ハニー・ビー

6-05 吸われる魂


 フフ……

 クスクス……

 ざわめくようなワスピー達の声が、木々の間から漏れ聞こえて、ワスプ=ソフィアに抱かれたルウは身を固くした。

 「ワスピー……」

 呟く声を震わせるのは、恐れか、悲しみか。 ルウ自身にも判らなかった。

 「シスター。 僕をどこに連れて行くの」 固い声でルウが尋ねた。

 ”お前ニ、会イたがってイるお方がイる”

 ワスプ=ソフィアでなく、彼女に取り付いたワスピーが答えた。

 「……誰が?」

 その問いの答えはなく。 代わりに、ワスプ=ソフィアが足を止め、ルウをおろした。

 「……」

 ルウは、ワスプ=ソフィアを見上げる。 彼女は、ルウではなく別のものを見ていた。 ルウは、彼女の視線を追う。

 「……あ」

 そこに『女王』がいた。


 (こいつ、こいつがワスピーの女王なんだ…) ルウは直感した。 

 そこにいたのは、等身大のワスピーだった。 緑色の体は、優しい曲線を形作り、薄い羽をマントの様に背中に広げ

ている。 複眼を備えた顔立ちはワスプにも見えるが、頭の上にワスピーが取り付いていないところが違う。

 「あなたがルウね」

 よく通る声で女王が言い、一歩前に出る。 すると、彼女の足元の草が大きく揺れた。

 「!?」

 ルウの視線が下を向き、目がまん丸になる。 女王には、足が無かった。 正確には、腰から下に足ではなく別のもの

がついていた。

 「ひっ!?」

 下腹の辺りにテラテラ光る丸い隆起があり、そこから下に向かってヌメヌメと光る襞のようなものが蠢き、襞の間から蛇か

蔓の様なモノが覗いている。 そして、女王の後ろに、うす緑色のぶよぶよした巨大な芋虫のようなモノがついてきている。

 (違う、あの芋虫は女王の体の一部だ)

 そう、ワスピーの女王は腰から下が芋虫の様になっていて、それを後ろに引きずっているのだ。 では、下腹に見える、

あのヌメヌメした襞は……

 (あ、あれ……女の人の……なの?)

 ルウは、一瞬怖さを忘れ頬を赤らめた。 しかし、次の瞬間には、自分がとんでもない化け物の前にいることに気がついた。

 「い……いやー!!」

 叫んで腰を抜かした。 くるりと女王に背を向け、四つんばいで逃げ出そうとする。

 女王は顔をしかめ、ルウをねめつけた。 いきなり怖がられて、傷ついたらしい。

 「……」

 女王の『秘所』が口をあけ、ヌラヌラと光る触手が吐き出され、ウネウネと蠢く。 そして、その一本が蛇の様に草の上を

這いまわり、ルウの背後から襲い掛かって、細い首に巻きついた。 

 「ぐっ!?」

 ルウは、首に蛇のような触手が巻きついたのを感じた。 次の瞬間、体が動かなくなる。

 「あ……?」

 硬直したルウの手足に、別の触手が巻きついた、と思ったらぐるりと裏返され、再び女王に正対する。

 「や、やめて」 半泣きのルウ。 

 「……」

 女王は、ルウの様子を伺い、手を自分の腰に当てる。 と、その秘所から色合いの異なる触手が吐き出された。 

透けて見えるそれは、先端が膨らんでおり、いっそう蛇に似ており、這うようにしてルウを目指す。

 「!」 

 その『蛇』を目にしたルウは、顔をくしゃくしゃにゆがめ、抵抗しようとする。 しかし、首から下がまったく動かない。

 「こ、こないで」

 『蛇』は、ルウの足の辺りで『口』を開けた。 糸を引く『蜜』を湛えたそれは、『女性自身』にも似ていたが、ルウには

涎をたらす『蛇』にしか見えなかった。

 「いや……いやー!」

 蛇が、ルウの服の中にもぐり込み、あそこを咥える。 ヌルヌルした穴の中に、大事なモノが吸い込まれる感触に、

ルウの全身が粟立った。

 「ぐっ!?」

 ヌルヌルしたモノが、ルウの股間にビタリと張り付き、グチヤグチャ音を立てて、アレを柔らかく揉み解している。 ルウは、

シスターにされたことを思い出し、激しい嫌悪感に襲われた。

 「……」

 女王は目を細め、秘所から濡れぼそった触手を、さらに数本吐き出して、ルウの体に巻きつける。 ヌルヌルした蛇が、

ルウの体を這い回る。

 (いや、やめて……やめて……)

 心の中で、拒絶の叫びをあげるルウ。 その体が、なんだかジンジンして冷たくなっていく。

 (冷えちゃう……変になっちゃう……変だよこれ……)

 冷える、冷えていく。 触手に触られたところから、冷たいものが満ちてきて、少年の体を満たしていく。 

 (……だめ……きちゃう……あふれちゃう……)

 草むらに横たわった体を触手に愛撫され、ルウは天を見上げたまま、小刻みに震えた。 覚えさせられたばかりの

不自然なあの感覚が、また彼を支配しようとしている。

 (……頭が……ぼーっとして……へん……変な気持ち……)

 ルウの目が潤んできた。 透明な触手に咥え込まれた、幼い性器がヒクヒクと震え立す。

 「……」

 女王が目を細め、ルウへの愛撫のリズムを速めていく。 そのリズムに合わせて、ルウの体が震えだした。

 (……だめ……だめ……だ!……)

 股間がキュッと縮み上がり、ヒクヒク震える変な感覚がルウを襲った。 と、それに合わせて、ルウの股間を咥え込んだ

触手が、ルウを吸い始めた。

 ジューッ、ジューッ……

 (……あ……あ……あ……)

 全身に溢れそうになっていたモノを、『蛇』が吸っている。 頭の中が真っ白になって、抵抗できない。 ルウは『蛇』に

吸われるに身を任せ、呆然と宙を見上げていた。

 ジュー……

 やがて、吸うものがなくなると、『蛇』と触手はルウから離れ、女王の秘所にもどって行った。

 しかし、ルウは動こうとしない。 草むらに横たわった少年の目はどんよりと曇り、何も見ていない。

 魂の抜け殻の様になったルウに、笑いさざめきながらワスピー達が群がっていく。

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