月光蝶

5:尋問


女王『落ち着かせなさい』
戦士蝶は逡巡するが、結局もう一度ディープキッスする。
但し、毒はのませない。
口の中を長い舌でなめまわし、ルウの舌を絡め取る。
たっぷりキスした後で口を離すと、ルウはボーッとしていた。
戦士蝶はルウを、女王に向き直らせ、また後ろから体を撫で始めた。
ルウは、落ち着きを取り戻していた。
ガイのミイラは見ないようにしている。

女王はルウの顔を見つめていた、ふとその顔に疑問の色が浮かぶ。
「?…アナタハ?・」
続けて尋ねる。
「アナタノ体デハ、狩ノ役ニタタナインジャナイ?」
「そうですけど…」
魔物までに言われたくないという顔のルウ。
「デハ、ナゼコイツラハアナタヲツレテキタノ?」
「…前に一度この森にきました。その経験を買われて…生きて帰った人が他にいないので…」
「ソウ、アナタハアノトキノ…」
女王は目を閉じて何か考えている。
「ソウ、カエッテキタノネ…」
「何のことです、…」
女王は答えない。
「…あの…助けてください…といってもダメですか?」
「アナタ達ハ私達ノ糧、領域ニ進入シタ獲物ヲミノガスツモリハナイハ…」
「…やっぱり、吸い殺されるんですか…」ルウは怯えていた。
「死ニタクナイノ…」
「それは…できれば…」
「クスクス、正直ネ…昔ニ比ベテ人間ハ狩ルノガ難シクナッテキタノ…」
「?はい…」
「ソレデネ…人間ノ知識ヲ持ツ者ノ協力ガ欲シイノ…」
「ぼくに…協力しろと…人間の仲間を裏切れと…」
「イヤ裏切ラナクテモイイワ…ウフフ…」
「?はい…」
女王の口調が少し和らいだ。
幾分ほっとする。命だけは助かりそうだ。
だが、女王の次の言葉を聞いて、ルウの血の気が引いた。
「アナタヲ月光蝶ニシテアゲル…アタシタチ仲魔ニスルノ…」
”え?…月光蝶に?…魔物に!!”
「いや、いや!やめて!おねがい!魔物なんかになりたくない!」
ルウは、抵抗するが、戦士蝶に肩をつかまれ、身動きできない。

女王の芋虫状の腹部は吸精器官であり、育児嚢であった。
その中央、巨大な女陰に見えるそこが再び開き。
不気味な内部がルウの眼前にあらわになる。
目の前で、女陰の端が、ルウを求めヒクヒクと蠢く。
魔物の触手が伸びてくる。
首をふり怯えるルウ。
「おねがい、許して!」
「…イラッシャイ…アタシタチノ世界ニ…蝶ノ世界ニ…」
触手が伸びて、ルウの手に、足に胴に絡み付いていく。
ルウはもがくが、触手に引っ張られ、女王の中へ、魔物の女陰の奥へ引きずりこまれた。

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