魔女の誘い

終章(2)


 ビルはメイド頭の案内で館にやって来た。

 「……そう言えば、霧が出ていないな。 今夜はお休みかい?」

 館から湧き出す霧は、集落の人々を淫らな『宴』に誘う。 ビルがここにいた間、霧は毎晩湧き出していたはずだった。 ビルの問に、メイド頭が答える。

 「今宵は満月です。 月の日は外から人を招くため、または出て行くものを送り出すため、『宴』は開かれません」

 「そうか」

 どうでもいいという感じでビルは流し、メイド頭に続いて館に入った。 薄暗い廊下を進み、『奥様』の寝室の扉の前に着いた。

 「『奥様』、お客様をお連れしました」

 「お入りなさい」

 メイド頭が扉を開け、一礼して中にビルを招き入れた。 ビルは一瞬立ち止まり、意を決して中に入った。

 
 「久しぶりです、ビル」

 「……ルウ、なのか?」

 寝室の中央、豪奢な寝台に座っていたのは、美しい女性だった。 薄い衣をまとい、長い金髪をマントの様に背中にたらしている。 彼女はメイド頭を下

がらせ、ビルに近くに来るように言った。

 「たまげたな……これも前の『奥様』がやったのか? 魔法か何かで」

 ルウは微かに頷いた。

 「私が望んだことでもありますが」

 「そうか……」

 ビルは、寝台の傍にあった椅子に腰かけ、ルウと向かい合った。

 「俺の事は知っているのか?」

 「貴方が森に入った時から感じていました。 森が私自身なのです」

 ビルは驚いた様子も見せず、ルウを見つめる。

 「俺はあれから都にでて、芸人として働いたよ。 好きな事をやれたんだし、悔いはない」

 ルウは黙ってうなずいた。

 「ただ、お前さんたちをここに残したことがどうもな。 置き去りにしてきたようで、ずっと引っかかっていたんだ」

 「ビル。 貴方は私達にも逃げる様に言ってくれました。 ここに残ったのは、私たちの意志です。 私が……ううん、ボクが『奥様』の後を継いだのも、

ボクの意思で決めた事だよ」

 ルウは、少年の口調に戻ってビルに応えた。 ビルが微笑する。

 「ありがとよ。 そう言ってもらえて、胸のつかえが降りた」

 ビルは立ち上がった。

 「知ってるかもしれないが、俺はもう長くない。 どこか、離れたところに行って行き倒れることにするよ。 今の内なら、外に出られるだろう」

 「ビル……」

 ルウは目を伏せ、ついと顔を上げた。 美しい瞳がビルの眼を射抜く。

 「ルウ?」

 ビルはルウから目を離せなくなった。 夢の中にいるように、現実感が失せていく。

 
 ”ルウ? これは”

 ”私は『奥様』よ……ビル”

 ルウ、いや『奥様』がベッドから降りる。 するりと衣が脱げ落ち、美の化身の様な肢体が露になる。

 ”おい、おれは……”

 『奥様』が両手を広げた。

 ”どこかで朽ちるならば、私に抱かれても同じでしょう?”

 ”ル、ルウ……”

 ”私は『奥様』……そして……黒き森の魔女……”

 ”……”

 ”おいでなさい、ビル……そして、私に全てを委ねて……”

 ルウ、いや『奥様』の口から紡がれる言葉には抗いがたい響きがあった。 ビルは自分から衣服を脱ぎ、『奥様』へ一歩一歩と近づいていく。

 ”ル……”

 ビルの唇を、『奥様』の赤い唇が塞ぎ、甘い吐息がビルの口から肺腑へと流れ込む。 ビルの体から力が抜け、崩れ落ちる様に『奥様』の体へと寄り

かかった。

 ”ビル……”

 『奥様』はビルをベッドに横たえると、その体に跨った。

 ”さぁ……来て……”

 力を失って久しかったはずのビル自身が、力溢れる若者の様に固くそそり立った。 『奥様』は、その秘所の入り口でビルの先端をなぞる様に動かす。

 ”ううっ……”

 柔らかい女の襞の感触に、ビル自身に電撃のような快感が走り、ビルが背を反らして悶える。

 ”まだよ……”

 『奥様』は、ゆっくりとビルに抱き着いた。 ビルの胸に柔らかな乳房が重なり、乳首同士が密着する。 そのまま『奥様』はビルの体に自分の体を擦り

付けるように動く。

 ”おい……”

 ”ビル、私は魔女。 私は女、そして貴方は男……何もかも忘れて、私の中にいらっしゃい……さぁ……”

 ビルの体が反応する。 腕に力が入り『奥様』を抱きしめた。 豊満な女の肉体に、やせ細ったビルの体がめり込む。

 ”入るぜ……”

 ビルは腰を動かした。 固くなった先端が、『奥様』の秘所に浅く入る。 その途端、熱い蜜が秘所から迸り、ビルのモノをズブズブと呑み込んでしまう。

 ”ああ……”

 ”うう……”

 『奥様』の中は、熱く蕩けていた。 そこにビルの肉棒が付きこまれ、かき回す。 熱い蜜と波打つ肉襞の混合物を、ビルの肉棒が強引にかき混ぜる。

 ”こ、これが……魔女の……と、蕩けそうだ……”

 ”そうよ……魔女のココにはいったら、男でも女でも、極上の快楽の中に蕩け、全てを捧げててしまう……”

 ”判る……ああ……”

 歓喜の喘ぎを漏らしながら、ビルは憑かれたように『奥様』を求める。 彼女の言った通り、『奥様』の秘所のなかで、ビル自身が蕩けていく。

 ”さぁ……おいで……”

 ”いくよ……”

 ビルは『奥様』の秘所に腰を打ち付ける。 『奥様』の秘所は、柔らかくビルを受け止め、中へ中へと彼を誘う。 ビルは自分の体が次第に『奥様』の中へ、

潜り込んでいくのを感じる。

 ”ああ……暖かくて……柔らかくて……ヌルヌルだ……”

 グチャグチャと音を立て、ビルに絡みついてくる肉襞の感触。 ビルは恍惚となり、その快感に身をゆだねる。

 ”ビル……”

 ”いい……いいよ……”

 いつの間にか、ビルは全身が肉襞に包まれているのに気がついた。 もう、『奥様』の中に呑み込まれてしまったのだろう。 暖かく滑る襞が、彼を包み

込み、全身を絶え間なく愛撫してくる。

 ”はぁ……ああ……”

 体に深く染み込んでくる快感に、体の芯が柔らかくほぐれていく。

 ”ああ……”

 ”さぁ……蕩けていいのよ……”

 『奥様』の声が聞こえるのと同時に、ビルの体が快感に蕩けていく。

 ”ああ……あ……”

 微かな声と共に、ビルの体が溶け切る。

 ”ビル……”

 『奥様』は呟いて、気だるげに体を起こす。 ベッドの上には、もう『奥様』以外の誰もいない。

 
 キィ……

 扉が開き、メイド頭とメイドが二人寝室に入って来た。

 「『奥様』、湯殿の支度ができております」

 「ありがとう。 すぐ行くわ」

 『奥様』は薄い衣を身にまとい、メイド頭の後をついて部屋を出た。 残った二人のメイドは、ビルの衣服を丁寧に拾い集めて部屋を出た。
 
 ああ……
 
 誰もいなくなった寝室に、ビルの声だけが残った……
    
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