深き水
1.暑い夜の訪問者
日本、20XX年8月…暑い夏が秋に向かい、朝が涼しく感じられるはずの頃…
TVをつければ「今年も秋の訪れが遅く、残暑が厳しいでしょう…」アナウンサーがあいも変わらずのニュースを伝えて
いる。
ここは東京都、水神町…ここで「問題」が起きた…いや、これから起きようとしていた…
深夜の繁華街、アスファルトは昼間蓄えた熱気を盛大に放っている。
暑さのせいか、人通りの絶えた街を、長い髪の女が一人ゆっくりと歩いていた。
自販機の前で立ち止まり、軽く舌打ちする。
飲み物はほとんど「売り切れ」の赤ランプを点していた。
「はぁ…今夜は駄目ね…さすがのあたしでも暑いし…今日は引き上げね…」
女が呟いた…白い上着を肩からかけ、下に来ているのは黒いワンピース…いわゆる「立ちんぼ」であろうか…
かなりの美人で、異様な程色っぽい。
もっとも今は商売をする気がないらしい…態度はクールでどこか近寄り難い雰囲気すらある。
女は暗い路地に入り、とぼとぼ歩いていく。
程なく住宅街にさしかかる、クーラーの室外機が低音の合唱を奏でているのに肩をすくめる。
暑いといった割には熱気を気にする様子も無いし、汗もかいていない。
ふと、立ち止まり、耳をそばだてる…「?」
音…ではない何かの「気配」を感じている…そう見える…
”何…”
女は迷い、ひとつうなずいて上着を脱いで手に持ち換える…ワンピースと見えた黒い服は、背中の大きく開いた妙な
デザインであった…
熱気が渦巻き、女の姿が消えた…夜道にはだれもいなくなった…
………………
同時刻、女のいた所から程近いアパート…ザリガニ荘202号室。
蒸し暑く、薄暗い6畳一間の部屋…窓から入ってくる熱風をガタのきた扇風機がかき回している。
畳に敷かれたシミだらけのせんべい布団の上で、パンツ一丁の男があぐらを掻いて涼んでいた。
”来週には9月になるってのに、なんて暑さだ…おまけにクーラーは壊れるし…”
暑さに苛立ち、ブンブンうるさい扇風機を蹴飛ばそうとして、後は団扇しかないのを思い出し、やめる。
立ち上がると、雑誌の山をまたぎビールの空き缶やペットボトルを足で掻き分けつつ台所に行き、冷蔵庫を開ける。
ペットボトルのミネラルウォーターが半分ぐらいしか残っていない。
ぶつぶつ言いながら、ペットボトルを持って布団に戻る。
”最近は水道の水どころかビールまでまずくなりやがった…”
ぐびぐび、ペットボトルの水を飲んでいる。
飲み干したペットボトルを台所に放り投げ、軽く息を吐く。
役立たずの扇風機にを近くに置きなおし、布団に大の字になり、目を閉じる。
すぐに寝息を立て始めた。
……
?…男はまどろみの中、何かの気配を感じる…人か?…
柔らかな重み、体に何かが触る…しっとりとした感触…芳しい香り…女の肌…それが体に触る…
女が自分に抱きついて、唇を合わせている…柔らかい肉の感触がある…乳首の感触…
口の中を何かが舐めまわしている…微かな甘味を感じる…
冷たい手が性器を撫でる…睾丸を揉みながら…亀頭を柔らかくさする…
意識より先に体が反応する…股間が存在感を増す…気持ちのいいまどろみ…
女の感触が、「風呂屋」の記憶に結びつく…
”ああ…ここはサービスいいじゃないか…”寝ぼけている…
”イカガ…”女の声が頭の中に響く…
”いい…ここは…?…何…ここは…あれ?…”意識が目覚めに向う…
”!?…声が聞こえた?…”目を開けた…
「!」…女…目の前に裸の女がいる…寝ている自分の腰にまたがっていて男根をなでている…
日本人じゃない…彫りの深い顔立ち…肌が水色?…紺色の髪…目が…緑色だ…
「何だお前は…」体を起こそうとする…
”フフ…”女が微笑む妖しく…片手を伸ばして男の胸を撫でる…
「う…」乳首を撫でられる…冷たい手が気色いい…
”私ト…”女が誘う…
「何だって…」考えがうまく言葉にならない…胸と男性器を撫でる手の感触だけがはっきりしている…
”なんだこの女…手が冷たい…気色いい…もっと…もっと…”女に触られているところが気持ちいい…頭の中に霞が
かかっていく…
”ネェ気持イイワヨ…ホラ…”
「うぁ…あぁぁ…」股間にネットリした感触…男根が女の股間に呑み込まれている…女の中が涼しい…
女はゆっくり大きく腰を使う…ネチャ…ニチャ…粘る音…亀頭が竿が…女の中で滑る肉に舐められる…
男根全体がヌラリとした物で包まれ気持ち良くなる…竿が張り詰めていくにつれ摩擦感が快感になっていく…女への
