教会[夫人]

1.呪い


夫人がすり寄ってくる。
「ファーザー…私は恐ろしい呪いにかけられてしまったのです…」
そういって、上着を脱ごうとする夫人…
「ちょっ、ちょっとお待ちください…」あわてて止めるファーザー。

とにかく、夫人を奥の部屋に案内する。
カーテンを閉め、部屋の鍵を掛けると、夫人はすぐに服を脱いでしまう。
そして背中を向ける。
「こ、これは…」
夫人の背中には、小さな蝙蝠の羽が生えていた。

それを、指でさわって調べるファーザー。
「あ…あはぁ…ねぇ…もっと触ってくださいまし…」
色っぽい声で誘われ、慌てて手を引っ込めるファーザー…

夫人も正気に戻る。
「これは、サキュバスの羽…」
サキュバス…女性型をした淫蕩な魔物で主として男を淫らな事に誘う…
精をすうとか…魂を奪うとか色々言われるが…あまりはっきりした事はわかっていない…
特徴はコウモリのような羽を持っていて、空を飛べる事、夜に活動する事だ…

夫人が頷く、
「これは、魔王の呪いなのです…ファーザー私を助けてください…」
「…しかし、魔王の呪いとなると、私には解呪の方法がわかりません…教区管理の上級教会に連絡を取って、解呪の専門者を派遣してもらいましょう…」
「それにはどのくらいかかりますか?」
「手紙を書いて、届けて…すぐに派遣されてくるとして…最低10日はかかるでしょう」
「それでは間に合いません!…魔王に、この呪いは後8日で完成すると言われているのです…そうなれば…私は二度と元の姿に戻れないと…」
「…8日で…」
ファーザーは絶句する。
”しかし…魔王が直接呪いを掛けるなど聞いた事が…美しい人だから…サキュバスにして…自分の側にはべらせて…あんな事や…こんな事を…”
沈黙思考がだんだん妄想になっていくファーザー…

ファーザーの妄想には気がつかずに夫人は続ける…
「こうも言われました、ファーザー級の聖職者が身も心も愛してくれれば、呪いは解ける…かもしれないと…」
「あの…具体的には…」
「ファーザー!」「は、はい!」「私を7晩続けて愛してくださいませ!」
やっぱり…そういうことになるのか…
90%の義務感と10%スケベ心から、ファーザーは夫人を愛することを決意する。

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