紫陽花

23.蟹踊り


ポタッ…ボタボタッ…

天井を見上げていた岩鉄に、真紀達の降らす『雨』が降りかかる。

「!?」

我に返る岩鉄、そして。

「こ、こいつらぁ!」

怒りに駆られ「塩」を掴んだ右手を振り中身を投げつけようとする。


が、一人の娘の腰の陰りから、

ビュッ、ビュルルルー

勢い良く『雨』が迸り、岩鉄の右手に命中するのと岩鉄の手が開くが同時。

バシャッ! 

「うおっ!?」

『雨』は「塩」を跳ね飛ばし、岩鉄の右手は虚しく『雨』の飛沫を飛ばす。

「このっ!このっ! ××××がぁ!」

怒鳴り散らしてから、手を濡らした『雨』がヌルヌルするのに気がつく。

それは岩鉄が想像した下品なものではなかったが…

「これは…ええいっ下品な淫乱『潮吹き』娘共が!卑怯者!降りて来て正々堂々と勝負せい!」

吼える岩鉄。


熊と間違えられそうな大男が、妖しい技を使うとはいえ十歳前後の少女相手に正々堂々もないものだ。

第一、今の彼の仕事はユウジの護衛である。 この状況で取るべき対応は「ユウジを起す」、または「逃げだす」が正

解だろう。

だが、頭に血が上った岩鉄に、冷静な判断が出来よう筈も無い。 

真紀達を捕まえようというのか、逞しい腕を頭の上でぶんぶんと振り回す…が全然届かない。


ならば、飛び上がろうと足を踏み出す。

ズン…ズルッ

「!?」

ヌルヌルした『雨』の水溜りで、足が滑る。

「くそっ!」

素早く身を翻して踏みとどまったのはさすがであった。

軸足に体重を移し、今度は慎重に足場を変えるが。

ズルッ!  「おおっ!…なんとぉ!」 ズズッ! 「はっ!」 ツルッ! 「とっ!」 ヌルッ「よいやさぁ♪」

両手を振ってバランスをとり、ガニ又でドタドタ足を踏みならす…まるで踊っている様だ。

「ぷっ…」「くまじゃなくてカニみたい…」「キャハハハハ…がんばれぇカニおとこぉ!」

天井の少女達が囃したてる。

「なっ…なにがおかしいかぁ!!」

笑っている少女を睨みつける岩鉄。

怒りに我を忘れている。


岩鉄の注意が正面に向いているのを見届け、背後で真紀が行動を起こす。

(よーし…そのままっと…)

真紀は膝を立て、足の裏を天井に貼り付けた。

そのまま背中をそっと天井から離し…ダラリ…天井から逆さにぶら下がる。

(ほかくよーい…しょーじゅん…くま…あらため、かにおとこのみぎみみぃ…)


真紀は岩鉄をからかっている他の少女達に目で合図する。

「かにさんこちらっと…それっ!」

ビュルルルル!

「どぅわぁっ!」

少女の一人が『雨』で岩鉄の顔面を狙った。

身を捻って直撃を避けたが、よろけて後ろに一歩下がる…と、頭に小さな手が触る感触。

「おっ?」「とったぁ!」

真紀が岩鉄の後頭部を捕まえた。

天井から離れ、くるりと身を翻して岩鉄の頭に抱きつく。

「着地成…?…きゃ!失敗したぁ!」

「ぶっ!…モガ…モンガゴゴゴゴゴッ!…」

真紀は見事に岩鉄の顔面に抱きついていた。


真紀達の作戦はこうだった。

まず捕まらないように距離を取り、『アメフラシ』で動きを押さえる。

そして静に教えられた通り『雨』で「塩」を封じる。

最後は隙を見て岩鉄の頭に抱きつき、『洗脳』する…つもりだったがここでしくじった。


「モガッ!…モガガッ!」

真紀の体が岩鉄の顔面を包み込んでいる。

その格好はコアラかフェイス・ハガーか。

「モボワッ!」(見えん! 離れろ!)

