魔女の誘い

第ニ章(4)


 『奥様』に魂を吸いとられたルウは、『奥様』の目を通して部屋の中を見ていた。 が、見えるのは部屋の中だけではなかった。 館の中の他の部屋、館の

外、集落のあちこち、周りの森までを見ることが出来た。

 ”見えるだけじゃない……感じる……”

 ルウは、館の中にいる人達を感じることが出来た。 微かに、羽が触れる程度の感触だが、皆感じることが出来た、 そして彼らは『奥様』の、いやルウの

中にいるかのように感じられる。

 ”……ひょっとして……この集落は『奥様』の中にあるのですか?”

 ”聡い子ね、ルウ。 そう、この集落と周りの森が、私自身。 貴方たちは私の中で暮らしているの”

 ”すると、ボクは『奥様』の中で『奥様』と交わり、さらにその中に?…… こんがらかってきました”

 ”この体は私の奥の奥、最も密にして敏感な部分なのよ……”

 そう言った『奥様』は、抱きかかえているルウの体を抱きしめ、体をゆすった。 『奥様』の胎内に収まっているルウのモノが、その奥を叩いた。

 ”ああん……”

 甘い声を上げる『奥様』。 そしてルウも……

 ”やぁん……い、今の何です……体の奥に……なにか……こう……”

 ”今のが女の快感。 貴方は私の目を通して外を見て、体を通して周り感じられたでしょう? 当然、私が気持ちよくなれば、貴方も……はぁ……”

 『奥様』はルウの体をぐいと引き寄せ、そのモノを自分の奥底を迎え入れる。 もっとも、ルウ当人の魂は『奥様』の中にあるので、ルウの体は人型の張り

形と大差ないのだが。

 ”やん……凄い……『奥様』の体って感じやすい……溶けちゃいそう……”

 ”ふふ……実際その通りよ。 私に体と魂を捧げた者たちは、少しの間は別の魂として存在しているわ。 でも、私の快感を味わったら、あっという間に蕩けて

私に同化してしまう……でもルウ、あなたはまだ自分を保っている。 やはりあなたは私の後を継げるようね……”

 ルウはうっとりと『奥様』の快感に浸っていた。 まだ自分を保っていると『奥様』は褒めてくれたが、深く甘い快楽の波に飲み込まれ、自分がどこかに行って

しまいそうだ。

 ”いい気持……このまま蕩けてしまいそう……”

 ”すこしだけ蕩けて、私と混じってるわよ。 ルウ、そろそろ元の体に戻してあげる”

 『奥様』は、抱きしめていたルウの頤を指で持ち上げ、自分の乳首へ彼の唇を導いた。 ルウの体は人形のようにぎくしゃくと動き、豊かな『奥様』の果実を

チュウチュウと吸い始めた。

 ”いやぁん……おっぱいがくすぐったい……”

 ”うふ、吸っているのは貴女の体なのにね……あは……ほんとにくすぐっくて……暖かくなってきた……”

 ふわふわと乳房をゆすってよがる『奥様』とルウ。 二人は、乳房がぽうっと暖かく気持ちよくなってくるのを感じた。

 ”あ……あ……いっちゃう……”

 ”ルウ……”

 『奥様』は、きゅっとルウの頭を抱きしめた。 暖かい母乳が乳房から迸り、ルウの体へと注がれる。

 ”あ……あああ……”

 ルウは、熱い快感に包まれ、次の瞬間、意識が心地よい暗黒に落ちていくのを感じた。

 ”気持ちいい……”


