ずぶり

其の二十 終劇


 『ずぶり』は艶っぽい笑みを浮かべ、少年になった頭の、そ股間をすうっと撫でた。

 「あっ……」

 年にあった可愛い男根、いや、お○○○○と呼ぶのがぴったりのそれがそり返る。

 ピクッ……ピクッ……

 筋にそって『ずぶり』の指の感触がくっきりと残り、後を引く。

 思わず目を閉じ、高ぶりを抑えようとする少年。

 『ずぶり』は、少年のおとがいを軽く持ち上げ、唇をよせた。

 「ひやぅ」

 珍妙な声を上げ、あとずさる少年を見て『ずぶり』が笑う。

 赤くなって声を上げかける少年に、『ずぶり』が優しく手を広げる。

 ”さぁ……おいで……”

 白い裸身が濡れたように少年を招く。

 「あ……」

 少年は、吸い込まれるように『ずぶり』の腕の中に収まった。


 「はぁ……はぁ……」

 ふかふかの乳房が頭を挟み、滑る腕が背中を這い回る。 それだけで天にも昇る心地に……いや、そんな安らかなものではない。

 女の肌は柔らかく粘りつき、うねって彼を呑み込もうとする。 赤い舌が、届く限りのところを飴の様に嘗め回す。

 男のさがなのか、少年は時折、抵抗を試みるが、『ずぶり』に愛撫されるとたちまち力が抜け、人形の様に弄ばれるだけであった。

 「あぁ……もっと……」

 か細い声で、小鳥の様に囀る少年に、やさしく、しかし断固として『女』を刻み込んでいく『ずぶり』。

 「これが……女の人……」

 ぽつりと呟く少年。 しかし、その高ぶりは、まだ外にあった。

 ”まだ、これからよ……”

 そう言って少年の手を取り、秘所にあてがわせる。 濡れて蠢く『ずぶり』の秘所が、少年の手を咥え、妖しく愛撫する。

 「……」

 妖しい感触が、少年の性器を『男根』と呼ぶ固さに変えていく。

 ”さぁ……”

 『ずぶり』は少年自身を捕まえ、己が中に導いた。

 ずぶり……

 熱く濡れた肉が、少年の男根を深々と咥え込む。

 「うっ……」

 初めての感触に、少年は思わず体を固くする。 その硬直した男根を解すかのように、うねうねとのたうつ肉襞が男根を包み込み、熱く嘗め回す。

 「あ……変……変に……」

 彼の男根は主を裏切り、『ずぶり』の忠実な僕と化した。 うねる肉襞の感触を、えもいわれぬ快感に変え、止め処の無い肉欲を生み出す。

 こみ上げてくる衝動に逆らえず、少年はゆっくりと腰を動かす。

 ”ああ……ああ……” 歓びの声を上げ、少年に腰を擦り付ける『ずぶり』。

 彼女の動きにあわせ、深く、より深く『ずぶり』を求める少年。

 「はぁ……いいよ……いいよ……」

 深く、より深く『ずぶり』は少年を求め、少年もまた『ずぶり』を求める。

 まだ若い腰が、豊満な女の中に、ずぶり……ずぶり……と沈んでいく。

 夢中で腰を使う少年、その腰の辺りまでがいつしか『ずぶり』の秘所に咥え込まれ、滑る肉襞はおへその辺りをひくひくと蠢いて、さらに中へ誘っていた。

 「あぁ……『ずぶり』の中……暖かくて……ぬるぬるで……気持ちいい」

 ”おいで……中に……もっと中に……”

 誘われるままに、少年は『ずぶり』の秘所に身を沈めていく。 と、彼は突然動きを止めた。

 ”……どうしたの……” いぶかしげに聞く『ずぶり』。

 「お願い……」 切なげな表情で少年は、『ずぶり』に言った。 「僕を……捨てないで……」

 『ずぶり』は優しく微笑む。

 ”捨てたりなんかしない……おいで中に……おいで奥に……気持ちよく蕩けさせてあげる……ほら”

 「あ……」

 『ずぶり』に咥えられている下半身から、生暖かいどろりとしたものが伝わってきた。 それが背筋を上ってきて、頭の天辺まで流れ込んで来る。 少年の思考が止まり、魂が蕩けてい

く。

 「は……あ……」

 呆けた表情になった少年は、続いて腰をゆっくり動かし始めた。

 ぬちゃぬちゃ……ずぶり……

 ぬちゃぬちゃ……ずぶり……

 腰から胸、そして肩が……少年は、もう躊躇うことなく『ずぶり』に呑まれていく。

 ”そう……ああ……”

 『ずぶり』も少年を迎えながら、歓びの喘ぎをあげ続けた。 


 ちゅるり……

 小さな音を立てて、少年の手が『ずぶり』り秘所に消えた。

 『ずぶり』のお腹は大きく膨れ、中で少年が蠢いている。 その膨らみも、少しずつ小さくなっていく。

 いい……気持ちいい……蕩けそう……蕩ける……蕩け……あ……

 微かな声が聞こえなくなるのと同時に、『ずぶり』のお腹の膨らみが消えた。

 『ずぶり』はゆっくりと立ち上がり、満足そうに腹を摩る。

 その奥では、山賊達の魂が次第に『ずぶり』と一つになりつつあった。 極上の愉悦のうちに。


 「愚か者達が」 苦々しく地蔵が呟いた。 「やはり逃げられなかったか」

 シャラン…… お約束地蔵の錫丈が、事の終わりを告げ、『ずぶり』の世界は闇に包まれる……


 村は平和だった。

 秋の実りの収穫が終われば、村祭りの時期だ。

 見回りの役人と農夫が笑顔で挨拶を交わす。

 そこには、山賊達が荒らした跡など微塵も見つからない。

 「当然じゃな」 禁忌の山からふもとを見ながら、地蔵が呟く。 「あやつらは、もともとこの世にいなかった事にされたのじゃから」


 山あり。 恐ろしき物の怪が住まうと聞く。

 出会いし者、帰ることかなわず。


 ならば、その話偽りなり。

 出会いし者、この世におらぬ故。


<ずぶり 終>

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