魔女の誘い

第一章(6)


 ディックの体に、『奥様』のしなやかな肢体が絡みつく。 ディックは、柔らかな女体に埋まっていく様な錯覚を覚えた。

 ”『奥様』……ああ『奥様』”

 香しい女の匂いに陶然となりながら、ディックは腰を動かし、『奥様』を突き上げた。

 ”ああっ……もっと……もっと……”

 『奥様』に求められるまま、ディックはその秘所を、己のモノで攻め立てる。 柔らかな秘所は際限なくディックを迎え入れ、ヌメヌメした襞で彼を愛撫する。

 ”ぁぁ……蕩けそうです……ああっ……”

 ”ええ蕩けさせてあげる……でも……いまは……”

 『奥様』が言うと同時に、ディックの中に熱いものがせり上がって来た。 こらえきれず、達してしまうディック。

 ”『奥様』っ、もうだめです”

 ”いいわ、きて”

 お許しが出ると同時に、ディックは己自信を解き放った。

 ドクッ……ドクッ、ドクッ、ドクッ……

 ディック自身が激しく脈打ち、熱いモノを吐き出す。

 ”あ……あ……”

 果てしなく続く絶頂感に、頭の中が真っ白になる。 硬直するディックを『奥様』は抱きしめ、優しく愛撫する。

 ”もっと……もっとおいで……”

 ”あぁ……”

 ディックは、まるで『奥様』の中に吸い込まれていく様な、不思議な感覚に包まれた。 優しい温もりに包まれて、安らかなな気分になっていく。

 ”はぁ……あ……”

 『奥様』に抱きしめられ、ディックは身を震わせていた……いつまでも……

 
 ”……あれ?”

 ルウは不思議そうにあたりを見回す。

 ”どうした?”

 大きな寝台の上で、ルウの隣に寝そべっていたダニーが尋ねた。

 ”ディックの声がして様な気がしたんだ”

 ”僕には聞こえなかった” ダニーが言った。

 ”そう……”

 ルウは納得できない様な表情をしている。 その彼の背に、一人の少女がそっと身を摺り寄せた。

 ”ねぇ……もっと……”

 ルウは振り返った。 村の住人らしい女の子が上気した顔で彼を誘っている。

 ”うん……”

 頷いてルウはあたりを見回した。 10人くらいのの男の子と女の子が、裸で戯れている。 館に入った後、ルウとダニーは若いメイドに連れられ、大きな

湯殿で体を洗ったあと、この部屋に案内されたのだ。 中にいたのは村の住人の子ども達らしく、そろそろ男や女を意識しだす年齢だった。

 ”抱きしめて……”

 ”う、うん……”

 丸みを帯びた体は、ほころびかけた蕾のようで、抱きしめるとドキドキと脈打っている。 こうやって裸で抱き合い、じゃれ合っていたのだ。

 ”どうしてこんなことするの?”

 ルウが尋ねると、少女が笑った。

 ”こうやっていると、安心しない?”

 ”うん……”

 互いに抱き合い、じっとしているか。 もぞもぞと動いて体をこすり合わせる。 奇妙な遊びだとルウは思った。 でも、少女の言う通り、こうしていると安心

する。

 ”大人はもっとすごい遊びをするんだって。”

 ”へぇ……”

 相槌を打ちながら、ルウはあくびをした。

 ”もう眠いの?”

 クスクスと女の子が笑った。

 ”うん。 一日中、駆けまわっていたから。 疲れちゃった”

 ”じゃあ、抱きあって眠ろうよ”

 そう言って、女の子はルウを抱きしめ、二人で毛布をかぶった。

 ”裸のままでいいの?”

 ”いや?”

 ”ん……”

 ちょっと考えたルウだったが、いままで裸で女の子と抱き合って寝たことはなかった。 毛布の中で女の子の肌と触れ合っているのは、いい気分だった。

 ”いやじゃない”

 ”じゃ、このままで。 おやすみ”

 ”おやすみ”

 ルウは目を閉じる。 なんとなく女の子の息の数を数えていたが、すぐに意識が安らかな闇の中に落ちていった。

 
 チチチ……

 ビルは鳥の声で目を覚ました。 目を開けると、木漏れ日が目に飛び込んできた。

 「うっ……朝か……」

 体を起こすと、体にだるい疲れを感じた。

 「……なんか妙な夢を見た様な……」

 頭を振り、辺りを見回す。 昨晩横になった時と同じ位置に仲間が寝おり、もぞもぞ動いたり起き始めていた。

 「気のせいかな」

 
 全員が起きて、手持ちの食料で朝食を取る。

 「ビル、食料は精々三日分しかないな」

 アランに言われ、ビルは不機嫌な顔で頷いた。

 「集落で食料を分けてもらうか」 ディックが言った。

 「正気か? いや、すまん……しかしなぁ、おれたちはここから逃げ出さなきゃならんのだぞ」

 ビルの言葉にアランは頷いたが、ディックはちょっと首を傾げた。

 「……逃げだす……と言うより、ここを去るという事だよな」

 ディックの言葉に、ビルは眉間にしわを寄せた。

 「どっちでもいいけどな。 あの『館』の主は、集落の人を飼っているんだぞ! 自分が『食う』ために!」

 「まぁ、あれを『食う』というのならな……」

 ディックの言葉に頷きかけ、ビルははっと顔を上げた。

 「おい……ひょっとして、お前らも見たのか!『夢』を!」

 ビルの言葉に、ルウとダニーまでが目を見張った。 一同は口々に、自分の見た夢の内容を語った。 細部に違いはあれど、皆の見たの館に行って、

そこで『宴』に参加したという点で一致していた。

 「あれは……現実だったのか?」 ビルが言った。

 「夢だとばかり……」 アランが言う。

 「夢……そうだな……夢の様だった……」

 ディックが呟くように言い、ビルとアランははっと顔を上げた。 夢が本当にあったのだとすれば、ディックは『奥様』と交わったのだ。

 「おい、ディック? 大丈夫か」

 「ん? ああ、大丈夫だ。 おれはここにいるじゃないか」

 「そうか……そうだよな」

 ビルはため息をついた。

 「しかし、こいつはやばいな……寝てしまうと、館に誘い込まれてしまうとは」

 ビルの意見にアランが賛同する。

 「ああ……昨夜は無事だったようだが、次は『奥様』に喰われてしまうかもしれん。 あの男、オイグルだったか」

 「そいつは大丈夫だろう」

 ディックの言葉に、一同が彼を見る。

 「『奥様』は、同意なしに人を『呑み込む』んだりしない」

 「なぜそう言える?」 ビルが不審げに尋ねた。

 「なぜだって? 判るだろう『奥様』はそんな方じゃない。 それに慈悲深い方だ」

 不思議そうに尋ね返すディックに、ビルとアランが愕然とする。

 「お前一体何を……」

 「まさか……」

 ビルとアランが青ざめた顔でディックを見る。 彼の顔には、集落の人間が見せる、あの安らかな笑みが浮かんでいた。

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