黒のミストレス

5:別離


翌日になった。

ネリスまで行方不明となり、残った3人は大騒ぎになった。

依然として無表情なメイド達にルーイがくってかかり、シンシアがそれを止める。

龍之信はシンシアとメイド達をかばう格好になり、ルーイがますますいきり立つ。

冷静な龍之信に対してシンシアの好感が増す結果となり、ルーイの機嫌は最悪となった。


龍之信「とにかく、2人を探す事だ…」

ルーイ「どこを!どうやって!」

龍之信「うむ、居場所がわからないから探すのだが、屋敷内にいればメイドさん達にわかるだろう(知らない振りを

していなければだが)、だから屋敷の周りを探す事だ…」

ルーイ「屋敷の周りといっても深い森だぞ!何が起きたのかもわからんのにか!」

龍之信「そう遠くまで行ったとも思えん、例えば近くに使われていない古井戸か何があって落ちたとか…いずれにしても

1人では危なかろう、2人ずつ組んで探すのが基本だ…やはり村人の助けがいる」

ルーイ「…む…そうだな。で、誰が村人の助けを求めに行く?」

龍之信「私が行こう」

ルーイ「ふん…逃げ出すつもりか…」


龍之信はこう考えていた。

”何が起こったか分からないが、仮に襲撃者がいたとして、5人同時に襲うほどの力は無いのだろう。だから1人ずつ…”

”もはや3人しか残っていないから、メイド達が犯人の場合かなり危ない。村に行くのが最も安全なはずだ…”

”3人で村に…いやシンシアが承知すまい…”

”シンシアとルーイを村に…だめだ残るのが直接関係ない私では、やはりシンシアは承知すまい…”

”しかし、シンシア1人を村にやると途中で襲われた場合心もとない…ルーイでは気が回らない…とすると私が行くしか

ないか…”


しかし、ここで予想外の事が起きた。

メイド「私どもも一緒に参ります」2人のメイドが同行を申し出る。

龍之信は迷う、ミストレスとメイド達が第一の容疑者なのだから…しかし断る理由が見つからない。

龍之信は考える。

(ルーイも残る、やつも男の端くれ、メイド達が怪しくともいざとなれば何とかなるだろう…不安だが。)

もっとも、メイド以外の人間がいる可能性もあったが…いずれにしても助けを呼びに行く必要がある。

「うむ、ではお願いしよう…名はなんと?」「アリシアです」「バーバラと申します」

こうして、龍之信、アリシア、バーバラは村に助けを求めに向かい、その間にシンシア、ルーイ。残ったメイド達で屋敷内と、

その周りを探す事となった。


シンシア達は昼間で辺りを探し、昼食を取っていた。

そのとき、メイドの1人がシンシア、ルーイを呼びに来た。

「ミストレス様が2人の居場所について心当たりを思いついたそうです」

シンシア「そ、それはどこです」

「込み入った場所なので、直接お話したいとのことです」

シンシアとルーイは顔を見合わせる。

2人は龍之信ほどメイド達への不信感がなかった。

異国からきた龍之信と、使用人を使うことを当然と思っているシンシア、ルーイの差であった。


2人はメイドにミストレスの所に案内されていった…


【<<】【>>】


【黒のミストレス:目次】

【小説の部屋:トップ】