 「……ん」

 ルウは瞬きをした。 優しい温もりに体が包まれている。 そっと顔を上げると『奥様』の微笑みが目に入った。

 「『奥様』……」

 「気分はどう?」

 「爽快です……あれ?」

 ルウは違和感を感じ、首をかしげる。 すぐに違和感の正体に気がついた。

 「『宴』の間は、どこか夢を見ているような感じだったんですけど……なんだか意識がはっきりしてるような」

 「それなら大丈夫ね」

 『奥様』はそう言って、ルウと口づけを交わす。 ルウもごく自然に『奥様』と唇を重ねていた。

 「なぜ意識がはっきりしているか、判る?」

 ルウは小首をかしげた。 当人は気がついていないが、仕草が女っぽくなっている。

 「『奥様』と魂が少し混じったから? 『奥様』と同じになり始めている……」

 「正解」

 『奥様』ルウの頬に唇を寄せ、ぺろりと舐めた。

 「ひゃっ」

 ビクリと体を震わせるルウ。

 「ふふっ、敏感なのね」

 『奥様』は艶っぽく笑うと、ルウに足を広げる様に命じた。 さっきまで『奥様』の中にあったルウのモノがさらけ出される。

 「『奥様』?」

 「まずは、男の感じるところを教えてあげる」

 『奥様』は、ルウの股間に手を添え、モノを咥えこんで舌を這わせる。

 「あはっ……」

 ルウのモノは、初めての様に敏感に反応する。 ビクリと大きく震え、『奥様』の口から逃げ出そうとする。

 「まだまだ元気ね。 頼もしいわ」

 『奥様』は亀頭に舌を絡め、鈴口を舌先でつついて刺激した。 鮮やかな快楽の波が、少年のモノに固さを取り戻させる。

 「そこがも感じるんですね……ふっ……」

 喘ぎ混じりにルウが尋ね、『奥様』は軽く頭を縦に動かし、肯定の意を示す。

 「んー……なんだか……熱いような……冷たいような……」

 キュッと股間が縮み上がり、意のままにならない熱が込み上がってくる。 一瞬戸惑った後、ルウはそれが快感である事を認識する。

 「『奥様』気持ちいいのが……上がってきます……」

 ”そう……こうされると、男は気持ちよさに逆らえなくなるのよ……”

 『奥様』の囁きがルウの中に響く。 ルウの魂に交じった『奥様』の魂がの囁きだろう。

 「はい……抑えきれない……」

 ”いいのよ……我慢せずに……私の中に……”

 「はい」

 ルウは素直に自分を解き放つ。 男の快感がモノを支配し、続けてルウの体が快感に震え、白い情熱の証が『奥様』の唇の向こうへと消えていく。

 「いい……いい……いくぅ……」

 可愛らしい少年の喘ぎ声を漏らしつつ、ルウは快感に身を委ねた。 一方で彼の魂は、奇妙に冷めた様子で自分の体に加わる快感を分析していた。

 ”股間が熱いような、冷たいような変な感じになって、次に体の芯が気持ちよくなってくるんだ……面白いなぁ……”

 ”お帰りなさい、ルウ”

 『奥様』に囁かれ、ルウはまた『奥様』に魂を預けてしまったことに気がついた。

 ”すみません。 お口を汚してしまいました”

 ”気にしなくていいのよ。 人としての歓びの証よ。 穢れたモノではないわ”

 ”はい『奥様』”

 魂が抜けてしまったルウの体を、『奥様』は優しく抱きしめ、撫でたり、舐めたりしている。 体に加えられる愛撫の感覚が、ルウの魂にも伝わってくる。

 ”それ、いいです。 すごく安らかで、心地よい気持ちになります”

 ”激しい快感の後は、こうやって互いを確かめ合うの”

 ”はい”

 ”それにね、この時優しい言葉を囁かれると、とっても心に響くのよ”

 ”覚えておきます”

 それは不思議な感覚だった。 ルウの少年の体は『奥様』に丁寧に愛撫され、快楽に翻弄されている。 それでいて、彼の魂は『奥様』の中にいて、冷静に

男の体を快楽に溺れさせる技術を学んでいるのだ。

 ”……ん”

 ルウは、魂に纏わりつき『奥様』の気配を感じた。 甘い蜜が滴りおち、魂をゆっくりとくるんでくるような感じだ。

 ”『奥様』……”

 ”ふふ……もう少し………混ざりましょう?”

 ルウの魂に、蜜の様な『奥様』の魂が触れる。 肉の殻を持たない魂の交わりは、互いに溶けあい、境界が失われていく様な感じがする。

 ”んふ……”

 ”やん……奪われちゃいそう……”

 自分がスライムの様な生き物だったら、異性との交わりはこんな感じになるのだろうか。、ルウはそう思った。

 ”んは……ねぇ……もっと……まじって……”

 ”あんまり欲張っちゃだめよルウ……じっくり……自分を失わない様に……ね?”

 甘い液体が染み込んでくるような快感の中で、ルウは次第に『奥様』の魂の色に染め上げられていく。

 ”いいの……これ……”

 ルウの肉体が微かな喘ぎを漏らして『奥様』の中で果て、力を失った肉体にルウの魂が戻る。

 「よく頑張ったわルウ……これから少しずつ、貴方を変えてあげる」

 『奥様』の呟きを遠くに聞きながら、ルウの意識は心地よい暗黒の中に沈んでいった。
  
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