欲望だけが強くなっていく…
一物が固く大きくなるにつれ…暑さで伸びていた睾丸が蠢き…縮みだす…
”いい…もっと…冷たい肉…固くなる…気持ちいい…”
男根は固く張り詰め…粘った感覚に包まれている…女はゆっくり上下する…ヌラーと竿が舐め上げられ…ヌルリとした
感触に呑み込まれる…
「!…あ…はぁ…あ…」
男は商売女相手の経験もあったが、こんな丁寧な交わりは初めてだった…いや…どんな女でもこうは…
ヌラリ…ヌラリ…ザラ…ヌル…
”なんだ…こいつは…なんだ…”考えようとするが、思考が先に進まない…
声を出そうとする。その口を女が自分の唇でふさぐ…
”ダメヨ…余計ナ事ヲ考エナイデ…私トスルノ…”女が命じる
”………”
”ソレデイイ…”
女の動きで生ぬるい微風が起こる、「暑い…」つい口に出る。
”ソウ…暑イノ…ナラ涼シクテアゲル…”
女が抱きついてくる…ヒヤリ…
「!」冷たい…氷とまではいかないが、人の温かみではない冷たさ…水風呂ぐらいか…涼しくてちょうどいい…
口の中に冷たい女の舌が進入してくる…かすかに塩味がする…舌を絡める…
”どこかで…この味…思い出せない…どうでもいい…”
何かを考えようとすると、女は腰をゆする…一物から伝わる女の感触が思考力を奪っていく…
男は屈服する…もう女とすること以外考えなくなる…
女の中も冷たい、一物が冷やされ感覚が鈍る…それがかえって気色いい…
「いい…もっと…もっとしてくれ…」
”ウフフ…イイワ…サァ感ジテ…”
女が胸を擦り付ける…胸板に弾力のある乳首が擦り付けられる…肋骨の上でプニプニと弾む…乳房も涼しい、水枕の
ようだ…
腰をひねる…ゆっくり…柔らかい肉の感触が一物を締め上げる、腰を突き上げようとすると、女が止める…
”私ニマカセテ…アナタハ動カナイデ…良クシテアゲル…”
女の言う事が体に響く…波紋のように広がる…逆らう気はない…
女の中が蠢いている、腰がピタリと合わさっているのに、一物が中で弄ばれる…
亀頭が何かに擦られる…息が荒くなってくる
”人間じゃない…”
しかし思いが恐怖に繋がらない…女の手が男の背中をまさぐる…口はふさがれ舌を絡めあい…女の足は男の腰を挟み
込んでいる…
その姿勢でゆっくり体を擦りあう2人…女の中では男のものがしごかれている…クナリ…クナリ…そして冷たく…
男根が冷やされている為か、なかなかこみ上げてこない…しかし、じわじわと確実に暖かいものが満ちていく…
”あぁぁ…あ…いい…涼しい…一物が冷える…睾丸も冷える…気持ちいい…”
”冷タクテイイデショウ…ユックリ感ジテ…急ガナクテイイ…”
膣にはまり込んでいる竿…その周りをヌラリとした物が取り巻き…周りながら亀頭へと寄せてくる…亀頭のカリをヌラリ
ヌラリと舐めあげる…
何かが亀頭を舐め上げながら鈴口に向う…鈴口から中に入り込み尿道を降りて来る…それが快感の雫となる…
快感の雫が睾丸に一滴…一滴溜まっていく…睾丸がいっぱいになり…さらに竿をじわりじわり満たして行く…
睾丸の中に生暖かい快感の液体が溜まっていくのが心地よい…たまらない…女に抱きついたまま…男は動きを止め
、目を閉じ…女の膣の感触のみに集中する…
男根が…自分の物なのに…自由にならない…女に翻弄されていく…
10分程も女の感触を貪っていたろうか、亀頭にまで暖かいものが溜まってきた…
気がつくと…体の中には、何か冷たいものが満ちている…意識するとそれが…それが重々しく体の中で波打つ…タプン、
タプン…ひどく気だるく…気持ちいい…
亀頭まで、生暖かい快感が満ちてきた…一物はピクピクと脈打ち、睾丸は勝手にグニャグニャ蠢いている…別の生き物の
ように…
”あぁぁ…もう少し…もう少し…””
”ソウ…モウ少シ…モウ少シ…”
生暖かい物が・鈴口にまで達する…体の中に溜まっている何かの圧力も上がる…頭の中が白くなっていく…睾丸が内から
膨らむ…竿を痺れが登っていく…
静かに絶頂がきた…精がゆっくり溢れ出していく…亀頭がわななきながら、快楽の液体を吐き出す…
ヒクリ、ヒクン、ピクッ、ピクッ、ピクッ、ヒクン…
”はぁ…あぁ…”ため息が出るほど気持ちがいい…そして絶頂感がひどく長く…後を引く…ゆっくり余韻に浸る…
いつの間にか女がいない…余韻と女の冷たさを反芻しま、男は布団の上でヒクヒクとかすかに身震いしている…
やがて寝息を立て始めた…
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