目の辺りが真紀の胸から腹にに覆われて視界を奪われ、髭で覆われた口に…真紀の…『花びら』がピタリと吸い付

いている…


岩鉄は真紀を引き剥がそうと手で真紀を掴もうとするが…

ヌ…ルン…

「モゴッ?」

真紀の全身はヌルヌルした『雨』で覆われていてた。

手が滑って掴みどころが無い。

なのに岩鉄の顔に貼り付いて離れないから不思議である。


「モガガガガ!…モガガガガ!…」

喚き続ける岩鉄。 口を歪め、頬が振るえ、そして…

「ひゃぁぁぁぁ!やめてぇ!…お髭が…こそばゆ…あん…だめぇ…」

髭が真紀を刺激する…激しく…


「あん…あ…は…」

真紀の瞳がトロンと曇り…口の端から細い涎が…ツーッ

ギュ…ギュゥゥゥ

岩鉄の首に回された足に…頭を掴む小さな腕に…力が込められる。

「グボォ…ガボォ…」(ぐ…負けるかぁ!)

少女の細い腰が震えだす…

フニュ…

「グッ?…」

フニュフニュ…フニュン…開きかけの…『女』が岩鉄の口を這い回り始めた…

「ガボボッ!?…」(ガキの癖に?…さかっておるのか…)

トロ…トプ…ゴ…ボッ…

「ぐっ?…ごぼっ…ゴボボッ!!…」

真紀の奥から『雨』が湧き出してきて…トロトロと岩鉄の口に…

岩鉄はむせ、喚き、舌が跳ね回る。

「うん!…うぅ…あぁぁ…」真紀の声に艶が混じる…


(何を…う…ガキの癖に…うう?)

岩鉄の舌が『女』の柔壁に触れる…ゾクリ…痺れとも何ともいえぬ感触が舌を犯す…

(熱い…柔らかい…うう…と…止まらん?…)

ヌ…ゾブリ…ゾブリ…ゾブリ…

「ああぁ…ああっ」「オボッ…ボアッ…」

真紀の『味』に魅了され…岩鉄の肉の剣が幼い『女』を求め始めた…


ヌチャ…ヌル…グチャ…

「オ…オォォ…オオオ…」

岩鉄の声が獣の様な唸り声に変わっていく…

”ね…”

「ゴ…?」

”きて…私の所に…”

岩鉄の頭に誰かの声が響く…真紀の声の様でもあり…違うようでも…

”きて…いかせて…”

ビクッ…ビクッ…

岩鉄は存分に舌を蠢かし…『声』の求めに応じて真紀の奥をかき回す…

「あぁぁ…奥に…来る…」

「オオ…オオッ…オオオッ…」

幼い蕾を…獣の舌がかきわけ…それに見合った快楽が…岩鉄の舌を締め上げ畜生道に引きずり込む…


ズッ…ズッッッッ…ズチュッ!

「ひ…ひぃぃぃ!…」

真紀の体が硬直し、あらん限りの力で岩鉄の頭と首を締め上げる。

”あああああっ…いくっ…さあ…一緒に!…”


キュゥゥゥゥゥ…ビクッ…ビクッビクビクッ…。

舌が一気に締め付けられる…口の中にあるものが男根となったような異様な快感…岩鉄の脳髄が沸騰する…

「グォォォォォォッ…」

岩鉄もまた、全身を硬直させ異次元の快楽に酔う…

岩鉄と真紀は「背徳の像」となって互いの快感に身を委ねた。


…静寂…

ポタッ…またどこかで雫が落ちた。

スゥー…?

何かが変わった…匂いだ。

微かに乳臭かった少女の体臭が…

ゾクッ…ゾクゾクゾクッ…

背筋を痺れさすような…『女』の匂いに変わっていく…

ビクッ…ビクッ…

岩鉄のイチモツが脈打ち鎌首を振るわせる…


と、岩鉄の頭に顔を埋めていた真紀がゆっくり顔を上げ…目を開く…

「…オジチャン…モット…」

真紀の瞳が青い光を灯している…

今、真紀の『女』が目覚めた…


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