魔女の誘い

第一章(8)


 ”座って”

 年上の女の子が、ルウとダニーを床に座るように促した。 二人はしゃがみ込んで、膝を床につけた。

 ”触りっこしようよ”

 別の女の子がルウの膝に座り、軽く抱きつき、ゆっくりと体をこすり合わせてきた。

 ”う、うん”

 生返事をして、ルウも彼女の体に手を回した。 横目でダニーの様子を見ると、彼も別の女の子に抱きつかれている。

 ”んふぅ……”

 女の子がルウの顔に息を吹きかける。 女の子特有の匂いに戸惑い、咳をする。

 ”あれ? 寒いの?”

 ”いや……こんな遊び、慣れてないの……”

 二人は昨晩も、ここで子供たちと戯れた。 しかし、昨夜は服を着たままふざけ合ったような感じだった。

 ”そう? いや?”

 そう言って女の子は、ルウの頭を薄い胸に抱いた。 わずかに膨らんだ冷ややかな肌が、ルウの視界を塞ぐ。

 ”ん……いやじゃない……”

 普通だったら、恥ずかしくて顔も上げられないはずだ。 しかし霧にまかれた辺りから、夢を見ているように現実感が乏しくなり、裸で女の子と触れ合って

いても、恥ずかしいとか、怖いとか言う感情が湧いてこない。

 ”こうしていると……落ち着くみたい……”

 互いの温もりを感じ、心臓の鼓動を聞いていると、安らかな気持ちになってくる。 ルウは、女の子の胸に顔を埋め、息を吸って女の子の匂い、肺一杯に

吸い込んだ。

 ”んー……”

 体の隅々まで、女の子の匂いが沁みとおっていく様な気がする。

 ”ふふ……”

 ”あふ……”

 あちこちで、子供たちが互いの体をすり合わせる気配がする。 ルウは静かに目を閉じ、女の子の背中を優しく撫でた。

 
 一方、ビル達は奥の間で『大人の遊び』をしていた。

 ”ああ……”

 ”ふぅ……”

 あちこちで男女が絡み合い、奥の間は密やかな喘ぎに満ちていた。

 ”ねぇ……なめ合いっこしましょう”

 ビルの相手をしてくれているのは、黒髪の若いメイドだった。 彼女はビルを床に押し倒し、彼の顔に跨ってきた。

 ”……う……”

 ビル自身に、熱い舌が絡みつく感触。 そして彼の眼前には、淫らな香りを放つ肉の花が迫り、彼を誘う。

 ”んむ……”

 ビルはメイドの秘所を咥え、中に舌を突き入れるようにした。 ヌルヌルした肉襞が、舌に絡みつくようだ。

 ”ああん……あむぅ……”

 メイドが喘ぎ、彼自身にお返しをしてくれる。 メイドの喘ぎが直に伝わり、甘酸っぱい快感が腰を痺れさせる。

 ”うう……たまらない……”

 メイドの舌は、たまらなく淫らだった。 腰がヒクヒクと蠢き、暴発しそうになる。

 ”んむ?……”

 メイドの動きが止まった。 ビルは彼女の腰を持ち上げ、自分の上からどかす。

 ”いっちまいそうだ……いいかい?”

 ”ええ”

 メイドは床に横たわり、手を広げてビルを誘った。 ビルは、メイドの秘所に自分自身を宛がい、ゆっくりと中に入った。

 ”あ……”

 ”う……”

 熱い蜜が溢れる泉の中に、ビル自身が入っていった。 中の肉襞が絡みつき、ヌメヌメとした感触で彼を翻弄する。

 ”うぁぁ……”

 ”熱い……もっと奥へ……”

 メイドが腰をゆすると、彼自身が奥へと吸い込まれた。 ザラリとした感触が先端を取り巻き、熱い精をねだる。

 ”い……いく……”

 ”きて……”

 ビルが熱い快感に身を委ねると、彼自身がメイドの中でビクビクと震え、熱い精をメイドの中に放った。 同時にメイドは喘ぎ声をあげ、彼にしがみついて

きた。 メイドの豊かな胸が、ビルの胸の上で柔らかく形を変える。

 ”ああっ、ああっ、あああああ……”

 ”ううっ……”

 二人は身を固くし、絶頂の快感に身を委ねた。 やがて歓喜の時が過ぎ、二人は床の上に重なり合った。

 
 ……ああ

 ……奥様……

 ”ん……”

 ビルはゆっくりと顔を上げた。 部屋の奥で、『奥様』が男と女、同時に二人と抱き合い、ゆっくりと動いている。 しなやかかな動きを見せる『奥様』は、

淫靡で美しかった。

 ”『奥様』の相手をしているのは?”

 ”集落のエドとダリアの夫婦よ”

 メイドの答えを聞き流しつつ、ビルは『奥様』をじっと見つめる。

 (なにか気をつけないと……なんだっけ……)

 頭の中で『気をつけろ』という声がするが、夢の中にいるようで頭が回らない。 ビルは意識をはっきりさせようと、頭を強く振った。

 ”く……そうだ、『奥様』は今日はあの二人を?”

 ビルはメイドに尋ねた。

 ”え? ああ、『奥様』二人を『召される』かと尋ねているのね? 『召される』のはそんなにいつもではないわ。 年に数回よ” メイドの答えにビルは頷いた。 

しかし、どうしても頭が回らない。 今の恐ろしい答えにも、恐怖心が湧いてこないのだ。

 ”すると……いまは、何を?”

 ”私たちと同じよ。 体を重ねて、愛し合う。 ああやって心を通わせ会うのよ”

 ”ふーん……心をか……”

 ”ええ、『奥様』と体を重ねと、心がとっても楽になるの。 怖いとか、苦しいとか、感じなくなるのよ”

 ”へぇ……ん?……”

 ビルは首をかしげた。 ひどく大事なことを聞いたような気がするのだが、それが何かわからない。

 ”貴方はまだ『奥様』と愛し合ったことはないでしょう? お相手をしてもらったら?”

 ”『奥様』と?”

 メイドに言われ、ビルは『奥様』を見つめた。 しなやかに動く女体は魅力的だが、同時に近寄りがたいモノを感じていた。 しかし、じっと見ている手、次第に

『奥様』への欲求が高まり、抑えきれなくなってきた。

 ”そうだな……『奥様』と……”

 ”したい? じゃあ……”

 メイドが身を起こし、『奥様』に声をかけようとした。 その時、奥の間の向こうの方で誰かが立ち上がり、『奥様』に歩み寄っていくのが見えた。

 ”アラン……”

 ”あら、先を越されたわね……”

 残念そうに言うメイドに、ビルは頷き返した。

 (なんだろう……なにかまずい事になっているような気がする……)

 ビルは心の中でざわめくものを感じ、それが何なのか考えようとした。

 ”ねぇ……もう一回……”

 ”え? あ、ああ……”

 しかし、メイドが彼に続きをせがむと、ついにそれを思い出すことはなかった。

 
 ”『奥様』……”

 アランが陶然とした顔で話しかけると、『奥様』は嫣然と微笑み、彼に手を差し伸べた。

 ”おいでなさい……私の中に……悩みも、苦しみも、迷いも……全て私の中に吐き出しなさい……”

 しなやかな女体がアランに絡みつき、二人はベッドの上に倒れ込んだ。

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