ヌル

プロローグ(3)


 ニュル、ニュル、ニュル……

 男の目の前を滑る皮膚が流れて行く。 ヌルヌルした女の胸は、乏しい彼の語彙では表現できない心地よさだった。

 「ンフ……」

 女が彼の胸に腹を乗せて、小さな円を描いて動きだした。 胸板を這いずる滑った皮膚の感触に、思わずため息が

漏れる。

 「うぉ」

 「アン……胸毛が素敵……」

 ざらざらした男の胸毛の感触が気に入ったのか、女の息が荒くなり腹を波打たせて胸の上で悶えている。 ヌルヌル

した液体が、グチュグチュと泡立ちながら二人の間からあふれ出る。

 「す……げぇ」

 谷間に頭を抱え込まれて視界を奪われた男に、女はヌルヌルの体でしがみつき、男の体を余すことなく愛撫しよう

とする。 二人は絡み合って地面に横たわっており、男の背は地についている。 なのに女の手は地面と男の間に

滑りこみ、彼の背中をも愛撫しようとしていた。

 「お前凄いな……うぁ」

 ヌルヌルした足が、男の足に絡んできた。 しなやかなふくらはぎが、太ももが、男の足に絡み付き、股の間を

前後している。

 「ううっ」

 ヘビの様な女の足の動きに、男の足に力が入る。 女を受け入れる仕草ではない。 男が大事な部分を防護する

ための自然な動きだ。

 「アハッ……」

 女が彼の頭の上で喘ぎ、女の足にも力が入った。 ヌルヌルした液体を潤滑油の代わりにし、片方の足をゆっくり

動かして男の股に割って入ってくる。 男は、女に犯されているような錯覚を覚えた。

 「あせるなって……ううっ?」

 女の足が、ヌリュリと股の間に滑り込んてきた。 ふくらはぎをヌリュヌリュと動かし、がっしりした太もものガードを

切り崩し、彼自身へと迫ってきた。

 ヌリュュュ……

 「おうっ」

 散々に嬲られ、固くなっていた彼自身が解放された。 勢いよく飛び出したそれが、勢いのままに女の足の間を

滑っていく。

 「ひゃぁ」

 ヌルヌルした皮膚の感触は、彼自身にとって刺激が強すぎた。 暴発寸前になったそれを女の手が優しく包み、

あやす様に愛撫する。

 「慌てないで……ネ?」

 「こ、このぅ」

 口では乱暴な言葉を使いつつも、男は内心驚いていた。 女の手で包まれたアソコに、溶けていく様な不思議な

快感が広がり、それで暴発が止まったのだ。

 (こ、こいつ……いったいどういう技を……うおっ?)

 わずかの間に女は態勢を入れ替え、男の物に頬ずりをしていた。 男の目の前には女の神秘が、滑る泉が、さらけ

出されている。

 アムッ……

 「くぅっ?」

 女の口の中は、暖かい滑りで満たされていた。 ヌメヌメとした皮膚が、ネバネバした糸を紡ぐ舌が、男自身を

迎えた。

 「う」

 ヌルヌルと男のモノを別の生き物の様に這い回り、妖しい快楽の粘りで男のモノを絡め取っていく。 甘くじわじわ

と溶けていく様な快感が、彼自身のモノを包み込み、中に染み透っていく様だ。

 「や、やられっぱなしで……」

 男は力を振り絞って顔を上げ、女の神秘に乱暴に舌を差し入れた。

 「ア……ハァ……」

 「お……おお?」

 女の神秘は、信じられない柔らかさだった。 極上の布の様に柔らかく彼の口づけを受け止め、歓迎の証の様に

かぐわしい匂いの蜜を醸し出す。

 「あ……」

 甘い匂いの蜜は彼を酔わせた。 思わず舌で舐めとると、口の中にねっとりとした甘さが広がる。 その痺れるような

甘さに、頭の中がぼやけていく様な気がした。

 「むむ……」

 ベロベロと下品な音を立てて、男は女の神秘を舐め責める。 女は甘い声を上げ、男を吸い付かせたままの尻を

振り、咥えた男のモノに舌を巻きつかせてを刺激した。 ヌルヌルグチャグチャと、彼女の口の中から卑猥な音が

響いてくる。 二人は淫らな生き物と化し、互いの性を貪った。


 「ああ……」

 男は呆けたように呟いた。 女の責めに、股間のモノが蕩けきったかのように心地よい。 ぬるま湯のような奇妙な

快感に浸りきっていた。

 フフ……

 女が含み笑いをした様な気がしたと思ったら、自分自身が強く吸われた。

 「ううっ」

 突然、電撃の様な快感が体を走り抜け、次の瞬間自分のモノが灼熱の棒と化す。

 「うああっ!」

 ド……クッ……

 中身が全て出たのでは無いかと思うほどの、奔流のような感覚に自分自身が震え、息が止まるほどの快感に

身体が硬直する。

 ……クッ……

 激しい奔流が止まると同時に、全身から力が抜け男は地面に崩れ落ちた。 同時に女も力を失ったかのように、

男の上に重なる。

 はぁはぁはぁ……

 息を整えつつ、二人は激しい宴の余韻をかみしめていた。


 ヌルリ……

 女が動く気配に男は目を開け、息をのんだ。 女の身体がびっしょりと濡れている。

 ポターッ……

 ポターッ……

 粘っこい液体が、煌めく糸を引きながら女の体から男の体へ次々に滴ってくる。


 「お、お前、そ、それは……」

 男は、女が濡れているのは『蛹』に閉じ込められていた為だと決めつけていた。 時間がたてば渇くだろうぐらいに

思っていたが、渇くどころかヌルヌルは量をまし、女の全身を包んでいる。

 「貴方のおかげ……」

 「な、なに?」

 立ち上がろうとして、男は全身を気だるい疲労が包んでいるのに気が付いた。

 「き、貴様、俺に何か……『吸い取った』な!?」

 女は小首を傾げ、それから微笑んだ。

 「吸った……貴方の気持ちのいいドロドロを……」

 嫣然と微笑んだまま、女はしなだれかかってくる。

 「ねぇ……」

 ヌルヌルの手で男のモノを包み込み、そっと撫でる。 出したばかりのソレがみるみる固くなっていく。

 「今度は……下で……」

 男は首を横に振って、後ずさろうとする。 しかし、思う様に体が動かない。 そして女が囁く。

 「もっと……良くしてあげる……」

 女の言葉は魔法の様に耳に滑り込み、男の頭の中にねばり付いた。

 (もっと……良くしてあげる……)

 彼の頭の中で女の言葉だけが繰り返され、その瞳が次第に曇っていった。

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