つけるわけにはいかん…元に戻せるかも知れんし。)


メイド達が構えているのはモップである、が笑い事ではない。

女の力でも、固い木の柄のモップで力任せに殴られれば只ではすまない。

それに、こちらは小刀、リーチに差がありすぎる。

まして相手は13人、多勢に無勢。(うーむ、浅はかであったか)


しかし「やり直し」とはいくまい。腹を決めてかかる事にする。

3人のメイドがじりじり前に出てくる、構えがなっていない。

(シロウトだな、妙に構えが似ている…それに3人だけとは?…ひょっとして…)

3人が一斉に殴りかかる、しかし狙いをつけた1人を押し倒し、走り抜けてシンシア達の方に走り寄る。

シンシア達が慌てて構えなおすが、ギクシャクしていて動きが悪い。

シンシアの鳩尾に当身をくらわし、ネリス、メイド達とあっという間に5人を昏倒させる。


「強いのね、龍之信…」

「ミストレス…魂を抜いたと言ったな…つまり操っているのは貴様1人…それに、貴様に武道の心得はあるまい…」

そう、同時に操る人数が多くなれば、制御が難しくなる。だから3人だけが前に出たのだが、かえってそれが龍之信に

弱点を見破らせてしまった。

まして、操るミストレスに武芸の心得がないとなれば、油断しなければまず負けないはずだ。


「こうなれば貴様に勝ち目はないぞ(村正が効けばだが…)皆を元に戻せ…」

「ほほ…戻りたくないそうですよ…」

「何!いいかげんなことを!…」

「皆、ここにいますよ…」

ミストレスは自分の下腹部をなでる。

「知っていますか、悪魔の子宮がどのようなものか…」

「知るものか!」

「ここは、とても心地良いのですよ…」

龍之信はミストレスを睨みつけている。

「男でも女でもここに触れるだけで悦楽の海に溺れ、魂が抜けてしまうの…そして…魂だけになればここに入って

蕩けずにはいられなくなるのよ…」

ミストレスは足を開く

龍之信の前に悪魔の女陰がさらされる。

”いらっしゃい”

「!」女陰がしゃべった?

”いらっしゃい…ここに…”

「な…なかなか芸達者じゃないか」ドクン、驚いた、動悸が止まらない。


”さあ…いらっしゃい…おいで…悦楽の泥沼に…”

手から力が抜け、刀が落ちる、足が前に出る。

”いらっしゃい…ここに…シンシアも待っているわ…”

「シンシア・が?」一歩一歩、重い足を引きずるように前に出る。

”いるわ…あなたを待っているわ…” ”ねえ…きて…龍之信様…”

「シンシア?」ミストレスの姿にシンシアが被さる。

”…きて…はやく…とてもここはいいの…すごくいいの…”

眼はシンシアに、シンシアの女陰にくぎ付けだ。

”…あなたもいらして…いいわよ…魂だけって…””さあ!…”

目の前にミストレスの顔があった。

ミストレスの瞳が輝いた。


「貴様!」

慌てて飛び退った…つもりだった。

ミストレスの方が速かった、押し倒され、馬乗りになられる。

肩をつかみ、押し返す。

足を曲げ、ミストレスを蹴り飛ばす。

ミストレスは椅子に蹴り戻された。


そのまま村正に飛びつく、ミストレスが後ろから組み付く。

フニャリ、ヌラリ…

「ぅあ…いい…ああ…」

いつの間にか、ミストレスの体は愛液で濡れている。

背中一面にヌラリとした感触、豊かな乳房を押し付けられ、忽ちミストレスの虜になっていく。

「龍之信…こっちを向いて…わたしを抱いて…虜にしてあげる…さあ…」

耳元でミストレスが熱く囁く、その声がネットリした液体となり、頭に染み込んでくるようだ。

愛液で濡れた手が、胸をまさぐる、力が抜けていく…

ミストレスにされるがままになりたい欲望が湧き起こる。

そのとき、倒れたシンシアの姿が目に入る。

「抱けぬ!」

右手の村正を、左脇から、背後のミストレスに突き込む。


ズブリ、柔らかい物に村正が突き刺さる。

急に呪縛が解ける。村正を引き抜き、ミストレスを突き飛ばす。

振り返ってミストレスと正対する、ミストレスの左半身は赤く染まっている、「赤い血…」

ミストレスの目から涙がこぼれる。「龍之信…」一言しゃべり、崩れ落ちる。

溶ける、溶けていく、ミストレスの体が透明な愛液に変わってどこかに流れていく。


「やった、のか?…」何となく後味が悪い。

そのとき、ミストレスが最後に立っていた場所に、赤や青い透き通った玉が幾つも落ちていることに気が付いた。

それを拾い集める。

「これは?…あ!」メイド達の視線が自分に集まっている、直感した、これが奪われた魂なのだと。

ミストレスに勝ったのだ。


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