魔女の誘い

第ニ章(7)


 ルウが男性の証を失ってからから7日ほど過ぎた。

 体つきは丸みを帯びてきているが、服を脱がない限り女に見られることはなかった。 それでも、寝食を共にしているダニーは、ルウの変化に気がついた。

 「雰囲気が変わってきたな、ルウ」

 無口なダニーがそう言うぐらいだから、他の人達も気がついているのだろうとルウは思った。

 「うん、特に秘密にすることじゃないけど……」

 ルウはダニーに『奥様』との秘め事を明かした。

 「じゃぁ、ルウは女になるのか?」

 遠慮のない言葉に、ルウは頷いた。

 「もう男じゃないんだ」

 ダニーが目を丸くする。

 「そうなのか……ちよっとさみしいな」

 そう言ってダニーは口を閉じた。 『奥様』がルウを選んだのだから、ダニーは受け入れるしかなかったが、なんだか残念そうだった。

 
 まもなくルウは、メイドの一人として館に部屋を与えられた。 行儀作法を覚えるためだったが、まだ少年の体つきのルウには、メイド服が似合っている

とはいいがたかった。

 「似合っているわ」

 メイド長がそう言ったが、背後で他のメイド達が笑いをこらえるのに苦労していた。

 それからは、他のメイド達に館での仕事を教わることになった。 もちろん、ルウが『奥様』の後を継ぐことは、皆が承知していた。

 「ひょっとして『奥様』もボクみたいに、メイドをしていたことがあったのですか?」

 ルウがメイド長に尋ねると、メイド長は首をかしげた。

 「さぁどうかしら。 私が館に入った時には、もう今の『奥様』でしたから」

 
 それから、ルウは昼間はメイドの修行をし、夜は『奥様』の元で女の修行をすることになった。

 ”いらっしゃいルウ……さぁ、体を見せて”

 ベッドの上で誘う奥様の前で、ルウはメイド服をするりと脱ぐ。

 ”女っぽくなってきたわ”

 ”そうですか? まだ服に違和感があるんですけど”

 ”そう? どこが?”

 ”胸周りが余って、腰回りは逆にきついんです”

 その答えに『奥様』は笑う。

 ”まだまだかしらね。 みせて”

 『奥様』はルウをベッドにあげ、足を開かせた。 一本の溝が走っているところは女の子だが、体つきがまだ少年のようなので、倒錯的な体になっている。

 ”あら、これはこれで素敵。 このまま女の体にするのは、もったいない気がしてきたわ”

 ”からかわないでください”

 真っ赤になったルウに『奥様』は笑いかけ、彼の頤を持ち上げて唇を奪った。

 ”んむ……”

 柔らかな唇の間から、舌が滑り込んできた。 ルウの体から力が抜けていく。

 ”はぁ……”

 ”ふふ……犯されれるみたいでしょう?”

 妖艶な笑みを浮かべた『奥様』は、ぐったりとしたルウの股間を弄る。

 ”んぁ!”

 ビクリと体を震わせるルウ。 腰が『奥様』の手から逃げる様に跳ねた。

 ”敏感なのね。 素敵よ”

 『奥様』の手は、ルウの股間に吸い付いて離れず、白い指が細い筋を何度も撫でる。

 ”あっ……ああっ……”

 ビクビクとルウの腰が震え、溝の間から涙の様に滴がたらりと流れ、『奥様』の指を濡らす。

 ”ほら……貴方の『女』が目覚めていく……”

 ヒクヒクと震える溝の間から、透明な滴が湧き出し、少しずつ溝が口を開けていく。

 ”ほら……喜んでいる……”

 『奥様』の言う通り、ルウの溝は『奥様』の指を挟だり開いたりし、おねだりをしているように見えた。 ルウ自身は背筋を反らせ、異次元の快楽に

身もだえしていた。

 ”ああっ……なに……これ……”

 ”ふふ……女の快感よ……判るでしょう……男のあなたが食べられていくのが……”

 腰からせり上がってくる、ねっとりとした熱い快感が、背筋を伝ってせり上がった来る。 それを受け入れてしまえば、自分が自分でなくなる。 そんな

感じをルウは覚えた。 それは恐ろしい事のようでもあったが、同時に食べられてみたいという欲求も湧き上がった来る。

 ”僕をボクが……食べる?”

 ”そう……男のルウを女のルウが……食べていく……ほら……”

 『奥様』の指が、溝の中にゆっくりと潜り込む。

 ”かっ……”

 熱い衝撃にルウの頭が真っ白になり、思考が失われる。 その一方で、ルウの『女の神秘』は着実に花開いていった。

 ”ここは正直ね……”

 『奥様』の指使いは、あくまで優しく、着実にルウの女を目覚めさせていく。 そして目覚めた女の快感に、ルウは支配されていく。

 ”いい……ああ……あはっ……”

 ルウの声が上ずり、高くなっていく。 自分の喉から出た声のはずなのに、ルウは他人の声を聴いているような気がしていた。

 ”感じるままにうごいてごらんなさい”

 ”はい……”

 ルウの手がぎくしゃくと動き、『奥様』が愛撫している箇所へと割り込む。 感じる場所を探り当てた指先が、より深い快楽を求めて貪欲に蠢く。

 ”ひいっ……いい……”

 手も、女の神秘も、ルウとは別の生き物のようだ。 ルウは自分がその付属物になってしまったように感じた。

 ”素敵ね……貴方はだんだん女になっていくわ……”

 見てわかるほど、体が変わっているわけではない。 しかし、ルウの放つ雰囲気が『女』のそれに代わっていく。 『女』の匂いを放つ少年の体、それは

この世のモノとも思えない、淫靡な生き物だった。

 ”凄い……ああ……”

 『奥様』は、そっと自分のモノに触れる。 そこからは、熱い蜜がとめどもなく湧き出ている。 ルウにあてられて、『奥様』の体も熱い情熱の塊へと変わり

つつあった。

 ”ルウ……”

 ベッドの上で、己を雌に変えつつ少年の形をした獣に、『奥様』は己の体を重ねた。 二つの体は、互いを貪る快楽の獣へと変わる。

 ”『奥様』……”

 ”ルウ……”

 濃密な交わりの情熱は、周を漂う霧にも伝わり、館の隅々へと流れていった。

 ”ああ……”

 ”凄い……”

 館に集まっていた人々は、いつもにもまして情熱的になり、理性を手放して淫靡な獣へと変わる。 それは、館の新しい主を迎えるための、宴の始まりで

あった。
   
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